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愛の歌  作者: Dust
4章
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87話

「っく!」

リーンは膝をつく。

片手で頭を抑え、苦しそうに呻いている。

『レイガ!こちらは頼みます!』

炎はレイガの背の方へ向かう。

「・・・にゃおっ!」

一時は青龍によりその攻撃を中断させられたリビが、身軽に跳び跳ねながら青龍に近づいて行く。

「グォォ・・・!」

青龍はその口を開け、魔力を高めていく。

雷が、音を切ってリビに襲いかかり―

「八百殺し。」

青龍の頭上に跳び跳ね、交わしたリビは鉤爪を作り青龍の傷に突き刺し、掻き混ぜ抉った。


『やはり、あなたは・・・。』

クトゥグアはそのリビと相対する。

炎が徐々に人の形を象っていく。

女性を思わせる身体のライン、顔はベールで隠れている。

『焼き消し去りましょう。この炎で!』

「誰を、かにゃ?」

リビは黒い鎧に包まれ、その炎を平然と受け切った。

「クトゥグア!クロムの鎧だ!」

レイガは一切振り返らず、言い放つ。

「あはっ!じゃあこっち使おーっと!」

リビはしっかりポーズを決め―

「変身!アガートラーム!!とうっ☆」

赤の鎧に黒のライン。銀の右腕のヒーローに変身する。

「ゴヴニュ・ガトリングパンチ☆」

突き放った拳からガトリングを乱射した。



『舜!代われ!』

復讐鬼の声がする。

「断る!」

舜は直接口にしながら、蠢く感情を、憎悪を、1人抱える。

『僕が終わらせるべき事だ!舜!』

「大丈夫だ。俺がやる。」

子供たちは一斉に魔力を放つ。

(なるほど、確かに強力な魔力・・・だけど。)

感情が昂っているからだろうか。

「所詮は・・・経験の薄い子供だ。」

普段なら必ず思わないような事を、口にした。

『舜!!!』

復讐鬼もその違いに気が付き、呼び掛けを止めない。

普段の舜なら、たとえ相手が誰であろうと油断も容赦もないはずなのに。


舜は単調な魔力の攻撃をかわしながら、まず1人の首輪を剣で突き壊した。

「おやおやおやおや、警戒も無しとは。ふふふ、少しは効いてくれたようですねぇ!」

ポロスは嬉々としている。

首輪を壊した子供の身体の一部が膨らんでは戻り、別の場所が膨らんでは戻り―

「なに・・・!?」

カッと光ってその身体が内からの魔力に吹き飛ばされた。

莫大な魔力は、異変で少しは離れられたもののまだ近くにいたままの舜を吹き飛ばし―

必死に岩に手を伸ばし、その吹き飛ばされる勢いで崖から落ちないようにしながら。

岩に着地した時にはペっと血を吐き捨てた。

指先も赤く染っており、着地した岩は舜の指で削れた跡が残っており、その吹き飛ばされた勢いを雄弁に物語る。


「魔力のコア、意図的に壊せるんですよぉ。身体に眠っている膨大な魔力そのものを喰らえばあなたも無傷とはいかないでしょう?」

「・・・・・・。」

舜は口からの血を拭いながらポロスを睨む。

「あと9発ですよぉ?私の好きなタイミングで壊せますから・・・はてさてどうお動きしてくれるのですかな?」

子供たちは―怯えた表情をしている。

その表情から死を恐れているのをひしひしと感じ取ってしまう。

そして、その死を逃れる方法が自分自身の殺害なのだというのもまた、舜に伝わってしまう。

『舜!代われ!君は眠っていろ!僕が・・・!罪を背負うのは僕でいいんだ!』

実験による犠牲者同士の戦い。

同じ立場で苦しんだものが犠牲になって、心が傷んで当然で。

それでも、舜は譲らなかった。



「行くぞ。」

ボロボロで、今は動かず状況を見ている舜にウェルは近付いていく。

だが、レビアは動けなかった。

(・・・子供を犠牲にしてまで・・・。)

ウェルはそんなレビアに気が付かず、舜を格好のカモとして襲わんと離れていく。

そんなレビアの首元に槍が引っ付いた。

「降伏、してください。殺したくはないので。」

「・・・君は?」

桃色の髪をした少女は正直に答える。

「漣。」

「・・・そうか。いいだろう、降伏しよう。だが、1つお願いがある。」


漣は槍を消して、その続きを待つ。

「・・・君は、今殺せるのに殺さなかった。だからこそお願いしたい。犠牲者を・・・少しでも減らしてくれ。」

「・・・嘘じゃない、ね。うん、こっちもそのつもりだから任せて!」

レビアは振り返り、その目を見る。

(強い目だ・・・。悩んで、その上で決めた、そんな目・・・。)

レビアは頷き、そして覚悟を決める。

「協力しよう。今まさにアウナリトの為に1人の子供の命が失われ、更に失われようとしているんだ。・・・たとえ裏切り者となろうが見捨てる訳にはいかない。」

「子供が・・・!?急ごう!」


必死に生きたいと思う者、必死に助けようとする者。

その思いが、悲しくも戦場で対立する。

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