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愛の歌  作者: Dust
4章
83/230

番外編② 僕と太陽

これは僕―オーフェの回想であり。

僕にとっての大切な過去―思い出である。

僕にとってイパノヴァは太陽であり。

僕はその太陽で産まれる陰のようなものなんだ。

彼女は健気で頑張り屋で。

不幸な星の元産まれたのに平気な顔して必死に無理して。

不満も何もかも叫んで楽になりたいのに笑ってみせる。

そんな僕たちが仲良くなるまでのお話。

最初、僕のイパノヴァの印象は良くはなかった―


学校時代。

愛国心のある者が。

勇者になりたい者が。

勇者に並び立ちたい者が。

ただ食っていける職を探す者が。

群れて過ごす日々。

僕は・・・僕はただそこに居た。


僕は自分で言うのもなんだが要領が良かった。

魔力者になって、何となくで生きてきたが―

特に意識しなくても上手くいくことの方が多かった。

将来のビジョンなんて無かった。

無くても何とかなるだろうと、漠然とした思いだけがあった。

もちろん、心の底では不安が敷き詰めてあって。

生きてる事がぬかるんだ道を歩いてるような気分で。

ずっと心が晴れなくて。

ずっとずっと、感情が死んでいくのを感じていて。

泣きたくて悲しくてそれすらも無くなって。

この感情を分かってくれる人はいるのだろうか―。

もし居てくれたらいいのに、なんて思うほど僕にとっては苦痛な茨の日々だった。

その日々が、苦痛が、無限に感じられた。


「ね、オーフェ。聞いてる?」

「・・・何だ。」

昼ご飯時、僕は食べられるのを邪魔されるのは嫌いだった。

少し離れたところでしている恋バナですら嫌・・・

・・・あれ恋バナか?愛花が全くもって興味持ってないし、リーンがそれにキャッキャしてるし、まともな恋バナしてるのシャリーンだけじゃないか?

クソ、内容が気になる。

・・・だから嫌なんだ。僕は群れるのは得意じゃない。


「だからさ、次の演習組んで、上手いことちゃんとやってる風に見せようよ。」

僕に話しかけてくるこの物好き―ムイムイはサボりたいが為にそんな提案をした。

「どうでもいい・・・。」

「よし、お願いね!」

他の人では駄目なのだろうか。

なんて思ったがそんな器用な真似が出来、かつ不真面目な相手となると僕が最適解なのだろう。

「・・・そんな上手くいくかな。」


「じゃあ、このクジ通りに組んでー。」

僕の予想通り、上手くは行かなかった。

「オーフェ!!!わーん!!!よりにもよってリーグだよぉぉぉ!!サボれないよォ!!!」

「はいそこー。大声でサボるとか言うなー。先生怒るぞー。」

「安心しろムイムイ!」

ムイムイはハッとしてリーグを見る。

「まさかサボりの手伝いを!?」

「一生懸命やった後の爽快感を約束しよう!さあ、張り切るぞ!!」

「うわぁぁぁぁん!オーフェえええええ!」

嘘泣きをしながらムイムイはリーグに引っ張られて行った。


「僕の相手は・・・。」

日焼けしてる子がこちらを見てペコッと頭を下げる。

「君か、確か・・・イパノヴァ。」

少女はパァっと表情を明るくさせる。

彼女は喋れない。いや、何人かは話せるらしいが。

少なくとも、僕はその一人じゃなかった。


僕は彼女を憐れに思っていた。

そんなことないとか、差別だ偏見だなんてそういう言い分も分かるのだが。

もし、そのハンデが無ければ、当たり前になっている負わなくていい苦労もあったのだろう、と憐れみを止めるつもりはなかった。

むしろ、その憐れみを無かったことにする方が。

失礼な気がしたから―。

勿論、それを相手に伝える事なんてしないが。

傷付けたい訳でも、ムッとさせたい訳でもなく。

僕個人が、勝手にそう思って勝手に納得してるだけなのだから。


「さて・・・。」

今回の演習はアウナリト管理の山で野宿をする事だった。

ムイムイと組んでたら今頃テントだけ立ててこっそり戻ってた所だったんだが・・・。

しかし現実はテントを建てられる場所を探すのにも手間取っていた。

それもこれも。

「どんだけ荷物もってきてるんだお前・・・。」

大荷物で山を登りながらヘロヘロしてるイパノヴァがいた。

出発前、軽装の僕を見て何かハッとして僕を待たせた挙句。

山を登るのにも待たせている。

彼女はまた申し訳なさそうな顔をする。

僕はそれにイラついていた。

「どうでもいいよ・・・うわっ!」


落ち葉で足を滑らせたのだろう。

イパノヴァはこてんと転び。

思わずその手を掴んだ僕を巻き込んで。

コロコロコロコロと転がっていく。

木にぶつかり、何とかそれは止まったのだが。

心底心配したかのように彼女が僕を見る。

大荷物のせいで転がり落ちた僕達だったが、大荷物がクッションとなって何とか無傷だった。

・・・ぐちゃぐちゃの荷物を除いて。


「あーあ・・・ご飯とか・・・まあまだ食べれるか・・・?」

彼女はペコペコと何度も頭を下げる。

「・・・どうでもいいよ。」

僕はそれを見すらしながった。

―苛つくだけだから。

「・・・いや、でも。」

ふと視線を上げると比較的平坦な場所がある。

「不幸中の幸いだな。あそこにテントを建てるぞイパノヴァ。」


「言われなくても分かるだろうが、手元に気を付け・・・」

テントを張る際にペグを打ち込む最中に注意しようとして。

涙目で指を抑えてるイパノヴァを見たり。

景色を見ながら食べよう!と言われて大量の鳥に襲われたり。

イパノヴァの張ったテントが簡単に風に飛ばされて僕のテントに来たり。


僕のイライラは。


募りに募って。


「お前!いい加減に・・・!」

つい、怒鳴ってしまった。

彼女は悲しそうに笑って。

テントを出ようとしたものだから。

僕は思わずその服を掴んで。

「出ていけとは行ってないだろ。・・・怒鳴って悪かった。・・・・・・生理なんだ。」

彼女を傷付けまいと、僕がイライラしてる理由に思わずそんな嘘をついていた。

彼女が一生懸命なのは分かっていたから。

僕も一緒に楽しんでもらおうとして鳥に襲われたのを分かっていたから。

彼女はそれを聞くとバッグを漁り、ナプキンを大量に出してくる。


「大荷物の中身、それだったのか・・・?お前も・・・?」

彼女はブンブンと首を振る。

スケッチブックを取り出し、

『何があっても大丈夫なように準備してたの。』

と書いた。

それだけじゃなく、毛布やら上着やら出して渡してくる。

鉄分のサプリまで出してきた。

彼女はただニコニコしていた。


夜、僕は彼女に背を向けて寝ていた。

暖かい格好をさせられて。

彼女は重い方なんだろうなと思った。

だからこんな準備をして、その準備をさっさと僕に渡せたのだろうと。

そういえば出発前から僕はイラついていた。

そのイラつきに気がついて、もしかしたらとあの待たせた時間で準備してくれていたのだとすれば・・・?

僕は、軽い方だったから、苦しい人が居るというのは知ってはいたが。

―そんな心配が出来るほど、僕は苦しみを知らない。


苦しみを知っていることが羨ましく思った。

同じ苦しみを共有して、他人の為になれるなら。

それ程羨ましいと思えることはない。

惨めだった。

何も知らない僕が。

彼女の優しさに気が付いていながら、僕は彼女に気を遣われる自分にイライラしながら。

思えば彼女を憐れんだのもイパノヴァだったから、なのだろう。

こちらが意図を汲み取ろうとしてるのを見て、申し訳なさそうな表情を浮かべる心優しい君だからこそ。

憐れに思われるべきは僕の方だったのかもしれない。


僕は泣いていた。

自分の惨めさに。

自分の人生の無意味さに。

誰の苦しみも分からないという苦しみに。

声が漏れていたのだろう。

イパノヴァはこっそりとテントを出ようとして。

月明かりが僕を刺した。

それで彼女が出た事に気が付きながら。

僕はただ泣いていた。


ある程度時間が経ち。

泣き止んだ僕はふとイパノヴァが外に出た事を思い出した。

デバイスでどの班がどこにテントをたてたかは分かるようになっていた。

きっと近くの班にでも行ってるだろう。

「・・・どうでも。」

いい、と口癖のように言いかけて止まる。

そんな言葉なんて、僕の心を汚してるだけなのだ。

優しいあの子を放置なんてしていい訳もなく。

僕は外に飛び出した。


「イパノヴァー?イパノヴァー!」

外は寒かった。

風が冷たかった。

きっと、彼女も同じ事を思っただろう。

彼女の渡したカイロを、彼女の分まで持って探す。

デバイスだと班がある程度固まってる場所がある。

距離もそこまでない。

きっとそこに向かったのだろう。

そう思って、走って。走って。

悲鳴が聞こえた。


足が痛かった。

それでも走った。

悲鳴が聞こえた先では、知ってる顔がいくつかあって。

恐らく叫んだのはウェルと仲のいい女だ。

ここらにいるのはウェルとつるんでる連中ばっかりだった。

そんな中、僕の目の前にあったのは。

怯えた表情で、はだけた服で、腰を抜かして、涙目で。

血だらけの倒れてる男を見ているイパノヴァだった。

それだけで何が起きたかが予測出来た。

人気のない場所で、訪れた『声の出せない少女』を。

無理やり、襲おうとして。

思わず放った魔力の当たり場所が悪くて。

大怪我を負わせてしまったのだろう、と。


彼女は今どんな気持ちなのだろう。

彼女は今どんな苦しみを味わされているのだろう。

彼女に何をしてあげればいいのだろう。

何も、分からない。

呆然と眺めてる間に演習中の"事件"が広まっていき。

ウェルの仲間たちは口裏を合わせて、怪我をした仲間を被害者に、イパノヴァを悪役にして。

何も知らない人達にそういう風に見えさせて。


演習が急遽中止になった。

その次の日から。

彼女は。

孤独になった。


「そんな子じゃないと思うんだけどなぁ。」

「・・・愛花、変な事に首を出さない。」

「でもさぁ・・・。」

愛花のそんな声を聞きながら。

僕はどうするべきか悩む。

イパノヴァの声を聞けるのが誰なのかが分からなくて。

でも、イパノヴァから誰かに相談することも無くて。

知っておくべきだったと自分の無知を恥じた。

こればっかりだった。

いつも何も知らなくて。

また惨めな自分を嫌っていく。

愛花は、聞こえるのだろうか?

だからそんな話題を?

分からない。何も。分からない。


無視されてるだけなら、大丈夫だろうと僕は思った。

僕はいつも基本的に1人だったから。

彼女が孤独なのは問題無いと思っていた。

でも事実が異なって非難されてるのは何とかしたいとも思った。

本当は、孤独も辛いと知っていたのに。

僕は、それを認めたくなかったからか。

それとも気が付かなかったからか。

事実を明らかにしたい、という事だけ考えて。

でもその行動を移せずにいた。

僕は、人として弱かったから。

何の経験もしてない僕は、イレギュラーに耐えられなかったから。


1ヶ月が過ぎて。

僕はふと、校舎の外でイパノヴァを見かけた。

誰かを探しているかのように。

僕は声をかけるか悩んで。

何もしないことを選ぼうとした。

その瞬間だった。

3階の窓から水が落ちてきて。

イパノヴァはビショビショに濡れた。

「・・・おい!大丈夫か!」

窓にはウェルと仲のいい女が一瞬見えた。

イパノヴァは駆け寄る僕を見て。

泣き出したいであろう今。

笑顔で、手を小さく振った。


『慣れたから』

そんな文字に僕は驚かされる。

近くの公園のブランコで僕達はただ沈黙する。

慣れたから?

1ヶ月もあった。

僕は、慣れるほどになった、そのイジメにすら気が付けなかった。

彼女の事を見ようと思っていながら。

見る事すら出来ていなかった。

「・・・すまない。」

その言葉に彼女はキョトンとする。

『私は大丈夫。』

「・・・そうか。・・・。」

なんて声をかければいいのかが分からない。


僕は、ただ、泣いた。

泣きたいのは彼女の方だっただろうに。

彼女は僕の背中を擦りに来て。

情けなくて。

許せなくて。

彼女の苦労を想って。

その苦労も分からなくて。

僕はただ、泣いた。

こんなに涙もろかったとは、僕自身も知り得なかった。

僕が、人と接していかなくても、生きていけるだなんて思い違いをしていたせいで。

人の温かさに触れる機会も、自分の弱さに触れる機会も無かったのだから。


僕は決意した。


彼女を苦しませるのは、もう嫌だった。


だから僕は―


いつも勝手に空いてる教室を占拠してるウェル組に。

僕はズカズカと入っていく。

ウェルが居ないのは幸いだった。

あいつはサシでもないと勝ち目が無いくらいには強い。

サシでも、どうか分からないが。

僕のやることはだいたい上手く行ってきた。

だから、きっと、大丈夫。

それでも教室の中には7人いる。

そして、あの女も居た。

「あん?オーフェじゃん。何しに・・・。」

僕は彼女の頬を思いっきり握り拳でぶん殴った。


7人と揉み合いながら、僕は必死に噛みつき、殴り、蹴った。

その気になれば魔力で大怪我を負わせることもできたが。

僕は敢えて肉弾戦のみで挑んた。

イラつきを拳に。

怒りを蹴りに。

途中まで、がむしゃらに殴りかかってたおかげか、優勢だったのだが。

「・・・グッ!?」

何かに背後から脇腹を振り抜かれ、僕は床に倒れた。

「おうおう、オーフェちゃん。派手やってるじゃん?そんなに俺の女になりたいか?」

「・・・ウェル!」


ウェルは剣を持っている

峰の部分で振り抜かれたのだろう。

「分かってるよなぁ・・・俺らに逆らったら。」

僕は目を閉じた。

最後まで足掻く決心を固めて。

睨みつけようと目を開けて。

「・・・なっ!?」

「お?イパノヴァちゃんじゃーん。」

イパノヴァがすり抜けるように入り込み、僕の前にいた。

「はは、さあどうしてやろうかな?」


「どうするかによっては許さないけど?」

「・・・あん?」

ウェルが振り返る。

リーンが仁王立ちをしている。

いや、それだけじゃなく。

リビとリーグと愛花と怜奈とマキナとキッソスと。

「・・・ちっ、上位勢揃い踏みって訳か。」

「イパイパはあーし達と仲間だからNE☆」

ウェルは手を挙げる。

「わーったわーった降参だ。流石にこの人数相手に挑むほど無謀じゃねぇよ。今回のオーフェの殴り込み"は"無かったことにしてやる。」


そんな話を聞きながら。

イパノヴァは僕の腹の痣を見て、自分の服を少し破り。

水筒の水でそれを濡らして、当てた。

痛みが染みたが、嬉しかった。

痣の対応としては、これが嬉しいのだと。

そう思いながら、僕は疲れで眠りこけてしまった。




「ねぇ、イーム。」

「断る!」

「えー?でもさぁ、このまま放置もマズイじゃん?」

「どうしたんだムスルス。」

「お、レビア!いやさぁ、私たちでウェル誘ってさ。ウェル組解散する代わりに授業で狡し合おうぜ連合組もうかなって。」

「私はやらんぞ・・・。」

「・・・なるほど、ウェルの悪事を見守り、行き過ぎたら止める為、か。いいだろう、やろうかイーム。」

「はぁ・・・。」



「・・・ん。」

「お、起きた?」

僕はリーンに背負われていた。

「・・・お風呂入りたい。」

意識が半覚醒だった僕は思わずそう呟いていた。

「じゃー、みなのしゅーで温泉とかどー?貸切温泉が近くにあってー。」

しっかり目が覚め、辺りを見回すとリーンとリビと愛花とイパノヴァで歩いている。

「お、行く?いいの?ただでさえ背中でオーフェの感じられてるのに!!」

「私タオル巻いて入っていい?リーンに見られるの嫌かな。」

「僕も愛花と同意見だ。というか降ろせ。」


カポーン。

「・・・イパノヴァ大きいな。」

「大きいね・・・。」

タオルを巻きながら。

僕はイパノヴァを見て、リーンと同じところに着目する。

「何の話〜?」

「リビも大きいな。」

「大きいね・・・。」

リビのを見て、これまたリーンと同じところに着目する。

「・・・何やってるんですか?」

「小さいな・・・。」

「小さいね・・・!」

「小さくないわい!」

愛花を見て、以下略。


「ふー!さて、あとは帰りますかー!」

全員でサッパリした後。

きっと僕を心配してくれたであろうみんなと解散して。

僕はイパノヴァと2人になった。

「・・・なぁ、イパノヴァ。その・・・。」

イパノヴァは僕の方を見て首を傾げる。

「・・・ぁぃがと。」

小さくて聞き取りにくい声になってしまったが。

彼女は微笑んだ。

それだけで僕は暗い暗いトンネルを抜けて。

初めて陽の光に当てられた気分だった。

「なあ、明日あの山に行かないか?」

彼女は元気に頷いてくれた。


「ふぅ、ついたな。」

僕たちが前にテントを張った場所。

僕たちの思い出の場所。

「・・・こんな景色なんだな、鳥がいないと。ふふっ。」

彼女と笑い合う。

ぼーっと僕は景色を眺めて。

イパノヴァが慌ただしくなったのに気が付いた。


「・・・蛇?ああ、何もしなければ大丈夫・・・。」

イパノヴァは既に魔力を放っていた。

「あ、おい!」

驚いた蛇は僕たちの方へ真っ直ぐ進み。

イパノヴァの腕に噛み付いた。

「あっち行け!」

僕は蛇を掴んでぶん投げた。

蛇は逃げていく。


「はぁ、言わんこっちゃない。ちょっと待ってろ。」

僕はイパノヴァの噛まれた所から彼女の血を飲んだ。

顔を上げると、イパノヴァは目を丸くしている。

「大丈夫、毒は無い。僕の能力なんだ。」

(そうなんだ!ありがとう!)

「いや、礼を言われる程じゃ・・・え!?」

僕も目を丸くしていただろう。

「・・・今の、イパノヴァの声だよな!?」

(うん!うん!!聞こえてるんだ!)

僕は思わず彼女に抱きつき。

彼女はそんな僕を抱きしめてくれた。


2人で座りながら景色を見ていた。

「この能力はいくらでも悪用が効く。秘密にしていてくれ。」

(うん、わかった!あ、もしかして沢山ご飯食べてるのって?)

「・・・これは独り言だが。ご飯を食べてるとそれがどんな苦労があって作られたかが何となく分かるんだ。・・・僕は苦労も苦しみも知らないまま生きてしまったから・・・少しでも知りたくてな。」

イパノヴァは静かに聞いている。

「・・・この事を教える事があったら、秘密にしてくれと言うだろうな。まあ、独り言で教えるつもりはないのだが。」

イパノヴァは僕の肩に自分の肩を軽くぶつけ、意味ありげに笑う。


が、何も聞こえない。

聞こえてこない。

「え・・・あ・・・聞こえたのは、一時だけ・・・だったのか・・・?」

ショックだった。

(・・・ふふ、うふふ!)

彼女の笑い声が聞こえてくる。

「あ、おい!酷いぞ!!」

(ふふ!ごめんなさい!!)

僕達は笑いあった。


それ以降、イパノヴァへのイジメは無くなり。

僕達は楽しく学校生活を満喫した。

そして卒業の日。


(ねぇ、初めてあった日を覚えてる?)

「懐かしいな。イパノヴァと出会えて、僕はとても楽しかった。」

(うん!私も!・・・もし、さ。私たちが同じ隊に所属出来たらいいなって。)

「どうかな・・・。余程の物好きでもない限り無理だろ。・・・リビならやりそうだがもれなくリーンがついてくるしな。」

(んー・・・いい子なんだけどねぇ・・・。)

「僕は嫌だな!」

(私も!)

お互い冗談でそう言い合う。

リビとリーンともう1人。誰になるだろうか。

特殊部隊に入れない、なんて事はリビがいる限りは拾ってくれそうだが。


もし、僕達2人を誘ってくれる物好きが他にもいたのなら。

きっと、そいつとも楽しい生活を送れるだろう。



今、話したのが僕の思い出にして。

1番の宝物。

オーフェの過去話でした。

オーフェはとある楽曲をヒントにして作られたキャラクターですが、この話にどの曲かのかなりのヒントが隠されてます。

それも探してみてね!

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