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愛の歌  作者: Dust
4章
82/229

80話

その異形を目の当たりにして。

頭の中に浮かんできた1人の名前。

違うと否定したい気持ちがあった。

戦場において迷いは生死を分けることを舜は知っている。

それでも、1度だけ。

1度だけ優しい声で、優しい笑顔で。

その名前を呼んだ。

「・・・オーフェ。」

「A・・・GUu・・・AGYAAAAAAaaaaa!!!!!」

異形はその名を聞き、苦しみもがくような仕草を見せて。

その蜘蛛の足で舜を吹き飛ばした。


その反応だけで十分だった。

穿たれた腹の痛みも気にせず、血を吐いてからその目で異形をしっかり捉え、剣を出す。

(さて、あの形状相手にどうやり合うべきか・・・。)

人を殺し慣れているとはいえ、人外相手。

流石の舜も思案に暮れている間に。

「フォイヤ!」

ムルシーが両手に炎を纏わせながら異形へ殴り掛かる。

一撃目、前にある足の付け根。

二撃目、蜘蛛の胴の側面。

三撃目、アッパーのように腹部分。

四撃目、人型の厚く覆われている脇腹。

五撃目、上から下へ全体重をかけて叩き付ける。


流派撃滅五輪拳りゅうはげきめつごりんけん!!!」

相手の隙を付き与えた五の打撃で、相手の動きを止めにかかる。

(どうだ・・・?)

「GA・・・Aaa・・・!」

異形に効果があると踏んだムルシーは腕を引き、全力の魔力を持って拳から炎を飛ばす。

「っ燃えろ!!!!!」

上部の人型が自身の横から放たれたその炎を目視し、捻りながら両手を顎に見立てて上下に構える。

「GIGON AGEGOGU。」

開いた腕を口を閉じさせるように閉じさせると、炎が消し取られた。


「なっ・・・!?」

「GAAAaaa!!!!!」

異形は動けるようになると前足で糸を絡め、蜘蛛の巣のような形状にさせるとそれをムルシーに向ける。

「GOIGYAa!」

その糸からは炎が吹き出、ムルシーの胴を包む。

「あぎゃあああああ!!!!」

ムルシーは手で必死に顔を覆いながらも悲鳴をあげる。

「ムルシー!」

現場に到達したシュヘルの魔弾がムルシーを異形の炎から遠のけさせ、ムルシーは顔を覆ったまま地面に転がり鎮火を図る。


全てを壊すもの(ラグナロク)。対象は異形との繋がり。」

その隙を付いて舜が異形へ触れる。

バチンと魔力同士が走り、舜の手が弾かれる。

(何の異形かが分かってないから効果は薄いのか・・・?・・・だが。)

人型と右腕の金の糸のが壊れ、そこに人の腕が見える。

確実に切り離せる。そう確信させるには十分だった。

「GAMEGA!!GAGEGAIIIiiiiiii!!!」

異形は前足で舜のいた地を刺し穿つ。

が、既に舜は後ろに離れ地面に突き刺さるだけであった。

「GITOGIGAIGYAGA!GIGYAGAAAaaaaa!!!」

異形は絶叫をあげながら舜をターゲットにする。


前足をこね、糸をまとめ舜の頭上へ糸を飛ばす。

(足から糸を出せる・・・その時点で普通の蜘蛛とは違う。)

思案する舜を影が覆う。

巨大な岩が頭上に現れ、落ちてくる。

「・・・・・・。」

糸を頭上に投げた時から上からなにかする事を頭に入れていた舜は何気なく避け―

「・・・!」

岩の落下地点にあった糸に岩が吸い込まれていくのを見た。

(あの糸で包んだものは収納可能・・・いつでも出し入れ出来るとなると・・・。)


何を収納していたら嫌か。

岩だけでなく、例えば大きな木。家ってのもあるか。

固体だけとは限らない。どこまでの大きさまで出来るのかは分からないが例えば池やら湖。いっそマグマ、何てものも行けるのだろうか。

直近で獰猛な野生動物なんかを収集していれば操れは出来なくても暴れさせは出来るかもしれない。

いや、アウナリトが用意した異形ならむしろこの中に人を入れて軍隊を運ぶのもありか。

となると大量の敵軍と異形が相手ってのも有りうる話。

舜はとにかく1番嫌なパターンとそれに対する対応策を探す。

最悪なパターンを想定しておくことで被害を最低限に減らそうとする。


「シュヘル先輩!」

「ああ!」

異形が舜に注目してる間になんとか体勢を建て直したムルシーが拳を構える。

「フォイヤ!」

ムルシーの炎が、

「はぁっ!」

シュヘルの出した透明な箱よって空中で閉じ込められる。

火種が少しずつ元気を無くし、ゆっくりと小さくなっていく。

「「バックドラフト!」」

異形側に開いた箱は空気を思いっきり吸って。

爆発的な炎が異形へ襲い掛かる。


「GUUUuuuu!」

音と魔力に反応した異形はその炎へ向かって腕を顎のように上下に構える。

が、意識が逸れた内に動いた舜が蜘蛛の上に乗りその腕を掴んだ。

全てを壊すもの(ラグナロク)。」

その声を聞いた瞬間に腕を閉じ、舜と異形は炎に包まれる。

「わぁぁぁ!?!?やっちまった!?やっちまったっすか!?」

「どうしたのムルシー?」

腕を弾かれながら炎の外へ飛び出してきた舜が尋ねる。

「わぁぁ!?無茶するっすね!?」

「うん、ちょっと火傷しちゃった。」

炎が消え、異形はダメージを置いながらもこちらを赤い目で睨む。


「GAAAAaaaaa!!!」

怒り狂った異形が糸を前足に絡ませて、そこから何かを飛ばしてきた。

「・・・なっ!?」

それは、舜のどの想定よりも最悪なものだった。

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