74話
「・・・さて。どうしたものか。」
直感、と言うよりは向こうが隠していないと言うべきか。
「本当は撒いてから会う予定だったんだが、全員居ちまうな。」
舜はボヤきながら剣を出す。
「どうした?急に剣なんて・・・。」
シュヘルの言葉を剣がぶつかり合う轟音が止める。
「不意打ちでもすればいいのに。」
「馬鹿言え、踏み台相手にそんな事する奴がいるか、よ!」
鍔迫り合いの状態からライガは剣を振り払う。
舜は少し浮かされた身体をトントンと後ろに下がりながら、片手で構え直す。
舜は1歩踏み込む。
(昨日のでだいぶ剣筋は見せてもら・・・。)
「・・・!」
「どうした?余所見でもしていたか?」
攻撃の為の動作が、ライガの攻撃を受け止める動きへせざるを得なくされた。
「ようやく目が覚めてきたところ。」
「吐かせ!」
ライガの攻撃を止めながら、1歩下がる。
(速くなってる・・・。昨日とはまた覚悟が違う、か。)
打ち合った衝撃で震える剣先を眺めながら、舜は思う。
(知りたい・・・。ライガにここまでさせた何かを。・・・想いを。)
(俺は強い!それを兄貴に見せつける!その為に!!)
「テメェを喰わせてもらうぜ!獅子奮迅!」
「無駄です。」
怜奈は剣を出し、飛ばす。
消える。
「・・・朧月夜。」
不発。
「万物流転、有為転変。全ての物には必ず終幕の時が来る。だから貴女の魔力を理不尽にも閉ざさせて頂きました。」
怜奈は月を出そうとする。
だが、出ない。
「リライエンスでの行動も全て情報として知っております。それに、貴女の魔力は知り尽くしております故。貴女の魔力では最早太刀打ちできません。」
怜奈はただ無言でマキナを見つめる。
(・・・怜奈様。貴女は昔から人を人として見ていない。その無表情の奥にある凶暴性、私で無ければ大量の死人が出た事でしょう。)
「だから私が貴女を止めに来た。貴女を警戒し続け、観察してきた私なら確実に勝てるから・・・。」
「密度・最大!」
「はは!いきなり最大とは!」
キッソスは身を躱そうとしながら、辺りの魔力を集めてはぶつけ続ける。
愛花の魔弾は魔力をぶつけ続けられながら、進み、進み、緩み、進む。
そのほんの少しのスピードの緩みでキッソスはスレスレのところで躱しきる。
「・・・。」
(来たか!)
愛花はただ殺意を持って手を前に突きだす。
(君の厄介なところはその魔力の高さでは無い!君に不利益が出る時に起こる人格の変化だ!)
キッソスは愛花が放ち、霧散させた魔力だけをかき集める。
(ギースとの戦いとオーティエの戦いを研究して分かった!その状態の君は無敵に等しく、唯一2つの弱点しか通さない。1つは理の外へ出ること、しかしこれは四凶オーティエレベルでなんとかという、まず無理と思っていいだろう。そしてもう1つ!)
ニヤリとキッソスは笑い、そして誰にも聞こえない声でぽつりと洩らす。
「君自身の魔力には一切の反応が出来ない。・・・だから僕が君を殺しに来た。僕でないと勝てないのだからね。」
「ダリル様。リビの言う通りの争いが起こっております。こちらの布陣が筒抜けの証拠、内通者が居るかもしれません。警戒を。」
「ふむ・・・。昨日のはやはり生ける炎か・・・。」
ダリルは1人頷く。
「今からでも布陣の変更を・・・。」
「要らぬ。敵の思考すら全て踏み越えさせよ。乗り越えさせることに意味がある。」
「・・・?」
「・・・・・・これは、決して己に負けた訳じゃない。」
怜奈の力が高まる。
(・・・わた・・・しが・・・私が・・・やらなきゃ・・・。)
愛花の意思が高まる。
そして2人の手は、伸ばされた。




