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愛の歌  作者: Dust
4章
72/229

70話

「遅かったじゃねぇの!最期に盛りあってでもいたのか!?ギャハハハハ!」

下品な笑い声が響く。

「・・・なんであんたらがいるの?」

リーンが睨みながら悪態をつく。

「なんでって・・・ねぇ?あんたら特殊部隊だけじゃ心許ないって言うから俺達まで狩り出されてるんだけど?」

特殊部隊の2位から10位までのメンツ。

それに加え4人の男女、ウェル・レビア・イーム・ムスルスが集まっていた。


「ま、楽して稼ぐのが1番だけどよォ。国無くなっちまったら金貰えねぇしな。2位なんか名乗ってるリーグに模擬戦でも勝ったことあるこのウェル様に任せとけよ。」

「卑怯な手段使ってじゃん。」

ウェルは口元の笑いを保ったまま目でリーンを刺すように見る。

「戦争なんざ勝てばなんでもいい。卑怯でもだ。立派な志のてめぇらより俺らの方が殺し合いには長けてるだろうなぁ。元王族も裏切った1位様も俺たちで・・・」

「やめといた方がいいよ。死にたくなければあの2人とだけはね。」

リビが静止する。


「そういえばリビはこいつらに負けた事ないもんね。私はそもそもやらなかったけど。」

7位のシャロンが口を挟む。

「はん!情がある奴なんかに・・・」

「舜ちゃんは殺すまでは情なんか見せないし、怜奈は私たちにはかけてくれないよ。」

しばしの沈黙。

「それじゃあ舜の侵攻を止めずに見守れって訳?」

「俺がやる。お前らは邪魔をするな。」

ライガがぶっきらぼうに言う。


「ま、ライガがそう言うなら仕方ないよね!」

「お前はいつも適当だな、ムイムイ。」

8位のジャメールが9位のムイムイと話す。

「そ!テキトー最高!」

リーグの咳払い。

「そろそろ作戦会議を始めるぞ。舜はライガに頼むとして、怜奈と愛花をどうするかだ。」

「怜奈様は私が行きましょう。」

「愛花君が他の者の手で倒されるのは忍びない。」

マキナとキッソスがそれぞれ名乗りをあげる。


「相手にもまだ警戒対象がいるとはいえこれだけ人数がいる、他に連れて行きたい人とか・・・」

「要らん。」

「結構です。」

「僕一人で十分さ。」

3人とも拒絶する。

「・・・そうか。・・・お前ら死ぬなよ。」

そんなリーグをただリビが鋭く見つめていた。




「それじゃ、かんぱーい!」

「乾杯っすー!」

舜はローグの5人とお酒を飲んでいた。

「俺が戦で連れてくのはシュヘルとムルシーとモブA・B・Cと。」

「待て待て待て待て誰がモブじゃい。」

モブと呼ばれた男達がやんややんやと抗議する。

「うるせぇモブはモブ通し協力し合ってドラゴンでもバスターしてろよ。な、ムルシー。」

「そうっすね!こいつらはモブでいいと思うっす!」

紅一点のムルシーも賛同しながら酒を飲む。

「ムルシーてめぇ!」

ワイワイ言い合いながらもシュヘルを除いてその表情は柔らかい。


「なんか思ってたよりも普通の人間なんだな・・・。」

「そりゃあ俺らはただ生き抜くためにクロム様に付いてただけだしな。無能力者虐める趣味もありゃしねぇ。まあ、そういうイメージを付けちまうほど悪い連中がうようよしてたのも事実だが。」

「そういう奴らも、普通の人間だった。」

シュヘルが初めて口を開く。

「・・・聞かせて。」

「・・・ただ、相応以上の力を持った人間は溺れてしまう。それだけの普通の人間だったんだ。」

「じゃあ・・・俺たちは力に溺れないように気を付けないとな。」


重苦しい空気が流れる中、舜は酒をぐいっと飲む。

「じゃあお前ら死ねない理由を挙げてこうぜぇ!全員生存するためによォ!」

そして重苦しい空気をぶち壊すかのように叫ぶ。

「ハイハイ!楽しいことして過ごす為っす!」

全員で笑い合う。

そんな中、1人シュヘルだけが難しい顔をしていた。

「・・・無い、な。なんで今生きてるのかもあやふやになっている。」

「・・・なんでもいいんだよ?なんなら兄とクロム殺した俺が憎いとかでも。」


真っ直ぐ見つめる舜にシュヘルはその目を見る。

「前に言ったように、割り切っている。」

「割り切るってそんなんじゃねぇでしょ。その感情を捨てろって訳じゃなくて、ただあまり表向きに出さず表面上は仲良くやるっていうか。」

ハッとしたシュヘルの目には感情がこもる。

「・・・そうだな。殴りたいヤツがいる。・・・目の前に。全てが終わったら頼んでみようと思う。」

「おー・・・そりゃいい死ねない理由だね。そいつがどう答えるかとか、妄想のしがいがあるね。」

フッと舜はシュヘルに笑いかける。


「それで舜さんは?」

「んあ?俺?」

それはもちろん、復讐の為。

「・・・。」

(今回戦争にまで向かった理由は愛花と雪乃が巻き込まれたからだよな。今思えば、元々ローグとやり合ってたのも俺みたいな不幸な人間を作りたくないからだし、クロムとやり合ったのも無関係な無能力者を巻き込みたくなかったからだ。・・・そうか。)


「・・・俺が死んだら守れないもんな。守る為に死んでもいいと思ったことは多々あるけど・・・。」

違う。

「守りたいものを守る為に戦ってきてたんだな、俺。」

違う違う違う。

「なんかようやくスッキリした気分だ。ずっと喉に何かつっかえてたような気がして。」

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う。


ワタシヲ、ワスレルノ?


「忘れる・・・もの・・・か・・・。」

「わー!飲みすぎたんすか!?ほら水飲んでほら!」

「んー・・・いや、ちょっとふらっとしただけ・・・。」

ムルシーが舜の傍から酒をどかす。

「今日はもうお酒禁止っす!ほら、コーラとかで。」

「コーラ?」

爺やに出されてたのは紅茶やコーヒーだけで、自分からもそういえば飲んだ事がなかったなとふと思う。

黒くてシュワシュワとしてる液体を恐る恐る飲み、目を見開いた。


「こんな美味い飲み物は始めてや・・・これに比べると酒なんてカスや・・・。」

その後も親交を深める為の飲みは遅くまで続いた。

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