69話
寂れた通り。
「・・・随分お早いお迎えかい。何かあるねぇ。」
合流する地点より前に現れた集団。
舜はみんなに警戒を促す。
「・・・失礼を承知で貴様の腕を見せてもらいたい。」
「・・・・・・そ。」
舜は剣を出し片手で構える。
「あっさり剣を出すんだな。・・・貴様が殺してきた中で2人組の男を覚えているか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
舜は左下に目線を動かす。
「覚えてないか。まあ仕方が・・・。」
「いや、それだけだと該当数が多くて困ってるだけ。もっと何か特徴ない?」
男は舜の目を真っ直ぐ見る。
「殺した相手を覚えているのか?」
「・・・?全部覚えてるけど・・・。」
男は舜の目を見て、その言葉の真偽を探る。
「・・・そんな事より、ダリルは上?」
舜は上を見る。
屋根から黒い球体の、その1部だけがパッカリ開いた何かが落ちてくる。
その何かは次々と落ち、それらがその開いた口で共食いを始め、そして人型に蠢いていき。
1人の人間の形を作り、1つの物体となり。
黒いものをパッと弾き飛ばして男が立っていた。
「・・・この、変なの?」
「うん・・・!」
かつて対面した3人に問いかけ、漣の緊張した返事を聞きながら。
「・・・どうも?」
「ふむ?」
舜が差し出した腕にダリルは手を伸ばし―
「舜兄!?」
ダリルの手がパカりと真っ二つに別れ、黒い刃が現れる。
が、舜はそれにビクともせず刃を握ってブンブンと振った。
「シュヘルの非礼は詫びよう。こやつはお前に兄を殺されていてな。」
「いや・・・ダリル様・・・なんでそれで普通に会話続けようと思ってるんですか・・・。」
シュヘルと呼ばれた男は困惑する。
「それとこやつはクロム様に最も忠誠を誓っていた身でな。我ら柱は他の目的ありきだったが、こやつは素直に従っていた。それ故にお前を・・・。」
「ダリル様。」
シュヘルははっきりした声で止める。
「既に割り切っております故。ただその実力を目の当たりにしたかっただけです。」
そうか、とダリルは頷く。
「まずはローグの連中と打ち解けてもらおうか。向こうで協力者が動いている。まだ時間はあるのでな。」
「協力者・・・?あ、キアラ?」
レアスの元にいて、1度対峙した少女を思い出す。
「そいつもだが・・・それ以外にもいる。」
「ふーん・・・。知ってる人かな。」
「知っているとも。協力者の名は・・・。」
「さて、あーし達も動こうか。」
「ライガは?」
リーンはリビに聞く。
「あの子、思ったよりお兄ちゃんっこだからね。・・・敵になるよ、必ず。」
「・・・・・・・・・。」
リーンは悲壮な表情を浮かべながら黙り込む。
「なあ、俺役に立てるの?リーンみたいに本来トップ10に入れてる化け物とは話が違うんだけど。」
「きっとね。頼んだよセロ。」
アウナリトの隊長、副隊長の決め方は特殊部隊を志望した者の成績順である。
故に本来、10位に近い者たちは存在しうる。
しかしこの年には2つの壁が存在していた。
1つは、圧倒的な実力で他との差をつけた怜奈との壁。
そして、もう1つが10位のリーンとの壁である。
アウナリトの成績は能力込みでの優劣をつける。
しかし、リーンは学園時代その能力を一切使わなかった。
いや、使えなかった。
それでも尚溢れ出る才能で10位に入り込むのに文句を言わせなかった。
能力込でも彼女と真っ向からやり合える特殊部隊は少なくとも9人しかいない、という事である。
「トゥールの能力は活かせるだろうな。」
『・・・・・・ワタシはどちらにもまだつかない。』
リーグの言葉にトゥールは静かに、しかし響き渡る声で否定する。
「なあ、トゥールに聞かせてて良かったのか?」
「うん、大丈夫だよ。」
セロの不安がる声にリビが落ち着かせる。
「他に参加出来そうな人は?」
「いない。あーし達で戦争が始まったらレイガを足止めする。」
「もひとつ確認。本当にオーフェは処刑されちゃったの・・・?」
「リーン。」
リビは首を振る。
「・・・・・・オーフェ。」
「ごめんね。優しい貴女に伝えたくはなかったのだけど。貴女の力が必要だったから。」
リビは首を振る。
「大丈夫。やるよ、私。それじゃあもっと詳細を・・・。」
「本当に君の言う通りになったな。」
「でしょでしょー!」
「それで君の要求は?」
「んー、だからお金だってレアス様。」
そう言われたレアスは言葉の裏を探るように見る。
「まあ、何を企んでいようがいい。利益が一致するならな。」
「ふふ、私に任せてよ。舜様追放から攻め込むまで操ってみせたように手のひらで踊らせてあげる。」
「ああ・・・頼んだぞ。」
笑う少女にレアスはその名を呼ぶ。
「エリ。」
あけましておめでとうございます。
皆様のおかげで11月、12月と0PVの日が0にできました。
とても嬉しいです。
モチベーションも結構あって今年中にこのルートは完結させたいなぁと思っています。
頑張ります。
応援してください。