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愛の歌  作者: Dust
4章
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66話

「ターガレス・・・。匿ってる男を引き渡せ。」

「断る!」

既にターガレスとデイムは話を始めてる。

舜はつかつかと歩きながら剣を出す。

「まてまてまてまて旦那!まだ話し合いの段階だから!」

「え?でも・・・」

「でもじゃなくて!」

残念そうに舜は引き下がる。


「その男さえ引き渡せば、今まで通りの生活は保証しよう。いや、それ以上の待遇を数人になら与えられる。」

「んなのは間違ってるだろ!お前はずっと!仕掛けてきたのは向こうだろ!なんで悪くない者が被害を被らないといけない!無能力者だってそうだ!なんで加害者を立てて被害者を犠牲にする!」

デイムは静かに返す。

「理想だけでは守れないんだよ。それに命の保証はしている、要求しているのは最低限の犠牲だけだ。」


かつて友人だった2人。

片方はこの世界の犠牲者を救うために立ち上がり、片方は最低限の犠牲で守れるようにと思った。

似てるようでちょっとした違いが2人をすれ違わせる。

(・・・もういいかな?)

(まだ待ってあげた方がいいんじゃないですか?)

そのすれ違いを暴力でさっさと終わらせようとしてる男もいるが。


「最低限の犠牲ってのはてめぇらが勝手に決めたもんだろうが!納得出来ない奴がいるからこうやって集まってんだろ!」

影から、屋根から。様々なところから無能力者の目線が鈍き光となりてその2人を眺める。

「では、どうすると言うのかい?アウナリト軍にまとめて潰されろとでも?」

「・・・ア、アウナリトまで行って戦う!」

震えた声でターガレスは宣言する。

「駄目だ!」

感情的にデイムは叫ぶ。


「僕が何のために力を手に入れたと思っている!僕がなんのためにこの地位まで上り詰めたと思っている!僕は・・・!僕は・・・!!!・・・お前まで僕の元を離れないでおくれ・・・。・・・僕に守られていてくれ・・・頼む・・・。」

「・・・安心しろ、終わったらまた戻ってくるさ。ただ・・・希望ある明日をみたいだけだ。」

崩れ落ちるようにデイムは膝をつき、顔を覆う。

ターガレスも片膝をつき、デイムと目線の高さを合わせる。

「・・・絶対死ぬなよ。」

「・・・ああ。」


ざわつきが包む。

「デ、デイム団長!どうするんすか!?」

「対象だった者は既に国外に出ていた。この国に危害はない。・・・それでこの国の問題はおしまいだ。」

「で、でもぉ・・・。」

ナキムがざわつく他のものたちを見る。

「デイム団長。ここでターガレスも舜も倒し、あなたの混乱の元を断ってあげましょう。・・・あなたを罪人にすることなく終わらせますから。」

「待て!!」

デイムの静止も虚しく、何人かが飛びかかる。


ターガレスは"持っていた"モーニングスターで応戦する。

弱さを自覚している彼が、作れる訳でもなく頼りきりな武器。

漣は槍と炎で、愛花は魔弾で、咲希は爪で止めるために軍と対峙する。

そんな中、舜は何かを思いついたかのようにデイムへ近づいて行く。

舜の意図を確認するかのように見守る雪乃と、いざとなった時に舜を守れるよう怜奈が準備する。


「ターガレスを守りたいんだろ?」

舜はデイムに話しかける。

「いいの?守りたいんなら一緒に行かなくて。」

「・・・っ!僕は・・・この地位を・・・。」

「ターガレスを守るために、じゃないの?国とターガレス、どっちを優先するの?」

デイムは自分の頭がぐわんぐわんと歪むのに頭を抑える。

(もう一押し・・・!何か・・・!)

見回して、戦況を一瞬で把握しながら。


ふと、ナキムを見つける。

デイムの背後に周り、膝をついて呆然としているデイムに見えないように剣を出す。

「・・・っ!させないっす!」

デイムを殺そうとしてるように見えた舜に、ナキムは猛然と襲いかかる。

舜は剣を消し、魔力を高めた腕で受け止めながら。

ナキムの本気の剣はさすがに防ぎきれず、腕から血飛沫が上がる。


「・・・あ、愛花!」

その声は助けを求めるように聞こえただろう。

備えてた怜奈も一瞬動きかけたが、雪乃に手で静止され留まった。

「舜兄!?」

愛花の意識は武器を出せすらしてない舜と、それに襲いかかるナキムへと狭まる。

その時だった。


「グアっ!」

愛花の守りが無くなったターガレスへの攻撃でターガレスのモーニングスターが砕け、ターガレス自身も尻もちを付いた。

好機とターガレスにトドメを刺すために1人飛びかかる。

漣も咲希も他との交戦で向かえない。


すべてが計算通りだった。


「・・・っ!・・・はぁ!」

ターガレスを守るべく、立ち塞がった少女。

もはや団長と呼ばれた彼女ではない。

かつてターガレスや他の3人と友人であったデイムの姿がそこにはあった。

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