63話
「断るってば。そこまで長居するつもりもないし。」
「わかった!1年でもいいから!」
「だから長ぇよ!!!」
交渉は長引いていた。
「そもそも鍛えるって言ったって・・・。」
そうとだけ言って舜は黙る。
「愛花。迎え撃つ?」
「・・・?」
愛花はキョトンとただ立っている。
「・・・いや、大丈夫。向こうから真っ直ぐ来てる。」
振り返ると真っ直ぐ向かってくる男が1人。
「ターガレス!俺と正々堂々勝負しろ!」
「・・・鍛える代わりにこっち対処してあげる。」
小声で舜はターガレスに呟き。
「リーダーとやり合うつもりなら先に俺と戦ってもらうっすよ!」
ノリノリで下っ端役をやり始めた。
「お前はさっき団長との戦いに割って入った奴だな!」
「そういうあんたは?」
ふふんと男は鼻を鳴らす。
「デイム団長が一番弟子!ナキムだ!」
ナキムはそう言うと剣を構える。
「どうした!お前も構えろ!」
「構えさせてみな!」
笑いながら言い放ち、ふっと笑みが消える。
ナキムは言いようもない威圧感に押されていた。
(振るい立て!デイム団長の為に殺し合いに来たんだろ!奮い立て!!)
「トリャアアアア!!!!」
必死に自分に言い聞かせ、ナキムは飛びかかり。
その剣は舜の左手のひらにあっさり止められた。
そして舜はニッと笑う。
「その程度か!」
ガッチリ刃を掴まれ、思わず怯んだその顔に空いた右の腕で顔面をぶん殴る。
「俺に武器を出させられない程度ならリーダーに勝てるわけも無いっすね!」
「お、覚えてろよォぉぉぉぉ!!!」
泣きながらナキムは去っていった。
「素手で・・・こんな魔力者に溢れているというのにデイムの一番弟子はこの程度なのか。」
ターガレスが不安そうに呟く。
「いや、少なくともあんたじゃ逆立ちしても勝てないよ。・・・ま、優しすぎるのは不安だがね。」
多少斬られても愛花がいるからと素手で挑んたものの、斬る寸前に本人すら知ってか知らずか加減された。
(・・・ま、俺が心配する問題でも無いな。)
そんな事を思っていた折だった。
「・・・ん、電話?」
コール音が鳴り響く。
「もしもし。」
「あ、まずいことになった!私も今知ったんだけど!」
電話先のエリが早口に捲し立てる。
その時、爆音が鳴り響いた。
「・・・なんだ!?」
「アウナリト軍がビャフーストに進軍してたの!」
「・・・なっ!?」
辺りで騒ぎが起き始める。
「・・・正気か?・・・狙いは。」
舜は息を飲む。
タイミングが良すぎる。
ビャフーストに攻め込もうなんて話はアウナリトにいた時一切聞かなかった。
なら、アウナリトの狙いは1つなのでは?
そんな思考が回り回る。
(俺が原因だとしたら・・・関係ない人が巻き込まれすぎる・・・!)
「あ!待って舜兄!」
そして舜は全力で走り出していた。
「始まったようだな。・・・さて、どうなるかね。」
葉巻を吸いながらカオスは集めたメンバーを見る。
「仮にも相手は国。如何にカオス様が注目してる男とはいえ、とても何とかできるとは思えませんが。」
「フーロちゃんの言う通りっすよ。全面的にフーロちゃんを支持するっすね。」
はぁとフーロは溜息を吐く。
「私に賛同するから、ではなくお前の意見を言えシュネール。」
「んー?まあ・・・わざわざアウナリトは邪神の研究のためにその1つを手元におかず、離れたところに置いてたんすよ?だったらその研究は何のために使うかって話っす。・・・どうせアウナリトがまだ持ってるんでしょ、その研究を活かすための邪神を。俺の予想だと2つっすかね。」
ほう、とカオスがシュネールの意見を聞き笑う。
「お前の言う満足させる男がこんなところで負けてたらつまらん。故に、勝つのは舜側だ。」
インロンが豪語する。
「あ、Y9ちゃんもそれに賛成かな!カオスたんがわざわざ注目する相手だもん!・・・アウナリト側より、ね?」
妖しくY9が笑う。
「・・・カオスよ、舜の相手ってのはそもそもレイガなのか?それとも・・・。」
「どちらも、だろうな。」
ロジクの問いにカオスは答える。
「なら・・・アウナリトだな。レイガだけなら舜側に勝ち目もあっただろうが。」
ロジクは分かりきったことだと言い捨てた。
「まあどちらになろうが・・・人類のために動くのは変わらないさ。」
そして、火蓋は切られた。
漣「漣ちゃんだよ!」
雪「雪乃です。」
漣「今回はキャラ紹介!」
雪「といっても説明できる部分が少ないメンバーですけど・・・。」
カオス 四凶最後の1人。適当に着ている着物と下駄を履き、葉巻をよく吸っている。何やら「人類のため」に人を集めているようだが・・・?
フーロ カオスに忠実な女性。背は172cmで高め。少しコンプレックスになっている。
シュネール 適当そうに見えて意外と頭の回る男。フーロに好意を持ち付きまとっては鬱陶しがられている。
インロン 強い相手を求める男。四凶の1人、オウコツをあっさり圧倒して見せた。
Y9 元オウコツ部下。と言っても好き勝手できるからいただけで別にオウコツに忠誠を誓ってた訳でもない。
ロジク 人付き合いの悪い男。よく何かの機械をいじっている。
漣「それではまた次回!」
雪「読んでくれると嬉しいな!」