62話
「・・・どうですか?」
「似合ってる・・・。愛花本人が可愛いからなんでも似合うね。・・・うん。」
「・・・えへへ。あ、舜兄はこれとかどうですか?似合いそうですけど・・・。」
「俺?俺は・・・ううん、ちょっと合わせてみる?」
服屋でお互いの服を見繕ってみたり。
「そっちのも美味しそうですねー。」
「1口いる?」
「え?あ、えっとじゃあ・・・!いただきます!・・・美味しいです!それじゃあお返してりゃ!」
「ん・・・美味しいね。」
カップアイスを食べてみたり。
「んー!戦いとかなければオシャレ大会とかしたいですね。お互いの服選んだりしてー。」
「オシャレか・・・。気にしたこと無かったし選ぶのはちょっと自信ないな。」
2人は楽しみつつも店員などにちょこちょこレイガの事を聞いて回っていた。
が、特に情報が無いままただただデートをしている形になっていた。
歩き回っていると辺りが騒がしくなった。
「レジスタンスだ!」
店からの叫び声。
大量の食べ物を盗って逃げる複数人の人影。
「レジスタンス集団と言うよりは・・・泥棒集団?」
舜がその姿を見ながら呟いていると今度は
「団長のデイム様だ!デイム様が駆け付けてくれたぞ!」
「待て!ターガレスだ!レジスタンスの長ターガレスがいる!離れろ!」
と叫び声があちらこちらから聞こえてくる。
レイピアを持つ女性・デイムは冷たくターガレスを睨み。
対面する男・ターガレスはモーニングスターを持って毅然と立つ。
そして2人の攻防が始まった。
レイピアを持ち素早く近付こうとするデイムに、ターガレスはモーニングスターを振るい近づけさせない。
「わわっと、どうしましょう舜兄?・・・あれ?舜兄?」
忽然と消えた舜は―ターガレスの放つモーニングスターを腕で止め、デイムのレイピアを剣で弾き2人の間に割って入った。
「顔広いの、どっち?」
呆然とする2人に舜は言葉を投げかける。
「邪魔をするな!」
デイムは1本離れ、いつでも攻撃出来るよう構えながら舜に放つ。
「ある人物について調べてる。教えてくれた方の援護をする。それでどう?」
「援護など要らない!退け!」
デイムはピタリと構えをしたまま再び舜に言い放つ。
「知りたいってのは誰の事だ?」
ターガレスはそんなデイムを無視して舜に問いかける。
「レイガ。知ってる?」
「「レイガ・・・!?」」
「ん・・・どっちも知ってるなら教えてくれる方の手助けするけど。」
ターガレスは即答した。
「教えるとも!」
「やっ!!」
次の瞬間、掛け声と共にデイムを蹴り飛ばし、早くと言わんばかりにターガレスに合図を出してそそくさと走り出す。
逃走劇は一旦、成功した。
「もう舜兄無茶するんですから。下手したら追われる身ですよ?」
「多分大丈夫。彼女は元々本気でやるつもりは無かったし。」
2人で話してると、いつの間にか後から追っていた愛花に追い越されていたターガレスが息も絶え絶えに遅れてやってくる。
「ふう・・・いや、助かった。」
「・・・いつも追っ手は彼女なの?」
ひとまず、先になんとなく気になったことを舜は確認してみる。
「ん?まあ・・・そうだな。いつも俺たちが行動すると待っていましたと言わんばかりにすぐに駆けつける。まるで場所がバレてるように。」
「バレてるんだよ。で、わざと逃がしてくれてる。・・・レイガの事もお互い知ってるみたいだったけど。」
ああ、とターガレスは頭をかきながら何から説明するかなとこぼす。
「そうだな、まあ昔5人の幼なじみグループがあってな。俺とデイムとレイガがその内の3人だった。」
「お、かなり有力な情報貰えそうな関係じゃん。レイガの過去について知りたい。そうだな・・・たとえば邪神が云々とか。」
邪神?とターガレスは首を傾げる。
「それはよく分からんが・・・。あいつが人が変わったような出来事なら1つ。」
そう言ってターガレスは過去の話を始めた。
10年前。
魔力者が現れ始めた頃。
今でこそ俺たちみたいな1部を除いて治安は良化したこの国だが。
魔力者最優先の政治への反発はもっと大きかった。
俺たち5人のうち4人も魔力者になった。
魔力者になったと言うことは無能力者から敵視されるかもしれないということ。
俺たちは誓い合った。みんなでお互いを守り合おう、と。
だが。
俺たちはまだ幼かった。
守り切るなんて無理だった。
無能力者達の魔力者への反発は、俺たち能力者じゃなく俺たちと関わりのあった無能力者へ向いた。
俺たちの中で1人、無能力者のままだった子が首を斬られ晒された。
レイガの両親も無惨に殺された。
「強さが・・・守り切れるだけの強さが無かったから・・・。」
弟のライガを抱きしめながら呟くその声が今も俺の耳に残っている。
俺たちはバラバラになった。
俺とデイムは対立してるしな。
もう1人の子も、どこかへ消えた。
俺はもうこんな事を起こさせない為に無能力者を守るために力を使おうと思った。
他は・・・俺には分からん。
ただレイガは力を求めていた。大切なものを守れるだけの力を。
恐らく、唯一遺された肉親のライガを守れるだけの力を。
「俺から話せそうなのはこの位だな。・・・足りたか?」
「ああ・・・。ありがとう。・・・お礼に1つ、バラバラなんかじゃないさ。少なくともデイムは、あんたを殺さない為に真っ先にあんたの追っ手になろうとしてる。」
舜はターガレスの目を見てしっかり言う。
「そんな事は・・・。」
「ある、彼女以外の追っ手が来た時は逃げた方がいいよ。」
更に舜は踏み込む。
「気持ちはありがたいが仲間が確実に逃げられるまで俺は退けない。」
「ならもっと強くなれ。今のあんたじゃ、簡単に殺される。」
毅然とターガレスは舜を見つめ。
無言の時間が過ぎていくがお互い目線は逸らさない。
そしてターガレスは辺りを見回し―
「俺を強くしてください!!!」
今までの態度が嘘のように、ターガレスは地面に思いっきり頭を打ち付けながら見事な土下座をしてのけた。




