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愛の歌  作者: Dust
3章
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60話

「もしもし?」

「あ、舜様?着信残してたのに出れなくてごめんね?こっち今ごたついててさ。」

「エリか。こっちはとりあえず片付いたから大丈夫。」

情報屋・エリから通話がかかり、何か聞けることはあるかなと舜はふと考える。

「ふーん・・・で、どうだった?」

「どうだったって言うと?」

「情報さ。美味しい情報が転がってたんじゃないの?どんな実験があった、それでどんな敵がいた、どんな人が関わっていた。」


「・・・交渉といこうか、エリ。こちらが教える代わりにそちらも実験について教えられる事を教えて欲しい。」

「ふーん?・・・分かってるの?そちらから情報のカードを切る以上、不利な交渉だよ?」

「君がプロの情報屋ならちゃんとした対価は払うよ。」

信頼を示しつつ、相手にプライドをかけさせるカードをまず舜は切る。

「あはは、心理戦もお手の物なんだね。いいよ、じゃあ聞こうか。」

エリはあっさりとそれを受け入れ、舜は今までの動向を1部別の解釈が出来るように話した。


「それじゃあ最終的にダゴンがクトゥルフにトドメを刺したんだ。」

元々、クトゥルフそのものを倒したのは舜達である。

しかしクトゥルフの傀儡を解いたのも、目の前でその像を壊し傀儡達にクトゥルフの終わりを目の当たりにさせたのもダゴンであった。

だから舜はトドメを刺したのはダゴンという発言で対クトゥルフ戦の話を終えた。

「ダゴンねぇ・・・確か・・・かつて神だったあ・・・」

「いや、今も立派な女神様だったよ。」

「女神・・・?あれ?ダゴンって女の神だったっけ・・・?」


「・・・ああ、あと実験に関わってた人の名も1人わかった。アウナリト現元帥、レイガだ。」

「・・・へぇ。これは思わぬビックネームだ。そうね・・・。」

エリは少しんー・・・と考える。

「じゃあレイガの生まれ育った場所を教えとこうか。クトゥルフの実験がもっと前から行われてた事を考えると何かあるかも。ビャフーストって知ってる?」

「・・・ビャフーストってあの?」

「そう、あの。・・・何か分かるかもよ?危険だけど。それじゃあね!」

そして電話が切れた。


「ビャフーストって・・・今も続いてるよな多分・・・。」

魔力者の発生から、治安が悪い場所は誰の耳にも届くようになった。

そんな情勢の中、最も治安が悪いとされている国。

内乱に次ぐ内乱。

既に10年の間に7人もトップが殺されては入れ替わっている。

(・・・どうするかな。)

自分一人なら・・・行くと即答したであろう。

みんなを置いて1人だけで行く・・・と言い出すと心配して止めるか付いてくるかどっちかになるだろうか。

自身の失われた記憶を取り戻したいという焦燥。

自身を苦しめた実験についての詳細。

どちらも、知りたいと切に願っている。


(でも・・・)

知って、何が出来るかと言われたら分からない。

仮にレイガが、アウナリトが実験に関わっていたと知って。

怒りを覚えるだろう。

でもその後は?特に何かやれるのか?

知りたいとは思う。でも知ったところで何が出来るかと言われるとそれも今は特に見えていない。

(うん、危険だしそこまでは行かなくても・・・。・・・!?)

心臓がドクンと跳ねた。何がに握りしめられるように。


行かなきゃ。

知らなきゃ。

ダメだよ。

私の事忘れたままで。

どうして?

ほら、行かなきゃ。

「・・・ぐっ・・・がぁっ・・・!?」

「舜兄?舜兄!?どうしたんですか!?誰か!ほら、横になって!」

頼んだよ、927号。私の最愛の人。



「・・・あれ?」

頭を抑えながら舜は目を開ける。

「良かった!起きたよ愛花!」

漣の声。

舜は上体を起こす。

とてとてとてと走る音が聞こえる。

「舜兄・・・!良かった・・・!」

目に涙を浮かべながら、それを流すまいと我慢して。

愛花は思わず舜に抱きついていた。

「胸を急に抑えたと思ったら半日くらい寝てたんだよ、舜くん。・・・女泣かせだね?」

「・・・自分でも何がなんだがなんだけど・・・。心配かけちゃったね。」


奥から雪乃も器を持って出てくる。

「待ってる間に何がしようってお粥を2人で作っていたんですよ。」

「私は・・・その・・・作ったのほぼ雪乃ちゃんだけだけど。」

顔を赤くしながら離れた愛花があははと笑う。

「ん、ありがと。」

食べながら落ち着き。それで思い出す。

「ああ、そうだ。次行かなきゃいけないところが決まったんだった。・・・ビャフーストなんだけどさ、みんなどうする?ここに残って帰ってくるの待ってもらっても構わないよ。」

「ビャフースト?あんな場所に何をしに?」


何を・・・。頭がこんがらがる。

「レイガの故郷で・・・何があるかもしれなくて・・・。」

(・・・あれ?それだけだっけ?)

行かなくちゃいけない、そんな思考だけに支配されている事を舜は自覚していない。

「知りたい・・・のかな。自分の事を、実験の事を。」

そんな曖昧な返事になる。その思いも嘘では無いのだが。

「・・・話は聞いた。・・・あそこの事はある程度知ってる。」

どこからか怜奈が現れる。

「・・・このメンバーなら大丈夫。・・・あそこの内乱は今は無能力者達が主導だから。」

「それでも厄介なことは厄介ですけどね。ひとまず食事と寝場所の確保ですか。」


「・・・なんか付いてくる方向になってるけど大丈夫?残っててもいいんだよ?」

「舜兄1人じゃどんな無理するか分からないですし・・・それに・・・。」

それに、と言った愛花本人がそれに?と自分で自分に疑問を浮かべる。

「・・・いつもありがとう。・・・うん。」

何度も危険地帯へ行くことを決めては、確認を取りついてきてくれる。そのありがたさを噛み締めながら。

そして舜達はリエーを後にすることを決めた。




「・・・ここは?」

「お、おーいみんな!起きたぞ!いやぁ、数ヶ月寝たきりでダゴン様も君だけは治せないって言うからさ。」

目が覚めた男はぼーっと天井を眺めたかと思うと、急に起き上がる。

「ロルバちゃんは!?」

男、アラタは立ち上がると周りを見渡す。

「・・・・・・。」

周りの目が急に憎悪を向けた。

アラタはそれを見るや否や、フラフラの体に鞭を打ちすぐにその場を後にした。

「何があった・・・!?」


探し回り、彼が目にしたのは。

「ロルバちゃん・・・?」

異臭。ボロボロの服。

「ひっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

何をされたのか。思い浮かぶ何もかもをされたのか。

それはアラタが守りたいと願った姿である訳もなく。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

怒りと悲しみに任せて叫ぶ他なかった。


「・・・彼らは、確か舜と言ったか・・・。」

「へぇ、君もあいつに用があるんだ。」

憎悪にかられるアラタに話しかける女。

「私はピュラ。あいつに故郷を滅ぼされた者よ。」

3章、完!

最後のアラタのだけ話が一旦数ヶ月後に飛んでいますが、次回の開始はアラタが目覚める前の話です。

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