59話
「・・・情報を・・・探しに行かなきゃ・・・。」
落ち着きを取り戻したリエーにて。
「はいはい、まずはおやすみしましょうねー。」
舜は高熱にうなされていた。
「・・・ラグナ・・・。」
「はいはい、ダメですよー。体調悪い中魔力消費しなーい。」
頭痛、目眩。まともに思考が回らない。
「しかし困ったね。」
そんな舜と看病してる愛花を見ながらトワは呟く。
「ダゴン様に頼めば魚介類は貰えるけど・・・病人が食べやすい栄養豊富な食事となると魚介類じゃパッと思いつかないな。10年間流通も農業も何もかも止まってたのが響いちゃう。」
「うーん・・・。」
能力者が現れてすぐは機能が麻痺しかけたが、衣食住に関わる仕事を持っていた無能力者達はこれを武器にし生き抜いてきた。
しかし、10年間も麻痺していたリエーにとって今後の大きな課題になるものである。
「無いなら作ってしまいましょう!」
愛花は元気よく準備に取り掛かる。
「・・・トワ・・・助けて・・・。」
「え?助けてって何を?」
呻くように舜は懇願する。
「殺される・・・。」
「何で・・・?」
ズドン!ドガン!とても料理しているとは思えない音が台所の方から鳴る。
「あー・・・ご愁傷さま?」
「出来ました!栄養満点ゼリーです!」
緑や黒で彩られたそれは食べ物とは思えない見た目をしている。
「それ食べられるの・・・?」
「味や見た目はともかく栄養はバッチリです!」
「最低限の味は用意してあげて?」
愛花は屈託のない笑顔で舜の元へ持ってくる。
「はいあーん。」
舜は助けを求めるようトワに視線を向け、トワはその目線から思いっきり目を逸らした。
1口。
(あ、思っていたより・・・。)
美味しければ良かったのだけど。
(やべぇ・・・!)
舜は青ざめた顔で口を抑える。
「待ってて!吐き出せる何か持ってくるから!」
トワがバタバタと準備するが。
最終的に舜は作ってもらったものだからと吐き出すはおろか全て完食するのであった。
「さて、身体もよくなったし外出てくるね。」
症状に一時吐き気が追加されたものの、食後みるみるうちに回復した舜はその日のうちに外に出れるほど元気になっていた。
「あ、私も行きます!」
「おや、じゃあ調査デートと行きますか。」
舜について行こうとしていた愛花が顔を真っ赤にして動きを止める。
「デ・・・!?あ・・・うん・・・ヨロシクオネガイシマス。」
「思ってた反応と違う・・・。えっと、その、い、行こうか!」
2人とも赤いまま出ていくのを眺め、数秒を待ち。
「あまーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!」
それを見せられていたトワは叫んでいた。
「こんな所にいたんだな。」
ロルバが普段住んでいたのは灯台であった。
海が見える窓、大量のカメラ、そして大量の日記。
古そうなものを探し、まずそれから読んでみる。
流して読み、次の日記を手に取り読み、それを繰り返し。
1度、日記を読むのをやめた。
「・・・舜兄?どうしたんです?」
他の場所を探していた愛花が舜に尋ねる。
「・・・いや。・・・・・・大丈夫。」
そして日記全てを持ち帰る準備を始めた。
(ねぇ、復讐鬼。)
『・・・なんだ?』
まとめながら舜は復讐鬼と会話する。
(4歳の頃にこれがみんなを幸せにするんだと教えられて。それを信じて幸せにしてきたつもりだった。)
『日記の内容か。僕も一緒に見ていたが。』
(彼女は・・・彼女は善意からやっていた。それを悪とするのは・・・。)
『正義か悪かなんて個人の見方で変わる曖昧なものだ。お前が、自分の間違っていると思っている行為に踏み出した訳でも無いんだ。』
舜の思考を遮るように復讐鬼は言い放つ。
(それでも彼女は・・・被害者側だとは思うよ。被害者が、被害者を作ってしまったんだ。)
『・・・。』
復讐鬼は考える。舜の思考はここまで相手のことを考えられるのに。
やはり、自分が捻じ曲げてしまっているのだと。
「何か分かったんですか?」
愛花に話しかけられ、舜ははっとする。
「そうだね、とりあえず言えることは邪神の力は石に宿っているのと。」
舜は自分が手に入れた青い石を眺める。
「この邪神騒動に関わってる人間の名前が1人。」
「知ってる名前でしたか?」
「ああ―」
舜は愛花のその目をしっかり見てその人物の名前を言い放った。
「アウナリト元帥レイガ。ロルバに青い石を与えたのも、住民の眷属化を勧めたのもあいつだ。」
漣「漣ちゃんだよ!」
雪「雪乃です。」
漣「衣食住の設定についてちょっと出たね。」
雪「魔力者の中にはこうした仕事に就く無能力者の護衛で食べてる人もいるんだよ。」
漣「とはいえ荒れてるところは荒れてて、舜くんが序盤ローグと戦ってた場所は特に荒れてるような場所だったから世界線の描写がなかなか出来なかったんだけどね。」
雪「それではまた次回。」
漣「読んでくれると喜ぶよ!」




