54話
「舜さん、魔力回復の為に裸で抱き合いますか?」
「しないよ!?」
「私目の前にいるの忘れられてる・・・?」
雪乃とトワと一緒に、隣の部屋でひとまず舜は休憩に入る。
咲希は少し離れたところで黙々と筋トレをしていた。
「あ、あの、じゃあ膝枕しますよ。今スボン破りますね。」
「しなくていいよ!?」
「こいつずっと飛ばしてるなパッと見儚げ淡色巨乳。」
トワも打ち解けてきたのだろうか、遠慮が無くなってきていた。
「みんなでワイワイ出来るのはいい事だね。」
「猥猥の間違いじゃなく?」
そんな時だった。
「な、何!?」
漣の声が聞こえてくる。
それと同時に舜は武器を出し飛び出しており、雪乃はトワの前に立ち守る体勢が整っていた。
舜は音も立てず、漣と愛花とセンのいる部屋へ。
センの周りに黒いモヤが巻き付くようにかかろうとしている。
辺りを見回す。人の気配は無い。だが警戒は解かない。
と、舜がここまで警戒していたのだが。
「とりゃ!」
と、無警戒に愛花がモヤをチョップし・・・消し飛ばした。
「・・・愛花、大丈夫?」
「うひゃあ!びっくりした、いつからそこに居たんです?」
驚く愛花にグイッと近付き、その右手を見る。
「あ、あの・・・?」
「ちょっとごめんね。」
愛花の右手を手に取る。モヤに直接触れたであろう側面を重点的に。
(舜兄の手・・・大きいな。)
舜の心配を他所に、愛花はぼーっと前に魔力回復のためにその手で握ってもらいながら隣で寝た事を思い出す。
「うん、綺麗(だから大丈夫かな。)」
心底安心して思わず無意識のうちに心の声の一部が漏れた。
「・・・え?・・・え!?」
(手フェチなのかな・・・!?綺麗って・・・)
ボンっと愛花の顔が真っ赤に染まる。
「漣、そっちの子は大丈夫?」
「うん、多分。」
ほっとしたのもつかの間だった。
轟音が鳴り響く。
「・・・っ!」
舜は外へ出て、屋根の上に飛び上がり音の方を見る。
「・・・あれが・・・クトゥルフ・・・?」
海に青い石が3つ浮いていた。
10個の黒い光がその石へ飛んでいく。
そしてその巨体を形作っていった。
ヌメヌメとしたその頭部についてる眼そのものが顔を自在に動き、辺りをぎょろぎょろと見回す。
その額には1つの青い石。
丸い胴体には腕がなく、触手が伸縮しながら何本も蠢いている。
その胸に青い石。
3本の足で立ち、尻尾のようなものが真っ直ぐ伸びている。
その尾に青い石。
「・・・っ!街の方も騒がしくなってきたか・・・!」
クトゥルフに呼応するかのように、人々が呻く。
そして舜達のいる隠れ家に向かっていく。
「舜兄!」
騒ぎを駆けつけ、みんなも外へ出ていた。
「舜兄はひとまず怜奈ちゃんを!私と漣ちゃんで街の人達は何とかします!」
舜はクトゥルフと向かってくる人々、そしてトワを見比べる。
「・・・雪乃!トワを頼んだ!」
そして舜は民衆に捕まらないよう、家の屋根を飛びながら邪神へ走っていった。
「・・・これがクトゥルフ?・・・あんなものが・・・?・・・。」
離れた場所で眺めていた怜奈が訝しむ。
まるで、自身の知っている姿と違う。
クトゥルフの顔がガバリと割れ、悲鳴のような叫びが聞こえてくる。
「・・・足りてない?・・・から無理やり身体をある部位で作った?」
3つの足そのものを根元からクルクルと回転させて無理やり海を前へ進んでいく。
目や足が可動する。口は無理やり割って作ってある。
腕がない、足は多く3本。代わりに何故か尻尾がある。
羽もない、触手も生えてる位置が変わっている。
「怜奈!良かった、無事だったか!」
考えをまとめていると、舜が怜奈のいる屋根へ着地した。
「目覚めたからには、何とか勝つしか無いんだよな?」
「・・・うん。・・・それも今のうちにやっておきたい。・・・あれは、不完全。」
「分かった、向こうからしたらこっちの的は小さいだろうし二手に分かれよう。」
怜奈は頷き、クトゥルフへ向かって駆け寄っていく。
とはいえ巨体相手。どう戦うべきか悩んでいたところで。
何者かに舜は吹き飛ばされた。
漣「漣ちゃんだよ!」
雪「雪乃です。」
漣「邪神降臨!不完全だけどその実力は・・・!」
雪「そんな事より私の舜さんを吹き飛ばした不届き者はどなた?ここで殺して本編で出ないようして差し上げます。」
漣「雪乃ステイ!ステイ!私が食い止めてる間に次の話を・・・!早く・・・!」