41話
「・・・あんた、何?」
背後から聞こえる足音に振り返りもせず、オーティエは言う。
「敵。」
ただ一言返す愛花にふっと笑いながらようやく向き合う。
「ま、それはそーなんだろうけどさ。聞きたいのはそうじゃなくって。」
その視線は愛花を真っ直ぐ見据える。
「人を殺す覚悟も出来てなさそうなのにあっさり殺すし、知らない事もまるで知ってるように動けるし、何より。」
右手をスっと前に出す。魔力が放たれるが―愛花はビクともしない。
「ま、聞いてた通り効かないだろうね。で、この四凶であるオーティエ様の能力が通らないあんたは、何?何の化け物?」
「・・・?」
「は!?」
明らかに困惑の色を浮かべる愛花にオーティエが動揺する。
話に踊らされてる場合ではないと愛花は1度目を瞑り、次に開いた時には覚悟を灯した赤い瞳をオーティエに向け―
「纏魔・無限」
愛花に魔力が纏った。
「おやまあ門番がいるとは。」
目を細めた男が上を眺めながら言う。
「・・・来るとしたら、ここだから。」
大きな図書館の上に、この時間にあるはずのない月に照らされた怜奈が立っている。
「僕はシャオパオ、よろしくね。」
シャオパオは右目だけをしっか開き、月を見—そしてまたほそめる。
怜奈は屋根から飛び降り、相対する。
「・・・月華弄月。」
月の光がゆったりと動いていく。
ゆっくり、ゆっくりと一点だけを差し。
何か起きるのかと光の行方を追っていくと刹那、光に沿って上空から目にも止まらぬ速度で短剣と共に先程まで地上にいたはずの怜奈が落ちてくる。
何も無い所から血が出、何かの落ちる音がした。
「せっかく貰ったボディガード2人ともやられちゃったか。」
シャオパオが右目を再び開くと、何も無いように見えた所からもう動くことの無いリオンが現れる。
その右目でシャオパオは上の月を見る。
月は、少し欠けていた。
「クソっ!舜は何処にいるんだ!?」
咲希はただ走り、走り、走っていた。
気絶させられるならともかく―あの人数相手に確実に殺して回るのは無茶だと走った。
仕方のないことなのだと。決して弱くて逃げてる訳でもないのだと。人を殺したことの無い故に殺す事を恐れてる訳でもないのだと。
ただひたすら走った。
「うわ!」
物陰から急に何かが飛んできたのに思わずバランスを崩し転んだ。
その際、何かが剣であるのが見え青ざめながら咲希は相手を見上げる。
オーティエの配下、シーヨウがそこにはいた。
「まずは弱いところから攻めるのが定石。貴女レベルでも警戒には警戒を。潰させていただきます。」
「・・・弱い?・・・貴様は竜族の名にかけて殺す!」
咲希は立ち上がりながら怒りに声を震わせた。
「遅い。」
雪乃目掛けて先頭を切っていた巨体の兵士の右足が凍らされた。
しかし巨体の兵士は迷うこと無くその足を斬り離し、片足で飛びかかってでもその剣を届かせようとする。
「邪魔!」
しかしその剣は届くこと無く、その全身が凍らされ―
「っ!?」
その後ろから小さな兵士が飛び出し、雪乃の斬り掛かる。
雪乃は腕に氷を纏わせ受けるが、ぶらんとぶら下がった左腕からは血が流れていた。
更に横から雪乃の頭目掛けて斬り掛かる兵が飛び出し—
「ーーーーーーっ!」
雪乃の叫びと共に辺り一面が凍りつき、砕け散った。
そこにはさっきまで人が雪乃以外いたとは思えない程で。
雪乃は悲痛の表情をしながら、氷を出した。
そして反射で自分の姿を眺め―
「よかった、汚れてない。」
髪留めを確認し、心底安心したように呟き。
また舜の捜索を再開していた。
漣「漣ちゃんだよー。」
雪「雪乃です。」
漣「久々に後書きに登場だね!」
雪「その間に色々あったね。」
漣「1番は雪乃がやばい人だってのが露骨に現れたことかな?」
雪「え?いやその・・・舜さんの為に動いてるだけだから心外・・・。」
漣「あー・・・・・・・・・・・・次回もお楽しみに!」
雪「今の間、何考えてたの?漣ちゃん?」




