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愛の歌  作者: Dust
2章
41/229

39話

「・・・くん!舜くん!」

誰かに呼ばれる声がする。

「・・・っ。」

頭が痛み、視界がぼやけている。

何かに心臓が圧迫されるような感覚に襲われていた。

「・・・漣?」

舜はようやく視界が定まり、心配そうに見つめる漣に声をかける。

「大丈夫!?血だらけだよ!?」

「・・・血?」

舜はぺたぺたとこびりついた血のついた服を触る。

(―自分のじゃない⋯返り血?だいぶ時間経ってるな⋯。)


「待ってて、今みんなに連絡を⋯っ!?」

急に辺りが暗くなる。

漣は呆然と空を見上げる。

「空が⋯なにかに覆われてる⋯?舜く⋯舜くん!?」

辺りを見回す。が、しかし。

「もしもし!漣ちゃん、舜兄見つかった!?」

「消えちゃった·····。」

「え!?どういうこと!?もしもし?もしもし!?」

「⋯⋯。」

漣は再び空を見上げる。青空が広がっていた。

「⋯愛花、さっきの空、気が付いた?」

「え?私宿で待ってるから何も⋯」

「嫌な予感がするの。舜くんも血だらけで気になったけど⋯多分1人でも大丈夫だろうし⋯。」

ほぼ独り言のように漣はつぶやく。

「え!?血だらけ!?漣ちゃん!?漣ちゃ」

漣は気が付けば走っていた。


「うぐっ!?」

舜は何者かに床に叩き付けられた。

「何があったんです?ルースさん。」

床に叩き付けた本人―ルースは顔を歪ませながら心臓を抑えていた。

だけど心配などしてる暇は無さそうなのはピリついた空気から伝わっていた。

何かある。そしてきっと、時間はない。

早急に彼女の要望を叶えないとおそらく休む事すらしてもらえない。

連れられてる時は何処かも何が何だかも分からなかったが、そこは訓練場の前であった。


ルースは何かを言おうとパクパク口を動かすが空気だけがこひゅーと音を立てた。

「行きたい方向は?」

舜はルースを背負い、横目に聞く。

ルースは震える指で案内していく。

訓練場の中の、とある寂れた1室。

「⋯ここ?」

頷きながら、力弱く背中を押したルースを降ろした。

机がポツンと置いてある部屋。

そこにルースはふらふらと歩きながらその机の引き出しに鍵を合わせようとして―

震えるせいで上手く鍵穴に入らず、机に片手を置き前かがみになる。

「俺が開け―」

かと思えば次の瞬間、必死に力を込めて引き出しを力づくでぶち開けた。


「これ⋯。」

手渡されたのは拳銃であった。

「⋯よくこんなもの残ってましたね。」

魔力者相手にあまり有効では無かったこと、その上で念の為魔力者に危険視され―持っているだけで命が危うくなった事。それらの事から失われていた武器。

それが舜の手元に渡る。

「弾は⋯そこ⋯。結構⋯あるから⋯、」

言われた引き出しを舜は無理やり開けた。

綺麗に並べられた箱がいくつも置いてある。

ルースはふうっと息を整える。

「後は、託しました。私やこれから死んでいってしまうリライエンスの''全て"の人達の無念をその銃に―。」

「何を―。」


発言の意図を聞こうとして舜の動きが止まった。

ルースは少し離れ、自分の首に自分の剣を当てている。

「ごめんなさい、呪いを―かけさせてもらいます。貴方ならきっと乗り越えるから。きっと力に変えるから。」

「待っ―!」

あと一歩、その手が届く直前で鮮やかに血飛沫が飛ぶ。

穏やかな表情をして。止めるのに間に合わず、しかし地に落ちるには間に合ったその腕の中に。

「何が、何が起こってるんだよ·····。」

『私や"これから死んでいってしまうリライエンスの全ての人達''の無念を』

頭の中でその言葉が重く響く。

「守らなきゃ⋯。少しでもこれから死んでいってしまう人達を減らすために・・・。」

ルースの遺体を優しくおろす。

歯を食いしばり、前を向いた。

「四凶だがなんだが知らないけど⋯やってやろうじゃん。」

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