38話
雨が降っている。
頭がガンガンする。
前に見える人影。
ああ―愉快だ。その目を見るのは。
ああ―不快だ。その目で見られるのは。
『なあ、気が付いてたんだろ?お前の求めるものはこれだって。』
誰かの話し声。
ようやく鮮明に光景が見え始める。
黒い羽。血で染まった手。
辺りには倒れた人が散らばっている。
そして目の前にいるのは見知った5人だった。
雪乃の氷が身体を止める。
だが威力はない、ただの足止め。
「ラグナロク。」
あっさりと氷を壊すと黒い魔力の刃を雪乃に投げる。
その隙をついて2つの影がこちらに飛びかかる。
左手を片方の影-怜奈の方へ向ける。
(やめろ!)
魔力の刃が彼女の目の前に現れ、勢いよく飛び込んだ怜奈の身体を斬り裂いていく。
そして右の手をもう1つの影-漣の腹に突き刺した。
腹に穴が空いた漣は血を吐きながら身体をこちらに預け、何かを言っている。
その身体を適当に投げ、ボロボロになりながらもこちらを見て何かを言う怜奈を斬りつける。
まず、ふたり。
咲希が敵意がないと両手を上げながらこちらに何かを言う。
その足下に黒い円が現れ、そこから現れた複数の魔力に倒れ伏した。
消耗した雪乃が立ちはだかる。
その方に歩を進めながら、次の瞬間相対してた雪乃の後ろに。
雪乃は血を吹き出し倒れた。
あとひとり。
愛花は諦めたように目を瞑り、そしてこちらに笑いかけ、その刃を受け容れ―
まだ暗い。
(・・・汗が気持ち悪い。)
布団から出てひとまずシャワーを浴びる事にした。
手に感触がまだ残っている。
嫌な夢だった。
(それにしても目が覚めてしまった。)
時計は3時を指していた。
動きやすい服を着て、外に出た。
冷たい風が吹く。
舜は入念にストレッチをした後にランニングを始めた。
白い息が出るのを、街並みの風景を楽しみながら―。
大きな図書館の前に出た。
誰かがいるのが見えた。
物陰に隠れて様子を伺う。
(クーガさん?)
知ってる顔だった。その横に知らない男がもう1人いる。
『私たちに警戒していてください。』
昨晩のルースの警告が頭をよぎる。
「誰かいるのかい?」
声をかけるか悩んでいると向こうから声をかけられた。
「・・・どーも。はじめましてと、昨日ぶりです。」
「おや、知り合いかい?」
細目の男がクーガにそう聞く。
(殺せ。)
「っつ-」
突然の頭痛が舜を襲う。
細目の男が何かを喋っている。自己紹介だろうか。
(殺せ!)
だが聞こえない。どんどん声が遠くなっていく。
目が回る。世界が回る。
風景が歪んでいく。歪んでいく。
(どけ!!)
闇が、舜を覆った。
「やれやれ、困った事になったね。じゃ!」
細目の男がさっさと走り去り、クーガが剣を構える。
舜を覆った闇にいくつも黒い刃が突き刺さり、破られた。
黒い羽。黒い魔力を辺りに漂わせ。
その目は逃げた先をしっかりと見据え―
「死人が、邪魔するものじゃあないよ。」
無言で立ちはだかったクーガは地に這い、その姿が見えなくなる。
「ふっ!」
羽を羽ばたかせ宙を高速で移動する。
「行かせない!」
クーガは影から現れ斬りつけるが、どこからともなく飛んできた黒い刃がそれを止める。
「!?」
「どうした?止めるんじゃなかった?」
速度は緩まない。
「お前は誰だ!」
クーガはそれの正面に影から飛び出し、斬り掛かる。
刃だけの魔力を片手にそれを止める。
「舜は魔力を外に放てないはず―かい?僕は―そうだな。名前は捨ててしまったから、復讐鬼とでも名乗っておこうか。」
刃が幾度か打ち合う。
「君は自分がしてる事が分かっているのかい?」
「当然!オーティエサマノタメニ・・・。」
復讐鬼がクーガの片腕を斬り落とす。
「君は誰だい?」
「俺は、ワタシはオーティエ様ノドールデ―」
「じゃあ、クーガって、だーれだ。」
クーガの動きが止まる。
復讐鬼の刃が心臓を貫いた。
「―ああ、君は既に死んだことをもっと恨むがいい。それが僕を強くするし―彼が動く理由にもなるから。」
倒れるクーガを優しく抱え、復讐鬼は地に足をつける。
(もう、追いつかないか。だがこれで―)
「動かざるを得なくなった、か。まあいいわ!いつまで見てても仕方ないもの。さあ、世界のために動きましょ!」
オーティエが指を鳴らす。
それが絶望の合図だった。
年内間に合った!
病気でダウンしたりと散々な1年で更新も途切れ途切れでしたがとりあえず来年には終わらせたい。
久々すぎて書き方忘れた!ちょこちょこ修正入れるかも!
割とストーリー撒いていく予定です。本来なら復讐鬼の夢から復讐鬼出てくるまで話開ける予定だったりと日常回が消えていきます。
でもヒロインとのイチャイチャは書きたい。かけるといいな。
ではまた次回、いつになるかは分かりませんが・・・。




