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愛の歌  作者: Dust
2章
36/230

34話

朝。

起きてリビングにいるとリビングのソファーで寝てる咲希がいた。

「咲希?」

「・・・ん・・・・・・舜か。・・・・・・。」

おでこに手を当ててみる。

「うわ結構熱ありそうだな。」

「・・・昔から身体が弱くてな。」

咲希はいつも以上に素直だった。

「くっ、竜族として産まれたからには立派な金のボディに・・・」

(金色・・・あ、竜形態の時の話か。)

「目から光線を出し、身体を分離合体させ、タンカーを振り回すパワーになりたかった・・・!」

「言うほどなりたいか?」

言うほどなりたいか?


(・・・環境もガラリと変わっただろうし、過酷なことがあまりにも多かったもんな。ストレスも凄かっただろうし・・・)

「・・・寒気は?」

「・・・・・・今はない。」

「ん、わかった。」

タオルに保冷剤を包む。

「ちょっとごめんね。」

頭を少し持ち上げてそれを咲希の首の下に当てる。

「・・・ん。・・・・・・ありがとう。」

「こまめに水分補給してね。あ、食べたいものある?お粥作ろうか?」

「・・・寝たい。」

舜はすくっと立ち上がる。

「毛布持ってくるね!」

パタパタと舜は走っていく。

「いや母か。」

「・・・むしろおばあちゃん?」

途中からその様子を見ていた漣と愛花が呟いた。



しばらくして。

漣は外出していた。ここ最近夕方ぐらいまでずっと外にいる気がする。

雪乃がリビングに来て咲希の様子を見ながら本を読み、愛花はやることが無く暇そうにしていた。

そんな時、コンコンとノックの音が聞こえた。

「はーい!」

愛花が出ていく。

来客なんて珍しいなと今ある材料で消化のいい物は何があるか探してた舜が思っているところに愛花が慌てて駆け寄ってくる。

「ごめんなさい舜兄!えっと、ちょっと前にお手紙貰ってたんですけど渡しそびれちゃってて・・・!」

「俺宛てに?」

なんだろうと思いながら玄関に向かう。


「どーもー・・・。」

能力・人見知りを発動させながら舜はおずおずと話しかける。

「お初にお目にかかります。リライエンス軍一番隊隊長ルースと申します。」

20代前半だろうか。堅苦しい言葉とは裏腹にその声は柔らかいものだった。

「あ、どーも。」

「貴方様の名声はかねがねよりお聞きしておりました。」

「へへ、どーも。」

「いや、どーもbodですか・・・。」

隣にいた愛花が突っ込む。


「えっと、それでご要件の程をお伺い出来ればとても幸いに存じます?」

ガチガチになりすぎて自分の言葉に疑問形になりながら舜は訊ねる。

「ゆっくり休んでる最中に申し訳ないのですが。」

ルースが申し訳なさそうな顔をする。

「大隊長、グランが貴方様にぜひお会いしたいと。」

「・・・・・・なるほど。」

舜は少し困ったような顔をする。

「ご予定がありましたら大隊長のわがままですので・・・。」

「いえね、娘が体調を崩して・・・。」

「母だった・・・。」

舜は愛花を見て続ける。


「このようにまだ孫も小さくて・・・。」

「おばあちゃんでもあった・・・。というか孫でも小さくもありませんけど!?」

「仲がよろしいのですね。」

人見知りはどこへやら、ショートコントをしているとルースはふふっと笑う。

「・・・大隊長の、グランさんでしたっけ?いいですよ、お話しましょう。どっかの誰かさんが手紙忘れてたせいでわざわざ出向いてもらった訳だし。」

「むー。・・・まあ、看病の方は任せてください。」

舜はハッとした顔で愛花を見る。

「え!?愛花が看病・・・!?無理はしないでね・・・?」

「私信用ないな?」

「初対面の人の前で何をコントしてるんだお前ら。」

いつの間にか起きてたのか、咲希が呆れたような声を出す。


「大丈夫?」

「おかげさまでな。私の事は気にせず行ってこい。」

咲希の顔色は良くはない。隣の雪乃が心配そうにしてるところからもまだ悪いのは察せられた。

「雪乃、お留守番お願いね。」

「は、はい!」

それでも気を遣わせまいとしてる彼女の意思を尊重する事にした。

「愛花と、怜奈ー!」

「・・・ん。」

どこからかシュタっと怜奈が現れる。

何かあってもこの2人が一緒ならひとまずなんとでもなるだろう。

「じゃ、行きましょうか。」



ルースに連れられ、寂しい通りを歩いていく。

もう日が暮れようとしており、人気のない道をより閑静に感じさせた。

更に進んでいくと子供の声が聞こえてくる。

(どこかに遊び場所でもあるのかな?・・・いや、でも割と大通りから離れてるし不便な場所なような。)

「ここには孤児院があるんですよ。」

舜の疑問に応えるかのようにルースが言う。

「孤児院・・・。」

魔力者によって荒れた世界では多いのだろうか。


(・・・こんな世の中じゃ孤児も増えるよな。俺も親の記憶はないし・・・愛花もいないって言ってた。漣に至っては目の前で殺されて復讐を誓ったわけだし。)

子供たちの楽しそうな声が少しは舜の心を癒す。

(特に漣には・・・何か救われてほしいな。)

孤児院が近付いてくる。

門の近くに1人の少女が立っている。

桃色の髪。思い浮かべてた少女と同じ色の。

「そうそう、あんな髪の女の子・・・ん?」

「それじゃあみんなまた明日!」

振り向くと同時に桃色の髪がふわりと舞い。

その色と同じぐらい少女の顔も染まっていく。


「つ、着いてきてたんですか!?よくないなぁ・・・そういうの・・・。」

「いや、たまたまだよ漣。」

「今・・・私を笑いました!?」

「笑ってない笑ってない。というかそんなに恥ずかしがること?」

どうどうとなだめる。

成り行きで漣もついてくることになった。


リライエンス軍訓練場。

中に入ると槍や盾で鍛錬してる者や射撃訓練場が下の階に見下ろせる。

だけどその全てが道具を用いての鍛錬。

つまり、彼らは無能力者であるという事に他ならない。

「驚きました?我が国では能力者は極端に少ないのですよ。」

「・・・そんなこと教えて良かったんです?」

魔力者への対抗策が少ないということに他ならない。

「ええ、あなたたちなら大丈夫です。」

ルースは振り返ることなく言う。

「自分で言うのもなんだけど・・・そんなに信頼ある?俺たち。」

「ええ、この国に入った時点でその気になればいくらでも私利私欲に動けたのに。行動は謙虚そのものでした。」

ルースはこほんと咳払いをした後振り向き、おちゃめに笑って


「というのは建前で実は能力で問題ないと判断させていただきました。何よりお仲間の誰にも手を出してないでしょ?」

漣はきょとんとする。

「え?愛花って舜くんともうできてるもんだとばかり。この前舜くんの部屋から出てきたし。」

「何もしてませんから!何も!」

愛花が顔を真っ赤にしながら否定する。

それを見て意地悪そうにルースは笑う。

(なるほど、なかなか食えない人っぽいな・・・。)

舜も顔の暑さを気にしながら思った。


案内された部屋では既に宴会が開かれていた。

「大隊長殿、お客様をお連れしました。」

「む、おおこれは!来ていただけたか!」

ボサボサとした赤髪。焼けた身体にはいくつかの傷跡と隆々とした筋肉。

「えっと、お初にお目にかかります。大隊長殿。舜と申します。」

「堅苦しいのは無しでいい。貴殿は大事なお客様なのだからな。それに敬語は好かん。グランでいい。」

急遽作られた席に案内される。

「ごめんなさいね、明日ちょうど1ヶ月遠征に出る子がいて先に始めちゃってたみたいで。」

ルースはそう謝りながら酒を注いで回る。

「その子は―」


「はい!私4番隊隊長ピュラです!」

活発そうな少女がすっ飛んで来る。

「えへへー嬉しいなぁ。遠征前にお話出来るなんて!」

「あー!抜け駆けずるーい!僕リオン!3番隊隊長!」

更に2人の男がすっ飛んで来て、小さい方がそう言う。

「俺はクーガ!2番隊隊長だ!」

「こーら、あんまりお客様を困らせないの。」

お酒を注ぎ終わったルースが2人の襟を掴む。

「ずるいよー!ルースだけちゃっかりお酒注いで!」

「ふふ、舜様はお酒イける口みたいよ?」

「お!なら俺の酒も飲んでくれ!」

やんややんやと騒ぐ。

ふと視線を感じ見ると愛花がこちらを見ていた。

口をパクパクと動かす。

さ け い い ?


「・・・そういえば酒弱かったね愛花。」

愛花は覚えてなさそうだったが―将棋を打った後、お酒を一緒に飲み始めてからすぐ酔っ払い大変だった。

「まあ・・・いいんじゃない?断るのもあれだし。ほどほどにね。」

GOサインを出された愛花はよっしゃと飲み始める。

その奥では漣が食事に苦戦していた。

「ぐぬ・・・!この・・・!」

豆腐を箸で掴もうとして崩している。

ルースに頼んでスプーンを持ってきて貰った舜は漣に渡した。

「ふふん!豆腐なんて!こんなものはスプーンで掬えばいい話!」

スプーンを受け取った漣はそう言いながら掬った豆腐がボトボトと落ちた。


「むむむ。」

「・・・不器用なんだな。」

「だ、だって!マスターする前に親が・・・!」

思ったより重たい理由。思わず舜は漣の頭を撫でていた。

「俺でよければ色々教えるから。それに―」

「にゃはは!もう一杯!」

静かに飲む怜奈にくっつきながら出来上がってる愛花を呆れながら見る。

「あれよりは教えるの楽そうだし。 愛花!程々にしろって言っただろ!?」


「ふふ、英雄たちは仲が良さそうだな。」

「おかげでもっと話したかったのに世話でそれどころじゃなさそうなんですよー。」

ぶーぶーピュラはグランに言う。

「・・・それで大隊長殿、いつ切り出すのですか?」

「今日は、いいだろ。彼らの平穏を崩したくない。」

「ですが・・・。」

「わかってる。彼らの力が必要になるのはな。」

グランの顔は冴えなかった。

漣「はいはい漣ちゃんですよ。」

雪「雪乃です。」

漣「めっちゃ久々の更新でした。全員のルート書くとか思いながら1人のルートの次の話が半年以上とか何年かけるつもりかな?」

雪「もう内容覚えてる人もいないんじゃないかな。」

漣「次の更新は早くしろよ作者ー!」

雪「それではまた次回!」

漣「いつになるか予想しててね!」

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