30話
偏った世界が狂気を産む。
枯れ木がポツポツと並ぶ一本道。
舜は後ろを振り返る。
「まだ気にかけてるのか。」
咲希が小声で舜に話しかけた。
「・・・納得はしてるよ。」
ローグがある程度離れるまで残りたい。そう舜は思っていたもののローグだけじゃなく周りの住民にも狙われると反対され、ひとまず近くの国―リライエンスを目指していた。
「そんな事より舜、愛花は魔力切れしてただろ?」
「漣が愛花に渡してたのは見た。」
「・・・それは本当なんだな?」
「・・・?ああ。」
咲希は答えを聞くと首を傾げ、漣を見る。
漣は雪乃や愛花と話しながら明るく振る舞っていた。
いや、振る舞おうとしていた。
全体的に暗い雰囲気を消し飛ばそうとしてるのが見て感じとれる。
舜も咲希と共に漣を見ていると、漣が視線に気が付きスススとやってくる。
「どうしたの?私の話?」
「・・・単刀直入に聞く。」
咲希が切り出す。
「お前の魔力の限界はどこだ?」
「へ?」
漣がキョトンとする。
「さあ・・・?限界来た事ないし・・・魔力者になってばかりだから分からないし・・・。」
「なってばかりの人が一日中出しっぱなしにした上で分け与えられるものか。」
まあまあと舜は咲希をなだめる。
「もしかしてそういう能力なのかもよ?」
「そういえば、どうやって自分の能力がどんなのかって気が付いたの?」
漣はふと思った事を言っただけだった。
だがその一言で舜はふと歩みを止める。
「どうやって・・・?・・・そういえばどうやってだった・・・?」
舜は頭を巡らせる。
まるで最初から持ってたかのように、知ってたかのように舜はラグナロクを使っていた。
「・・・記憶無くしてた時期にはもう持ってた?」
漣はそんな舜をみてフォローを入れる。
「そう・・・かな・・・?」
「他の人にも聞いてみるね。」
漣はとてとてと愛花の元へ向かう。
その様子を見ながら、舜は記憶をまた巡らすのであった。
知識の国―リライエンスはそう呼ばれている。
世界の全てがあると比喩されるほどの大きな図書館、それがこの小国にある。
国は四方を壁に囲まれ、それぞれに門がある。
図書館を狙っての侵攻に備えてのものであり、それ故に入国も厳しいと聞いていた。
「入国、認められるといいんだけど。」
舜は門を目の前にしてぽつりと呟く。
門の前の鈴を鳴らす。
小さな音だがそれで門が開く。
(・・・これ魔道具か。・・・どういう仕組みなんだろう?)
舜はマジマジと鈴を眺め―分からずに元の所へ置く。
中は小さな部屋となっていた。
鉄の扉が2つあり、周りが黒曜石で作られた部屋。
小さな鉄格子の向こうにいる人から紙を渡される。
名前と入国理由を書く。
そして鉄格子と反対にある方の鉄の扉が開き、そこにあるソファーに座って待たされる。
「どうだと思う?」
「・・・この間に色々な情報屋に連絡して素性調べてる。・・・でも多分大丈夫。」
怜奈ははっきりと言う。
その言葉通り程なくして国内へ招待された。
そのまま真っ直ぐ大きな建物に案内され・・・。
「・・・疲れた。」
舜は宿のベッドにばたりと倒れた。
「まさかここまでなんてね・・・。」
国王の元へ案内され、盛大な歓迎をされた。
クロムを倒した―その事が歓迎の理由であった。
宿屋はこの国2番目にいい所で―本当は1番いいところに案内されそうだったが落ち着かないからせめて2番目がいいと言って案内された故に2番目なのだが―全てが貸切状態になっていた。
(明日、図書館に行ってみようかな・・・。)
気になる事は幾つかある。
何故魔力者は産まれたのか―。
何故魔力者になるのか―。
ただ漠然と魔力者による被害をなくしたいと思ってもどうしようもない。
だから、とりあえず知識を付けたい。知識をつけた後のビジョンはまだ見つけてはいないものの―とにかく行動を起こしたかった。
「・・・ここは?」
森の中。
舜はいつの間にか立っていた。
1人、女性がいる。
顔は・・・暗くてよく見えない。
「・・・久しぶり、だよな。」
前に夢であったあの女性だと舜は不思議な確信を持っていた。
「うん、そうだね、▪️⚫️◢◣■。」
「・・・え?今なんて?」
ノイズが入り一部が聞き取れない。
「・・・なんでも。」
残念そうにそう少女は呟く。
「君は・・・君は―大切な人だったのは覚えてるんだ。だけど・・・。」
「覚えてない、そうでしょ?」
「・・・ああ。君は、誰なんだ?」
彼女は首をブンブンと振る。
「教えられない。残念だけど。」
「待ってくれ!」
彼女が、いや世界が渦巻いて消えていく。
「待って!」
手を伸ばしガバッと起き上がる。
「舜兄?」
愛花が部屋にいた。
「・・・どうしたの?」
舜は鍵は常に開けていた。
「普段あんな早起きで特訓してるのにお昼過ぎても起きてこなかったら心配で・・・体調崩したのかなって。」
舜は時計を見る。時刻は3時を少し過ぎたところだった。
愛花の手にはタオルとバケツがあった。心配をして来たのは事実なのだろう。
「・・・疲れてたのかな。」
「まあ本来なら数日ぶっ倒れててもおかしくありませんでしたし―むしろよくここまで回復しましたね。」
「愛花の回復魔法のおかげだろ?」
愛花は少し目を瞑り考える。
「私の回復魔法・・・そんなチート能力じゃありませんよ。舜兄が異常なんです。」
「・・・そういえば、愛花。愛花の怪我は?自分には使えないんだろ?確か。」
「私はまあ軽傷でしたし―元気ですよ。」
そっか、と舜は安心し―
(・・・あれ?愛花の戦ってた相手って横通り過ぎたあいつだよな?・・・通り過ぎただけでも魔力の凄さ分かった相手だったのに軽傷・・・?)
愛花を見る。
「・・・な、なんですか?あんまり見つめられるとその・・・。」
「いや、無理してないかなって。うん、大丈夫ならいいんだけどさ。」
舜は起き上がる。
「なあ、愛花。ちょっと後で外に出ないか?」
「ほう・・・この愛花ちゃんをデートに誘いますか。」
「そだね、図書館デートでもどう?」
「最近舜兄返しが強くなっててからかうとからかい返されるのです・・・。」
愛花は少ししょぼくれる。
「それじゃあ準備してきますね。ロビーで待ち合わせでいいですか?」
「うん、ロビーでまた。」
舜は愛花が部屋を出るのを見送ったあといそいそとデートのために着替え始めるのであった。
漣「漣ちゃんだよ。」
雪「雪乃だよー。」
漣「久々の更新でした。また間隔が空いてしまい・・・ってのをキャラに言わせようとする作者がいるらしい。」
雪「何度か書く暇があったんだけれどストーリーが上手くまとまらずで1ヶ月あいちゃいましたてへっらしいです。」
漣「変にフラグとかいれようとするからー。」
雪「次の更新は間隔空かないよう注意深く見守っててください。」
漣「それではまた次回。」
雪「呼んでくれたら嬉しいです。」




