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愛の歌  作者: Dust
1章
3/197

2話 隊長たち

舜は掲示板からかなり離れたところからコソコソと隠れていた。

同じ場所で研鑽しあってきた人達しかいない中で、1人誰も知らない人がいる。

つまり自分が舜であるのは周りからしたらすぐ分かってしまうからだ。

目を細め名前を探す。

隊長の所に乗ってる名前は5人。つまり、自身が特別扱いで今回だけ6ってこともない。

となると隊長の所に名前があるかどうか。

じっと眺める。


一つだけ、名前が短いものがある。

ヤパニオという国で使われている文字だ。

舜も自分の名前にヤパニオでの文字を使っている。

アウナリトでは色んな国の人が入り交じり、他の国の文字があるのは珍しい話ではないのだ。

(・・・あれが俺か?違って神様・・・)

そんな願いも虚しく、間違いなく自分の名前であると遠くからでも分かり項垂れた。


「あのー。」

「ひゃい!?」

舜はいきなり声をかけられ変な声を出した。

「はじめまして!舜さん、ですよね?隊長ご就任おめでとうございます!良かったらスカウトの為に周りの人とか紹介しますけど、どうです?」

その少女はぱっちりとした目をしていた。

黒いロングヘア。赤く爛々としている目。

小さい子だ。体も細い。

とても可愛らしく、少し幼さも残している。


色々考えた末、舜は

「ありがとう、助かるよ。えっと、名前は?」

とその申し出を受けることにした。

「愛花です!」

「うん、じゃああい・・・」

「愛花ちゃんでも愛花様でも愛花♡でもなんとでも呼んでください!」

「・・・じゃあ愛花。」

「お、♡パターンですか。」

「♡つけてないだろ・・・。」

ふうとため息をついて、ふと今の冗談のやり取りで少し心持ちが軽くなったような気がした。


愛花の紹介でどんな人かを聞きながら名簿を見る。

「あ、副隊長なら怜奈ちゃんが1番凄いですよ!」

「凄いってどう?」

「怜奈ちゃんは自分から副隊長志望したので副隊長の欄にいますけど、歴代トップの成績叩き出してる同期トップの子です!」

ふーんと頷いて

「じゃあうちには縁がないな。」

「あら、お気に召しませんでした?」

「他の隊で引っ張りだこでしょ、まず実力すら分からない人の隊には来ないだろうしそれに・・・。」

「それに?」

舜は少し間を置いて言った。

「正直あんまり目立ちたくない・・・。ただでさえヘイト溜めそうな立場なのに・・・。」

「あー・・・なるほど・・・。」

愛花はふむんと少し考える。

その後、競争率の高そうな子をひとまず教えたのであった。


「おっけー、助かった。そういえばなんで声かけてくれたん?」

「それはですねー、えっへん!私あなたのファンなのですよ。」

舜は首を傾げた。それを見て愛花が続ける。

「私、元々外出身なんです。そしたらその外でローグ倒しまくってる人がいるじゃないですか!あんなひもじく怖い生活しててヒーローの存在知ったら誰でもファンになりますよ。」

「・・・あんまり他人に外で活動してたって言わないでね。」

愛花はちょっと気まずそうな顔をする。

「・・・言っちゃ駄目な事でした?」

「もう言ったとか?」

「・・・ええ、すみません。」

んー・・・と少し頭を搔いて

「ん、だいじょぶだいじょぶ。問題になってないならよし!」

舜は安心させるために笑顔でそう言った。

「えっと、それでですねー。是非是非この愛花ちゃんを入隊させて欲しいんですけど。」

「そう、じゃあちょっとテストするね。」

舜は眼鏡を外す。

そして愛花をじっと眺めた。


(・・・珍しい、全く捻れない。)

舜は人を裸眼で見る時に起こるその捻れを何となくでだが人の悪さと考えていた。

「あのぉ・・・そんな見つめられると照れるというか・・・えへへ。」

舜は眼鏡をかけ直した。

「おっけー、ごーかく。」

「いぇい!」

愛花は小さくガッツポーズをした後、じっと舜を眺める。

「その眼鏡、お気に入りですか?」

「これ?これじゃないと生活に支障が出るのよね。似合ってないって?」

愛花はふるふる首を振った。

「人間、お気に入りのものをしてる時が1番輝くものですから!」

ニッコリそう言う愛花に、内心舜はビジュアルは気に入ってる訳じゃなかったけどと少しフォローされた事を申し訳なく思った。


「貴殿が舜殿だな?」

後ろから声をかけられ、振り返る。

「ようやく見つかった!よかったよかった。」

舜は自身の希望で愛花の説明を見つかりにくそうな場所でとホールの階段の裏の影になってる部分で聞いていた。

「あ、この人隊長の人ですよ舜兄。」

「・・・にい?そのにいってどこから来た?」

「親愛を込めたら来ました。兄が向こうからどんぶらことやって来ました。」

咳払い。

「あ、えっと俺に用があったんだよね?ごめんごめん。」

「隊長たちで少し話し合いをしようと思ったのだが、貴殿もどうだ?顔合わせもしておきたい。」

舜はここで参加しない方が目立つし悪印象だなと思い、

「分かった、どこでやるの?」

と聞いた。


その次の瞬間だった。

辺りが真っ黒になる。

「な!?」

「待って待って!私もサポートでついていく!」

遠くからそんな声と共に愛花の姿も現れる。

「あ、安心してください。これリーグ君の能力ですので。」

戸惑う舜に愛花が笑いかける。

「・・・さすが隊長、覚醒してる訳ね。」

覚醒とは魔力者が自分にしか使えない特殊能力を使えるようになる事を指す。

「舜兄、特殊部隊の最低条件は覚醒、あるいは契約してる事ですよ?」

「・・・毎年25人以上も?」

恐る恐る聞く舜に愛花は頷き・・・ドヤ顔した。

「つまり私も使えるのです!気になりますか?気になりますかー?」


と次の瞬間に辺りに光が差す。

ここは・・・廊下?目の前にドアが1つあるが。

愛花が元気にノックする。

「開いているぞ!」

聞き覚えのある声。

「おっじゃまっしまーす!」

元気に開けるとそこには4人、円形の机を囲んで座ってる。

さっきのリーグも含めて。


「先に入ってたんだ。」

驚きながらぽつりと呟く舜にリーグは大きく笑う。

「かなり前にな!」

何がなんだか分からないと言う顔をしてる舜に愛花も笑う。

「舜兄、分身を作り出して自分の元に転送する。それがリーグ君の能力です。つまり本人は最初からここにいたんですよ。」

「・・・じゃあまたはじめましてでいいのかな?」

「ふむ、そこに気が付く人は初めてだ!確かにはじめましてでいいのか悩むな!まあどちらでもいいか!」

このリーグという人は呆気からんとしてる人らしい。


「舜様、そちらの席にお座りください。」

リーグの横に座ってる男が言う。

「あ、敬語とかそういうの気にしなくていいから。他のみんなもね。」

第一印象が悪くならないよう笑いながら座る。

「まーマキナは誰に対してもこうだからむしろ君が気にしなくていーと思うよ。あ、あーしリビ。よろしくね☆」

舜から見て右隣にいる女がいぇーいと言わんばかりのノリで言う。

「これで全員集合だね。それじゃあ早速議論をしようじゃあないか。」

左隣の男がそう言う。

「それではまず自己紹介だな!俺はリーグだ!」

「マキナです、以後お見知り置きを。」

「キッソスだ。君の噂は聞いているよ。」

「あーしはさっきしたとーりー☆」

「えっと、舜です。」

ふむ!とリーグが頷く。


「それでは1つ目の議論だ!副隊長をどうするか話し合いたい!」

「どーするもこーするもみんな第1希望は同じじゃね?譲って欲しいとでも?」

リビの目付きが細くなる。

「舜兄、さっき話した怜奈ちゃんの事です。」

愛花が舜に耳打ちする。

なるほどと改めて舜はそれぞれの隊長を見る。

そしてよし!自分は関係ない話だな!と1人静かに頷き傍観の構えをとった。

「いや、むしろ逆だ!我々はしっかりとしたテストの上でここにいる!しかし舜殿はどうだ?1人不安だろう。だから怜奈殿は舜殿のサポートをと思っている!」


「・・・え?」

傍観を決めていた舜は耳を疑った。

マキナは頷きながらも

「しかし私たちそれぞれ彼女がいたら助けられるのも事実です。何より本人の意思を尊重すべきかと。」

「ちょっと待ちたまえ。」

そんな中、キッソスは話し合いを中断する。

「確かに怜奈君はいたら美しい部隊が出来上がるだろう。しかし僕は他に欲しい副隊長がいる。」

「へー、怜奈狙わないとかおもしろじゃん☆もしかして誰にも取られないうちにライガ辺りでも欲しいって?」

「いや、この場で発言したのは理由がある。実は副隊長の選出から外れてる人が欲しい。」

リーグはなるほど!と相槌をうつ。

「リーンだな!確かに今回の特別処置がなければ副隊長の枠にいた人だ!それなら例外も許されるだろう!」

しかしキッソスは首を振る。

「確かに彼女も美しい。しかし僕が欲しいのは・・・。」

そしてキッソスは舜の方を向いた。


(・・・え?俺?)

キョトンとする舜を無視して話は進む。

「愛花君、君もここにいる隊長に劣らない、いやむしろ怜奈君にすら並ぶ逸材た!僕の隊なら副隊長として迎え入れる!共に美しい隊を!」

「私指揮能力テストボロボロだったから一般の枠にいるんですけど?」

キッソスは立ち上がる。

なんかキラキラしている。

「指揮なら僕がするさ!君は共に美しく舞い踊る準備をしてるだけでいいのさ!さあ、どうだい?」

「盛り上がってるとこ悪いんだけどさー。」

リビがなだめるような手振りをしながら止める。

「あんまれーがいは好ましくないって顔でリーグが見てるよ。」

リーグは静かに表情を変えずキッソスを見ていた。

「私も反対です。それで副隊長に選ばれなくなった方が出てきてしまうとその方が報われませんので。」

「なんだい、リーン君なら認めて愛花君は認められないと?やれやれ、ルールに雁字搦めになってるのかなってないのか分からないね。」

キッソスもそう反論したがリーグはずっと黙っている。


「分かった分かった、僕の負けだ。愛花君を副隊長にってのは諦めるよ。だけど愛花君、是非君には一般としてでも来て欲しいんだ。」

「ごめんなさい、もう他の人のものなので。」

「人聞き悪い言い方やめてくれる!?」

傍観してた舜がついつい突っ込んでしまった。

「それで怜奈殿についてだが。」

リーグが話を戻す。

「んー・・・まああたしたちたいとーでいーんじゃない?舜ちゃんもそんな顔してるよ?」

「うん!別に特別扱いとかは要らないからさ。」

リーグは分かった!と頷く。

「では怜奈様は怜奈様の意思を尊重しつつ勧誘するという事で。」

マキナも頷く。

それなら自分のところに来て悪目立ちする事は無さそうだと、ほっと舜は息をついた。


「それではもう1つの議論は私から。舜様は外に出られた事が何度もあるとお聞きしましたが。」

「・・・あるよ。世話係と一緒にね。」

世話係と一緒にというのは正確には事実ではないが・・・嘘でもない。外にこっそり1人で出ていっても必ず迎えに来るのだ。

とりあえず問題として捉えられないよう舜はそう答えた。

「では外の知識とこの国の内部の知識、どちらも頼りにしてもよろしいでしょうか?」

「いや、それは駄目。内部はほとんど関わっていないし外も行き当たりばったりでやってたから詳しいわけじゃないよ。」

マキナはしばらく静止する。

思えば表情も今まで1度も動いていない。


「では聞きたかった噂についてはご存知ないでしょうが・・・。お尋ねします、前王ラース様の死因はなんでしょうか?」

「え?いや病死だと思うけど。」

「しかしその直前に異常な程頻繁に色々な貴族と会っていたという話が出ております。」

舜はキョトンとしていた。

「貴族って・・・今も残っている?」


舜がそう聞いたのには理由がある。

魔力者が生まれてから元々あった貴族は家系に、または雇った魔力者がいないと襲われ、荒らされ、消えていったからだ。

雇った魔力者に裏切られ家のものを奪われ殺された貴族も少なくない。

ラースが死んだのは5年前。その頃はまだ魔力者のいない家系の貴族も残ってはいた。


「聞いた中には滅んだ貴族も滅んでない貴族もどちらもあったと認識しています。」

マキナの答えに少し首を捻る。

「死期を悟って後を託してた・・・とか?少なくとも俺は何も聞かされてないけれど。」

その答えにマキナはまた静止する。

「今度、その会ったとされる貴族を纏めてみます。それを見て何か気が付くことがあればお伝えください。」

「・・・うん、わかった。」

舜はこの時とりあえずで頷いたが、本格的に考えてる訳じゃなく頭の片隅にこの話を覚えとく程度だった。


その後、雑談を踏まえ色々な話題をしつつ。

舜がとりあえず隊長達とはある程度打ち解けた、少なくとも特別扱いに反発はしてない事にホッとした頃に会議が終わった。

後はその後の雑談で隊長漏れしたと聞いたライガと、副隊長漏れをしたと話に出たリーンについて申し訳なさと心配をしつつ自室に帰ろうと歩き出した時。

「・・・あれ?そもそもここどこだ?」

舜はパタッと足を止めた。

移動方法が移動方法だっただけに帰り道を知らない。


「城まで案内しましょうか?」

愛花の申し出に舜は

「お願いします!愛花様!」

勢いよく頭を下げていた。

気になったところを愛花に質問しながら案内される。

「怜奈ちゃん見たら1発で覚えると思いますよ。私と同じぐらい美人ですから!」

ふふーんと鼻を鳴らす愛花。

「・・・愛花は美人ってよりは可愛いって感じだけど怜奈はどっち?」

「怜奈ちゃんはめちゃくちゃ綺麗ですよ。それより今の私への評価をもっかい!」

「アイカチャンハカワイイデスヨー。」

「えへへー。」

舜は自分がヒーローだからとついてきたこの少女はめちゃくちゃチョロいなと認識した。


「それじゃあ色々ありがとう!」

城についた舜は愛花にそう言って部屋に帰ろうとした。

「・・・・・・・・・・・・。」

部屋に続く廊下を歩く。

「・・・・・・・・・・・・。」

止まる。

「・・・・・・・・・・・・。」

振り返る。

「・・・・・・・・・・・・。」

愛花と目が合う。

「・・・・・・なに?」

「とつげき!隊長の部屋!のお時間です。」

「お時間です。じゃなくて。」

愛花は少し目を逸らす。


「その・・・ご飯恵んで欲しいなーって。」

「・・・・・・え?今まで何食べてたの?」

「・・・霞。」

「ソレタベルイワナーイ!」

「あと釣れた時は魚を少々。後は・・・怜奈ちゃんの所で素材の味しかしない料理とか。」

はぁと頭をかく。

「分かったよ。爺やに頼めばなんとでもしてくれるだろうし。住んでるところは?」

「怜奈ちゃんが不在ならダンボールハウスです!」

「ソレイエジャナーイ!・・・えっと、泊まっていく?」

愛花の表情が固まる。


「・・・へ?ええ!?」

「部屋いくつか貰ってるから。鍵付きだよ。」

「わー、王族って感じだー。」

「一応、ね。」

舜はまた歩き出す。

それを見て愛花は少しドキドキした胸を抑えたあと、ついていく。

「ほら、ここ。入ってすぐがリビングみたいな感じのところでそこからいくつか部屋あるからさ。」

そうして舜はドアを開け・・・。

「・・・おかえり。」

知らない女が部屋にいた。

いや、知ってはいる。黒髪の絶世の美少女。

朝にあった子だ。自分に覚えてるか聞いてきた、過去の自分を知ってるかもしれない少女。


「ほほーう、愛花ちゃん以外にも女を連れ込んでるとはこれはこれは。」

愛花はニヤニヤしながら茶化す。

「・・・愛花も一緒だったんだ。」

「うん!怜奈ちゃんは何をしに?」

「・・・入隊。」

「ほー!へー!そーかそーか!これは心強い味方が増えましたね旦那!」

愛花がつんつんと腰を腕でつついたが舜は呆然として動かない。

「・・・今、怜奈って言った?」

「ええ、彼女が怜奈ちゃんですよ。」

「そもそもなんでここに!?どうやって知った!?なんで入隊!?何もかもなんで!?」

舜は頭を抱え、辺りにはその叫びが響き渡るのであった。

愛「こんにちは!愛花です!」

怜「・・・怜奈。」

愛「というわけで今回からここでわちゃわちゃするよのコーナー!」

怜「・・・長くなったのは私登場まで進めたかったせいなんだ。」

愛「書きなれてないせいか長いと場面転換できてる?とか不安になったみたいだよ!生暖かい目で見守ろうね!」

怜「・・・今回は各隊長のちょっとしか紹介。」



リーグ 成績2番手、1番は怜奈のためリーダーの中では1番 呆気からんとした性格

マキナ 成績3番手 誰にでも敬語を使う、感情が表に出ない男

キッソス 成績4番手 美しさを1番重視する男

リビ 少々適当な雰囲気を持つが意外と面倒見がよい。ついでに胸がデカい。


怜「・・・ついでに、か。」

愛「・・・なに?何見てるの?私だっていいスタイルかもじゃん!」

怜「・・・なんでも。」

愛「着痩せしてるだけかもじゃん!」

怜「・・・それではまた次回」

愛「待って!ここで終わらせないで!待っ」

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