28話
「だからさァ!届かないんだって!刹那の運命!」
愛花の魔弾が宙で止まる。
(・・・これもダメ!?)
愛花も魔弾と同じように動けなくなる。
「君の魔力をそのまま使って、君を止めたまま攻撃できる。」
「うぐっ・・・。」
そしてギースからの跳ね返された自身の魔弾でダメージを負う。
この繰り返しだった。
(少しずつ魔弾の威力やタイミングとかずらしてるけれど・・・関係ありませんって感じで返される・・・。)
愛花はまた魔弾を周りに浮かばせる。
「無駄だって・・・。その不意打ちも。」
「!?」
愛花が地を張らせていた魔力で足元からギースを攻撃したが・・・また動けない。
「それじゃそろそろ遊びもおしまいっと。・・・僕の魔力も使わせてもらうよ。」
ギースの魔弾は真っ直ぐ愛花には向かわなかった。
愛花の周りにある魔弾を愛花の方向に押し込むように飛んでいく。
(やばっ・・・!)
複数の愛花の魔弾を押し込みながらお互いの魔力同士が反発し、爆発を引き起こす。
身動き出来ない愛花はその複数の爆発にただなすがままに吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。
「うーん・・・確かに強いけれどさぁ。まあ僕を殺してくれるのは殿だけか。いつ殺し合いしてくれるかなー殿。」
ギースは退屈そうにそう呟いた。
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「・・・っ!」
怜奈は何度かフェイントを入れながら攻め手を探すがロージアにはまるで隙という隙が出来ない。
仕掛けられず、ただ後退をしてはまた攻め手を探す。
そんな戦いが続いていた。
「貴様如きの動き等全てお見通しだ。」
ロージアの態度は余裕というより確信に近い。
(・・・強引にでも。)
怜奈は全速力で動く。
敢えて正面から。
相手の動きに対応してこちらも動けるように。
速さなら勝っているのだ、冷静に動ければ。
「阿呆が。全て我が掌の中に在り。」
しかしそんな怜奈の動きを分かっていたかのように、あっさりと怜奈の蹴りをしようとした脚を掴み、3度地面に叩きつけて投げ捨てた。
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ダリルの左腕が無数の黒い塊となって解き放たれる。
その黒いのは牙を剥き、目の前にあるものを食い散らかさんと歯を噛み合せて、時に塊同士で食い合いながらも飛んでいく。
咲希は腕を振って撃ち落としていくが何匹かに腕を噛まれる。
「こンの!」
近くにある家に思いっきり叩きつける。
だがその目の前に飛んでくるのは数え切れないほどの異形。
「もらったァ!」
漣が周りの塊を気にせずダリルに向かって槍を突き出す。
「・・・全身凶器。仕掛ける前に声を出すなと、誰か教えてはくれなかったのかね。」
ダリルの右腕から黒い刃のようなものが出てきてあっさりと受け止める。
そして漣にも無数の黒が囲み・・・。
氷に防がれた。
「やはり現時点で警戒すべきはお主か、氷使いよ。」
雪乃は座り込んだまま手を前に出して氷を作っていた。
顔は青白くいつ倒れてもおかしくない。
(早くこいつを倒さないとまずい・・・!)
咲希はその様子に焦りを覚えるのであった。
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(・・・ここは。)
吹き飛ばされた舜はハッキリしない頭を必死に回しながら状況を把握する。
身体のあちこちが痛む。
自身の体の周りには木片が散らばっている。
どうやら吹き飛んだ先の家に壁を突き破ってきたようだ。
(向こうは様子を見ているのか・・・?)
クロムは何故か追い打ちに来ない。
舜は糸を作り出す。
(もし、今やられたら。・・・いや、手負いだからと放置されて他の人の所へ向かう可能性もある・・・そしたら・・・。)
舜の頭の中に愛花の、怜奈の、漣の、雪乃の、咲希の顔が次々と浮かぶ。
今、ここで倒れてしまえば―。
今自分が死んでしまえば―。
「・・・させるものか!」
誰かのために死んでもいいという考えから誰かのために生きのびるために―舜の考えは変わった。
素早く仕込みを終えると舜は外に飛び出す。
正直立ってるのも辛い状況だった。
それでも誰かの為を思う力が舜に力を与える。
「・・・まだ、動けるのか。・・・。」
クロムはその様子を見て気を引き締める。
手負いの獣ほど危ないものは無いと。
「うぉぉぉぉぁぁぁああああ!!!!!」
舜の魔力が爆発的に上がっていく。
空間そのものが渦巻く魔力で押し潰されねじ曲がっていく。
(・・・冷静さを無くした今が・・・好機・・・。)
クロムはその獣に向かい真っ向から立ち向かっていった。
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「・・・!?これ、殿のじゃない―そう、当たりはあっちの男の方だったか。あはは!今から行ったら間に合う―」
ギースの顔から笑顔が消える。
「君は、誰だい?」
「愛花ってさっき名乗ったでしょ。」
ペっと愛花は口から血を吐く。
(何かでスイッチでも入った・・・?)
ギースはその目でしっかりと愛花を見る。
「さっきまでと魔力が―。・・・?」
(一瞬跳ね上がったように感じたけど・・・今はむしろ何も感じない?)
「―本気出すつもりになっただけだよ。」
少し訝しんだもののギースはまたニカッと笑う。
「いいね・・・じゃあ見せてくれよその本気!」
「密度―最小。」
愛花が右手を前に出す。
すざまじい風と共にただひたすら巨大な魔弾がその手の前に作り出されていく。
「はぁぁぁぁぁうぉらぁ!!」
右手を払うと共にギースに向かって飛んで行った。
「デカいだけで!倒せると思うなよォ!刹那の運命!!!」
「・・・密度―最大。」
左手で作り出した小さな小さな魔弾が回転しながら飛んでいく。
先程の大きな魔弾とぶつかり、一方的に打ち消しながら―そのままギースの体を貫通した。
(何故・・・動け・・・。・・・ああ・・・・・・そうか・・・魔力が感じられなくなったのは・・・僕じゃ測りきれないほどの魔力にまで上がったのか・・・僕の魔力じゃ止められなかったのか・・・。)
薄れいく意識の中ギースは笑う。
(・・・最高の気分だ・・・僕より強い、果てしなく強い相手に看取られるなんて・・・・・・。)
そしてギースは覚めない眠りについた。
「・・・行かなくちゃ・・・・・・舜兄の所へ・・・。」
愛花はおぼつかない足取りで歩き始めた。
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「・・・ほう。この魔力・・・我々柱相手なら分からなかったであろうが。阿呆め、何故クロム様に単身向かったのだ。」
(・・・懐かしい―この魔力。)
憤るロージアを他所に怜奈はその魔力を目を瞑って感じていた。
そして目を開け、乱れた髪をパサりとなびかせる。
そして右手で1つ空間に魔力を置いた。
ぐるぐると宙を浮いていたと思えば黒い穴が空き、刃が飛んでいく。
更に怜奈はまるで空間に壁でもあるように右足で魔力を蹴りあげ、更に飛び跳ねた先で左足で魔力を蹴る。
(その魔力から3本刃が飛んできた後に―後ろに回っておるな。どんな攻撃でも読めればそんなもの―。)
「さて、終わりにするか嬢ちゃん!」
飛んでくる軌道を知っているロージアは的確にその刃を3本避ける。
そして振り向きざまに刀を振るう。
その目に見えたものは―
近づいた後後ろに飛び退く怜奈の姿だった。
(おっと、視る分が少なすぎ―)
ロージアが首に手を当てる。
血が流れてる。
短剣が刺さっていた。
そして力なく膝から崩れ落ちる。
「・・・後ろにいけば仕掛けてくるのは私にも視えていた。・・・あなたが読んで動くなら私も読めるよう動けばよかっただけ。」
怜奈はこひゅーと息を吐くロージアの顔を踏み付ける。
そしてその首の短剣を引き抜き、振り返った。
(・・・隊長はきっと大丈夫。・・・愛花の方も・・・終わってるみたい・・・なら。)
怜奈はひゅんっとその場から消えた。
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「うぉらぁ!」
漣は槍や炎でめちゃくちゃに攻撃する。
「このぉ!」
咲希は魔力で伸ばした爪で攻撃を仕掛ける。
(・・・ふむ。これだけ魔力を使いながら槍の方はむしろ強まっていくか。そして爪の方は―)
黒い塊が次々と咲希の腕やら体を牙で切り裂こうとするが最早傷すらついてなかった。
(2人共化け始めている―だが、それよりも気になるのは・・・。)
ダリルはクロムのいる方を向く。
「余所見を!」
「するなぁ!」
2人の猛攻。
漣の槍がダリルの頬を少し掠った。
「ふむ・・・。」
ダリルは後ろにはね飛びその血を拭う。
「よかろう。本気を出してやろうか―。」
ダリルの影がボコボコと音を立てる。
そこから黒い手が現れ、ドシンと地面にその手をつける。
大きさは40cmぐらいだろうか。
丸い体には腕と口しかなく、ギーギーと鳴いている。
更にもう1匹、腕の代わりに羽が生えたものも影から飛んでくる。
更にダリルは両手を黒い小さな塊にかえ、辺りに飛ばす。
無くなった両腕の先は黒い剣のようなものに変形する。
2匹の化け物に辺りを舞う異形、そしてダリル。
「さあ―主らも我らのものとなれ。」
怪物たちは餌を求めて侵攻した。
漣「漣ちゃんだよ!」
雪「雪乃だよー。」
漣「本文書き終わった時の作者の残りHPに応じてあったりなかったりするこのコーナー!」
雪「ポエムコーナーは2週目入りそうってやったりやらなかったり予定してるみたいだね。」
漣「今回は種族:竜族の咲希の紹介だよ!」
身長 161cm 体重 不明(文化の違いにより図った事がない)
誕生日5月24日 年齢18歳
能力 竜族は竜に変化出来るという竜族特有の能力があるようだが・・・?
性格 意地っ張り
見た目 白いロングヘアーのつり目の少女。瞳の色は青。
戦法 爪を用いる。
漣「それではまた次回!」
雪「読んでくれたら嬉しいな。」




