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愛の歌  作者: Dust
10章
234/234

230話 前回王者

「舜!」

「早かったね、咲希。」

「言ってる場合か!」

咲希は上の魔力の塊を見ている。

舜はじっとオピスを見ていた。

「地獄へようこそ―。」

「動いた・・・2対1になってから動いた・・・つまり、味方を巻き込む可能性がある・・・。」

「舜!?何を・・・わぐっ!?」

「復讐鬼!!」

舜は咲希を抱えて、空へ飛び上がる。

「第1曲・ガルムフレア!」

地面から灼熱の炎が溢れ出す。


「・・・助かった。だがこれじゃあ・・・。」

「地上は制圧された、ね。・・・・・・。」

「舜、早いとこあいつを何とかしないと!後手後手になるなと心の舜が言ってる・・・!」

「心の・・・何?」

そんな事を言いながら舜は鋭く辺りを見回す。

「あそこだ!あそこから動いてない!」

「いや・・・あれは多分違う・・・。・・・まあ、やってみるか。」

漆黒の魔力が刃だけの形となりて、オピスへ降り注ぐ。

「第2曲・レイドインミスト!」

オピスの姿が霧散し、そこから魔力の槍が飛んでくる。

舜は片手に刃を持ち、それであっさりと弾き返した。


「咲希、咲希の心の俺はどこにいるって?」

「へ!?えっと、炎の中に隠れて・・・?」

「残念、本当の俺が今一番警戒してるのは・・・上だ。」

舜は魔力の塊を見上げる。

「でもあれは下からの攻撃を隠すカモフラージュじゃ・・・?」

「まずわざわざ仲間が遠くでやられてから炎を出した、その時点で炎の中の線は薄い・・・まあこう思わせる為なら大したもんだけど。炎の外にいる線も、今の正確な攻撃から一旦外す。次にカモフラージュにしてはあの魔力、バカデカすぎる。利用しないにしては勿体ない。最後に・・・。」

舜は意味ありげに笑った。

「直感!!!!!」

右手の刃を、塊に投げ込む。

「あはっ!初見で見抜かれたん初めてやわ!!纏魔・地獄(ニーズヘッグ・)(ディュルズ)!」


漆黒の刃を素手て受け止め、魔力の塊を纏ったオピスが姿を表す。

バチバチと雷のように魔力が走ったと思えば、メラメラと炎のように溢れ出んとする。

「ほな行くで!!」

単純などデカい魔力の叩き付け。

「復讐鬼!!!」

舜も大量の刃をぶつけながら、漆黒の魔力をその右手の前に集め始める。

2人の魔力がぶつかり合う。

「第3曲・スネークレイン!」


弾けたオピスの魔力が意志を持ったかのように、バラバラに舜の元へ襲いかかる。

「にゃろ・・・!」

舜は魔力を込めた右手や足で、襲いかかる魔力をなんとか払いながら、右に左に飛び回っている。

「咲希ちゃん抱えながら戦うん、限界やろ!」

影が舜達を覆う。

「落ちろ!!!」

矛での一撃が、雷のように落ちる魔力と共に舜を空から叩き落とす。

その後を追うように、魔力が次々と襲いかかっていく。


「・・・怖いわぁ、今の一撃に対してきっちり防御自体は間に合わせとる。」

武器同士がぶつかり合った反動で痺れる右手を他所に、オピスは地上を見下ろす。

「流石にこのまま燃えてくれるわけあらへんし、どう仕掛けてくる気やろ。」

地上の炎はますます燃え上がっている。

炎で見失ってしまったオピスは少し冷や汗をかいている。

「落ち着け・・・炎はダメージは与えてるに違いないんや・・・あそこであの攻撃する事自体は間違ってあらへんのや。それ以外で打撃与えられる気せーへんかったし。・・・でもこの時間はなんや?我慢比べ?炎で焼かれるのと、ウチの魔力切れとの忍耐勝負・・・?」

ブツブツとオピスは呟きながら考える。


(残り時間もだいぶ少ななってきたな。魔力消費よりこっちのが心配や・・・。そうか、ウチは相方負けとるから2人残ってさえ居れば向こうの勝ち・・・!ウチから仕掛けんと・・・負ける可能性が・・・!)

「ヌゥゥゥア!!!」

魔力の雷があちらこちらに炎の中に降り注いで行く。

炎がより盛んに燃え上がる。

「どこや!どこ行きよった!?」

しかし、見つからない。

「・・・!ほうか、考えてみれば炎を少しでも耐えれるなら、その間に移動してあの場所目指す…!」


被害が少なくなるよう、本来なら抑えてて分かりやすい場所。

だが、オピスの視界ではどこも燃え盛っているように見える。

「・・・ここや!!!」

オピスは記憶を頼りに、ネメスがやられた場所へ矛を振り下ろしながら降り立つ。

剣がぶつかる音。

「ビンゴ・・・!」

「そう、来るしか無かった。だけどここはあなたの魔力が少なくて、僕の魔力が多いアウェーの戦場―」

(人が変わった・・・復讐鬼の人格って奴か!だけど、天才なんは舜はんの方やろ!)

矛を巧みに操り、刃を弾きその身体に叩き込まんとする。

「染色・黒。」

「・・・!?今斬ったんは魔力かい!」

「正解。僕自身は久々に使う技だ・・・ああ、懐かしい。」


「染色・白。」

白い魔力の線が何本も現れ、オピスに伸びていく。

下がり、警戒をして・・・。

「なんや?消えてく・・・!?」

白い線が見えなくなったことに、更に警戒をする。

(透明になるんか!?場所は・・・。)

「ふふ、今度は不正解。」

「痛ぅ!?」

残った白い線に添って復讐鬼の剣がオピスの脇腹を捉える。

「今のは君の死角を探し出しただけ・・・。」

(マズイ・・・復讐鬼になってから情報が無いなった・・・ウチの優位な点が消えた・・・!)


「ところで・・・いいの?気にしなくて。」

「・・・何の話や。」

「これ、()()()()でしょう?」

背後に、ぞわりと気配がする。

「ぐっ・・・!!」

何とか防御姿勢は取ったが、左腕がぶらんと垂れ落ちる。

「おい、なんで言った。」

「言わなくても一緒だったから。その魔力、見つからずに殴れると思ったの?」

「・・・はぁ、やりにくいな。舜に戻ってくれないか?」

「情報がない僕だから都合がいい・・・。だってさ。」


オピスは苦笑いをしながら、2人をみている。

「聞いてへんで、咲希ちゃんにそんなパワーあったなんて。」

「ほ、褒めても別に?別に何も出ないが?ふふん!」

「嬉しそー・・・。」

片手で矛を扱う訳にも行かず、オピスは魔力を束ね、構える。

「でもな、うちも前回優勝者のプライドあんねん。勝てへん分かっても降参は出来ひん。・・・続き、やりまひょか?」

当然、勝てる訳も無かったが―

オピスは僅かな残り時間、一度も被弾せず、時間切れまで元王者として戦い抜いた。


「さあ!試合終了のゴングがなりました!判定はもちろん、2人とも元気な舜・咲希チームの勝利!波乱な展開でした!」

観客達の様々な声。

勝者を称える声もあれば、敗者を罵声を浴びせてる声もある。

「あーあ、悔しいわ。折角知ってる相手やからギリ有利やと思っとったんのに!しかもネメスはん次の試合も無理そうやわ・・・まあ1人で予選グループ第2戦勝てばええ話やけど・・・。」

「なんで俺の事知ってたんだ?」

「あ、舜はんの方に戻ったね?舜はん、自分の立場分かっとる?反対の大陸とはいえあの軍事大国・アウナリトの王族さんやで?ちょっっとアンテナ貼ってる人達にはあんさんの活躍、伝わらん訳も無いわけで。」

「・・・なるほどな。いつの間にかちょっと有名になってただけ、か。」

オピスはニッと笑い手を差しのべる。

舜と咲希はそれぞれ握手をかわし、闘技場を後にした。

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