22話
パッと咲く笑顔の花が
人にうつって回ってあなたに届くといいな
愛花
エリからの依頼の日。
3人は既に指定の場所に着いていた。
魔力者が20人はいるだろうか。
「おい、入れ!」
その声にぽつんとある大きな建物に流れ込む。
「思ったより楽に紛れ込めましたね舜兄。」
「こっちの顔は割れてないもんね。・・・しかしあんま話さない方が良さげな雰囲気だね。」
普段粗暴な振る舞いをしてるとは思えないほどの静寂。
(ローグにここまで規律を正させる・・・それ程か。)
舜は息を呑みながら待つ。
しばらくすると一人の男が入ってきた。
線の細い、真面目そうな男。
相当な魔力を感じる。
(・・・だけどあの時程の魔力じゃない。・・・こいつはクロムじゃない。)
そもそもクロムが来るかも分からない―というか何が起こるかもよく分かっていない。
気になるから探ってこいとしか言われてないのだ。
それでももしかしたら大きなものじゃないかも―なんて気休めが思えない程の人数、光景。
次に入ってきた男を見て舜は目を疑った。
中性的な男―その男のことを舜は知っていた。
(・・・レアス。)
そして周りを目だけ動かして見る。
ローグだと思っていたがもしかしてアウナリトの兵士なのか?と。
しかしそれなら自分の顔が割れてておかしくない。
(・・・知ってるし知られてる顔だ。もし俺がバレても2人とも出てこないように。)
そう言ってひとまず舜は顔が見えにくいよう影の方に少し寄った。
2人の顔は知られてないかもしれない。それなら仮にバレても被害を被るのは自分だけだ。
「お待ちしておりました。私スレイと申します。本日はよろしくお願い致します。」
2人の会話が始まる。
「レアスです。まさか4柱の1人が来ていただけるとは思いませんでした。」
(4柱って何?)
舜は小声で2人に聞く。
(・・・クロムの、配下。)
(・・・・・・そうか。)
まだ分からないと舜は自分に言い聞かせる。
例えば和睦の交渉とか―
「アウナリト攻略の際、内部から援護致します。いつまでに準備をしておきましょうか。」
希望は見事に打ち崩された。
「クロム様が見回りをしたところ天然の要塞となっている部分を攻めるのにしばし時間を擁するだろうとの事でした。1ヶ月の猶予はありますよ。」
舜は黙って聞き続けるのみだった。
今すぐ問い詰めたい―いや、イパノヴァが死ぬきっかけとなったクロムと繋がってる時点で問答無用でたたっ斬りたい。
そんな思いを耐えながら―
「なーんかさっきから殺意感じるんだよね、お前。」
舜はドカッと蹴られ、前に躍り出る。
「・・・!?・・・そうですか。殺りなさい、キアラ!」
舜を確認するとレアスは驚きながらもその蹴り飛ばした小柄の緑のショートカットの女―キアラに司令をだす。
「あいよ、殺しますねー。」
その声に舜は剣を出しながら振り返り―いない。
足音のトントンっと音がさまざまな場所からする。
(落ち着け―思考を回せ―)
小柄な相手、その相手が舜に立ち向かうならどうするか。
なぜ移動を続けるのか。
わざわざ音を分かりやすく立ててるのはなぜか。
舜は音に振り向く。
振り向いた一瞬でその胸を刺してやろうと正面からキアラは突っ込んで来て―
振り返る前から胸の前に構えていた剣にその短剣は止められた。
舜はすぐさま片手で剣をもうひとつ作ろうとして―衝撃が走る。
腹部を蹴られた。壁に叩きつけられながらゴボリと血が口から溢れてくる。
眼鏡が吹き飛んだ。そのおかげで衝撃で視界が定まらなくても、少ないながら歪みでキアラの動きを見れる。
舜は覚悟を決めた。
間違いなくキアラはこのまま殺しに突っ込んでくるだろう。
壁際で避けるのは難しい。
なら、急所を外させつつ短剣を身体に刺させ、斬り掛かる。
そう、覚悟を決めた。
「・・・それは、痛いよ?」
その声と武器がぶつかり合う音が聞こえ、舜は振ろうとする剣を止める。
怜奈がキアラの一撃を受け止めていた。
「・・・今ここで出ると下手したら国に帰れなくなるかもだけど。」
愛花が下手に出てこないよう聞こえるように怜奈に確認をする。
敵に回したのは左大臣、先にこの左大臣のを暴露出来ればいいがこちらが先に罪人にされる可能性を懸念して。
「そんなもん承知の上ですよ。」
そんな懸念もなんのそのあっさりと出てきた愛花は―いつの間にやら既に何人か倒しており、更に周りのローグに魔弾を放っていた。
「・・・隊長、この子は私の方が分がいい。・・・それより。」
「・・・愛花は周りのを頼む!」
舜はレアスを探すが―既にその姿は見えない。
(既に外か―)
舜は駆け出すがその前を男が阻む。
「クロム4柱が1、スレイ。いざ尋常に。」
「邪魔だ!」
舜は真っ直ぐ踏み込みただ力一杯振り下ろす。
スレイは剣でそれを受け止め―
振ったはずの舜の剣だけが折れる。
「我が名はスレイ― スレイヤー。身寄りのない我が身を拾って貰ったあの日から名を捨てクロム様の剣となったもの。」
「聞いてないことベラベラ喋んないでくれる!?」
舜は新たに剣を出す。
(剣であの剣に触れちゃ駄目か・・・。急がなきゃ・・・。)
舜は剣を構え、突っ込む。
相手の構えを見てどこでもいいから斬る、その算段で。
(スレイヤー:対象は人―)
スレイも剣を横に振る。それを見て舜は左腕に魔力を込め防ぐ体勢を作りつつ右手の剣で突きにかかる。
舜の左腕にスレイの剣が触れた。
「なぜ斬れなっ・・・」
斬れるはずだった左腕は、魔力の光を放ちながらその剣を受け止めた。
そして舜の剣で喉を貫いた。
舜は慌てて外に出る。
人の気配は既になかった。
(逃げられた―)
相手の移動方法は分からないがこちらは徒歩。最早追いつくのは絶望的かもしれない。
舜はまた建物の中に戻る。
愛花と怜奈の援護をまずはしようと―
「・・・終わってる。いやさすがだけど・・・さすがに早くない?」
怜奈はキアラを捕え、愛花は雑魚を蹴散らした後だった。
「この後どうします?」
愛花が眼鏡を手渡しながら聞く。
舜は眼鏡をかける前にチラリとキアラを見る。
戦いの時も思ったが歪みは少ない。
敵対してるとは思えない程であった。
(・・・・・・。)
「舜にー。おーい。」
「・・・うん、帰るに帰れないかな。」
舜は1人、気がかりとなってる人を思う。
「心配なのは・・・オーフェを置いてくこと、だね。」
「・・・助けるのは厳しい。・・・むしろ繋がりがないと思われた方がいい。」
「そういえばあの子どうします?」
両腕を縛られムスッとしてるキアラ。
「・・・逃がすか。」
「なっ、恩を着せても返さないぞ。」
キアラは目を丸くする。
「いいよ、返さなくて。」
歪み方の件もあったが、イマイチ悪い子には思えない。
怜奈がその両手の縄を切る。
「あっかんべーだ。」
「両親を大切にな。金だけじゃないからな。」
ピタリとキアラは止まる。
「何を知ってる・・・?」
「ん?・・・ん??」
舜も自分の発言を疑問に感じた。
「とぼけるのか・・・ふん!」
キアラはそのまま去っていった。
「・・・?・・・まあいいか。」
舜達もその場から離れるよう、アウナリトと反対方向へ歩き始めた。
「・・・スレイが殺られた?」
「はい、報告ではアウナリトの幹部諸共襲われたとか。」
「・・・行っていいよ、シュヘル。」
「はっ!」
クロムはふむと1人頷く。
「聞きましたよ〜殿。」
3人の男がクロムに話しかける。
「いや〜スレイやられちゃった。とはいえあいつ能力だけだったし囲まれて魔弾でも放たれたんじゃない?」
「口を慎めギース。長年主に付き添った部下だ。」
「もうお堅いってダリル。死んだ仲間より生きてる僕らだよ。ね?ロージア。」
「死んだ仲間からも情報は見つけられるぞギース。まず愚かにもクロム様に敵対しようとしてる阿呆がいる。」
クロムの鎧の奥の表情は分からない。
「カオスから聞かされてた話だと・・・。―そうか。みな聞け、戦いの日は近い。各々身体を休めるなと準備しておくように。」
「そこまでするべき相手か・・・まあいい。クロム様を倒すのは俺なのだからな。」
「あっ!ずるーい!僕だってクロム様と殺し合いしたいもん!」
ガシャンとクロムが武器を鳴らした。
その音で3人の男はさがっていく。
代わりに2人の女性が奥から現れた。
「クロム様!我々にも命令を!」
「そうっすよ!自分たち殺れますから!どうかクロム様の代わりに―!」
「・・・よい、2人共。カオスがわざわざ私に頼む相手だ。むしろ君たちはシュヘルと共に安全圏から見守っていて欲しい。此度の戦いでどちらかが死ぬところを。」
11~12位か、幼い方の女性が声を張上げる。
「クロム様が死ぬなどありえません!その強さで助けてくださったクロム様が死ぬなど―!」
「・・・約束してくれ。もし私が彼に殺されたとしても、決して復讐など考えないと。」
「クロム様・・・そこまで・・・何を・・・。」
クロムは優しく幼い方の少女を撫でながら、もう1人の少女に優しく答えた。
「彼は・・・私と同じだよ。一目見てわかった、運命に縛られている人形なんだ。だから、私がやるかやられないといけない。」
「それでもクロム様は―!」
「私はね、彼の前で彼の仲間を斬り殺したよ。彼を殺そうと思ったのだけど、彼を見てした少しの躊躇が庇われる隙を作り出してしまった。」
「「!?」」
「・・・彼は私を殺そうとするだろう。そして、それは邪魔しようとする人間もまとめて。だから、君たちは下がっていてくれ。」
2人の少女は俯くように頷いた。
怜「・・・怜奈。」
オ「オーフェだ。」
怜「・・・今日は愛花の。」
身長 152cm 体重42kg B71 ないって言うな!(愛花談) W52 H73
誕生日 2月29日 年齢17歳(あと1ヶ月ちょっとで18歳。)
能力 現段階で不明
性格 基本的に明るいムードメーカー
見た目 黒髪ロングの可愛い系。瞳の色は赤。髪は降ろしてたり1つ結びしてたり。
全体的に子供っぽい雰囲気を残してる。が、静かにしてるとちょこちょこ大人っぽさも出てきていい感じ!キュンキュンする!(リーン談)
戦闘スタイル 基本的に武器は作らず、近接戦でも魔力を操り戦う魔力操作のスペシャリスト。思い付きを即座に実行出来る天才肌。とはいえまだ若く、甘い部分も多い。
今のところ雑魚処理ばっかりで戦闘描写少ないんですけど!(愛花談)
オ「・・・細すぎだな。いや怜奈も細すぎだが。」
怜「・・・ガリガリって見た目ではないから・・・大丈夫。」
オ「それでガリガリな見た目じゃないってどうなってるんだ・・・。」
怜「・・・それではまた次回。」
オ「今回僕ら必要だったか?」




