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愛の歌  作者: Dust
9章
227/230

223話 雨中激闘

あの日も雨の降る日だった。

英雄の死んだ日。

英雄が子供を人質に取られ、動けなくなったところを、殺された日。

あの日、英雄の目に映っていたのは―

喉元にナイフを突き立てられてた、まだ力もない頃の、私―

私が、彼の死を、決定づけてしまった。


レインは雨を手に、回想に耽る。


あの日も雨が降っていた。

英雄の魔力が流れ込んできた時、その雨は武器となった。

これは英雄の加護だったのだろう。

私に、私が死なせてしまった英雄の分も―

英雄の敵を殺せと、そう言ってるのだろう。

今だってそうだ。

この雨は恵みの雨…

「そう、私は負けない。この加護がある限り。」

レインは舜の走って行った方向を見て、ふっと笑った。


舜は必死に走っていた。

4つ、考えながら走っていた。

1番先に考えてるのは雨が防げそうなところでの戦闘―

しかし、水の威力を見ると生半可な建物では無理だろう。

2つ目として、逃げる振りをしつつ、追ってきた相手の隙を狙えないか…

しかし、これも今追われてないのを見ると、まだ考えるべきタイミングではない。

3つ目は愛花との合流。

やや道はそれてるが、それに関しては何とかできる。

そして4つ目。


(あいつはどの距離までの水を操れるのか…。)

操ってる水の届く距離では無い。

一体どこまでの距離なら武器に出来るのか。

(少なくとも、雨が降ってる中だと近接での防御は幾らでも出来るだろう。さっき、誰の事か分からないけど"あの女"とやらの血は物理的に破壊出来たが…。)

仮に雨水も破壊できたとして、破壊しないといけない盾は無限と思えるほど降り注いでいる。

(幾つまで同時にも気になるけど…こっちの方はある程度予測がつく。)

舜とのやり合いの時に、既にその対決で複数人の血を使っている。

ずっと能力で操っていたのだとすれば、同時に操れる数は結構あると踏んでいた。


「!」

気配に舜は振り返ること無く、驚いた。

「ただでさえ雨の中で武器や盾をポンポン持ってこられるだけで困ってるのに、移動にまで使えるのズルくないですかね!?」

「…これは演技。焦ったフリして、油断して欲しい?」

レインは水を繋ぎ合わせて、その上を滑るよう高速に移動していた。

「いやいや、そんなことは!そんな事はまっったくないんだけど、ちょっと油断して近付いてくれない?」

「…こっちは時間稼ぎの言葉?混乱させたいって訳。」

ここでようやく舜は振り返り、走った勢いで後ろに飛ぶような形を作りながら魔法陣を目の前に作った。


(来る。いや、違う!)

その魔法陣は自分の方を向いていない。

地面と空を向いている。

舜はその魔法陣を魔力を込めた足で蹴り飛ばし、またくるりと回って走り始める。

空目掛けてビームが飛んで行った。

「そう。時間かかる程、面倒。ペース乱される前に―」

「ぐっ!?」

雨が、縦横無尽に舜を叩き付ける。

浮き上がった身体が、右に左に、至る所から雨にぶん殴られる。

「1箇所なら防げても、ここまで広げれば無理。そうでしょ?」


弾き飛ばされ、さらに弾かれ、地面に叩き付けられる。

「…っ!」

更に雨が降り注ぐ。

その雨を光弾が次々と打ち消した。

「舜兄!」

愛花が滑り込みながら、レインの前に立ち塞がる。

「愛花!気を付けて!そいつ水操る!」

「うぃ!」

愛花の上に大きな円の光が現れる。

傘のように上からの雨を物理的に遮断する。


「火力は任せてください!」

「おっけー!背後の防御は任せ…ぐぁ!身体で受け止め…いてっ!」

「舜兄!微妙にカッコ悪いです!」

体制を立て直した舜は剣と身体で背後からの水を全て受けきる。

愛花の魔弾が、雨の弾と撃ち合い、更に襲いかかる。

「厄介。面倒。消えろ!」

レインは舜の血の一部をけしかけた。

「密度・大!」

愛花の魔力が小さく纏まり、その血とぶつかり合う。


「…っ!…うぁぁぁぉぉぉおおおおおお!!!」

愛花がその魔弾を更に、強く強く念ずる。

そこに横から右手が伸びてきた。

全てを壊すもの(ラグナロク)。」

血だけが破壊され、愛花の魔弾がレイン目掛けて飛んでいく。

「愛花!」

「はい!」

舜が先頭に立ち、距離を詰める。

「この程度…!」

レインは舜の血を盾のようにし、愛花の密度・大を受け止め、消し去った。


「ウラァ!!」

舜の剣の一撃が、その血の盾を破壊する。

「くっ…!」

レインは手元に残していた普通の雨を、舜に浴びせる。

至近距離から、防御しようとしてない舜の身体に浴びせた為、舜は体勢を崩した。

思わぬ攻撃を、何とか対処したレインのその目には―。

倒れた舜のすぐ後ろから、魔弾を構えた愛花の姿が見えたのだった。

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