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愛の歌  作者: Dust
9章
226/228

222話 悲しみの雨

「ふぅ・・・これであとは1人、と。」

「あと1人なんだ。・・・・・・。」

「そんな目で見ないでよ。敵対の意思は無いんだから。」

舜はアリサを用心深く見つめる。

「命かけたくなーいって言ってた割に、結構な事してたなと。」

「だって!任せっぱなしで終わったらそれはそれで夢見悪いじゃない!」

「・・・そうか。」

ようやく警戒を解いて、舜はふわっと笑った。


「あと1人の情報、分かる?俺が片腕飛ばした女?」

「サニーは私が説得するわ。最後の一人はレイン・・・唯一、英雄の子孫の自称を良しとしてない女。」

「良しとしてない・・・?なら・・・こっちも説得は可能か?」

アリサは目を伏せ、首を振った。

「無理。彼女がやりたい事が・・・"英雄の復讐"だから。」

「復讐・・・。・・・復讐ね。」

舜はため息混じりに呟いた。

「居場所と・・・能力とかは?」

アリサは3Dマップを宙に展開し、指を指す。

「多分ここ。ここが私達の拠点だったから。能力は液体を操れる・・・このくらいしか情報が無い。」

舜は頷いて、自分のデバイスをとりだした。


「後1人なら・・・他の人と合流も可能かな。」

幾つもの複雑な想いを抱えながら、まず真っ先に愛花に連絡を取ってみる。

「・・・うん、分かった。落ち合おう。」

それぞれの居場所を確認し、危険地帯を避けながら会える場所を集合場所にする。

舜は他のメンバーには連絡を取らなかった。

本当に残り1人なのか分からないこと、それ以上に外部からの存在の影響が大きい。

特に相対したカミラは、今どこで何をしているかは、舜には見当もつかなかった。


「・・・・・・。」

アピアルやアラタはまだ酒場にいるのだろうか。

"護ってあげる"の発言の意図―もし敵対者がまだ来るのであれば?

「・・・とりあえず俺は向かうよ。」

「私はツレ探さないとだから、ここ迄かな。」

ロルバの答えに舜は頷いて返した後、アリサを見る。

「・・・・・・後、任せていい?」

「分かった。雪乃、アリサを酒場まで頼む。」

「はい、お任せ下さい。」

(俺と愛花の2人なら誰が相手でも問題ない。・・・まずは愛花と合流だな。)


舜は1人、走る。

閑散とした道。

争いが激化した事で、人の子1人も居はしない。

「早いとこ終わらせないとな・・・。」

思わず呟いていた。

恐怖が伝染している。

脅しの為に晒された首も未だそのまま。

最早人がいるとすら思えない静寂の中で―

舜は何かを聞き取って立ち止まった。


「・・・テメェか?最後の一人ってのは。」

「・・・そう、最後の一人なんだ。」

振り返った先に、レインはブロック塀に座っていた。

その手元には何かを浮かしている。

「そこ多分他人の家のだろ。不法侵入だぞ。」

「そんなこと気にする?・・・違う、時間稼ぎか。」

ふわりと舞った手元のそれは、舜目掛けて飛び出し、刃のように形を変えた。


「・・・!?っ・・・!」

舜は剣でそれを止めようとして―剣が一切勢いを止められないまま斬り落とされたのを見て、身を躱した。

掠った左腕から血が流れ出る。

「悪いけど、もう詰んでる。」

「チッ・・・!」

レインはそう言うと、今度は舜の腕から流れ出てる血がウヨウヨと動き始めた。

舜はそこから距離を取り、レイン目掛けて走り出す。

「届くと思う?」

レインが取り出した他の血が、彼女の周りに浮かぶ。

「届かせるさ!」

舜は新たに出した剣を思いっ切り振り、その血の壁を破壊した。


「そう、あの女の血じゃ足りないか。やっぱりキミの血じゃないと。」

レインは落ち着いた様子で、舜の腕から取った血を舜に向かわせる。

「復讐鬼!!」

(大勢の人の恨みを買ったお前への一撃なら・・・届く・・・!)

漆黒の魔力を集め、レインの襲わせてる血ごと、本人を貫かんと―。

その漆黒の魔力がレインの操る血とぶつかり合い―そして―


「・・・・・・。」

ゴボッと舜は血を吐いた。

撃ち負け、躱そうとした左腹を貫かれた。

舜は即座に吐き出した血から離れる。

「・・・クトゥグア!」

傷痕も炎で焼き払い、無理やり止血させる。

それでも新たに武器を渡してしまった。

「・・・2人目だな、液体を使うのも、それが復讐を唄うのも。」

ピクリとレインが反応する。

「一緒に・・・するな・・・!」

ふつふつと湧き上がる怒りを抑えるような声。


(感情の動くところはここか・・・。使えるか?)

刹那、舜は思考を回す。

「そんなにツンケンするなよ。この世の中、復讐唄うやつは少なくないんだし。」

「一緒にするなと言った!」

激高の瞬間、レインは全ての血を用いて舜を襲おうとする。

「ナチャ!!!」

舜は最大の魔力を込め、ナチャの石で糸を作り出した。

糸が血に触れた途端、血はどこか遠くへ飛ばされて行く。


「・・・!」

悔しそうに息を飲むレインに、舜は剣を出して襲いかかろうとする。

レインは自分の腕に爪を立て―

2人は動きを止めた。

「・・・クソっ!」

「・・・ふ、ハハ!運命は告げている。・・・もっと殺せと。あの人の分ももっとと・・・!」

「・・・くっ!」

舜は即座にレインから遠くへ走って行く。


―雨が、降り出したのだ。

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