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愛の歌  作者: Dust
9章
225/230

221話 最後にもう一度

「ちょっと前衛まかせた!」

「え!?私に!?ちょっとお兄さん!?」

舜はロルバにそう声をかけると、背後を向く。

そして星々は(メテオール)地に堕ちゆく(・エンダ)!」

作り出した魔法陣を、魔力を込めた腕でぶん殴る。

一瞬収縮した魔法陣は、膨大な魔力となりて解き放たれた。

「壊しても無駄だ。その抵抗に何の―」

呆れたように言っていたクラウだったが、壊れた先に人影が幾つも見え、黙り込む。


「では約束通りに。」

「ええ、舜さんの方はお任せ下さい。」

先頭に立つナーバと雪乃は一言ずつかわし、雪乃はスっと遠くへ消えた。

「テメェら!私達は何故まだ生きている!」

「ハッ!カオス様のおかげです!」

「私達の役割はなんだ!」

「ハッ!カオス様の為に死ぬ事です!」

「そうだ!私達はカオス様のおかげで生きながらえた!ならその命、カオス様の為に使うべきだ!」

叫ぶナーバに、それぞれが続く。


「カオス様の為に!」

「「カオス様の為に!」」

「「「「カオス様の為に!!」」」」

「「「「「「「「「「カオス様のために!!!」」」」」」」」」」

ナーバによりドンと鳴らされた足音に、静寂が立ち込める。

それぞれが、自身に目隠しの布を巻いた。

最後にもう一度(ワンラストスモーク)。」

ナーバはそう告げると、葉巻をカットした後火をつけて、咥えた。


「・・・一体何?」

異質な光景にロルバは呆然と呟く。

「協力者・・・ではあるけど・・・何をする気だ?」

舜も何がなんだが分からず、クラウを警戒しながら動けずにいた。

「ヒッ!?」

ロルバの悲鳴と同時に、2列に並んだ部下たちが順々に首から血を吹き出しながら、倒れて行く。

「なんだ・・・この魔力は・・・!?」

「魔力!?そんなもの感じないわよ!?」

あまりの強大な魔力に、片や驚愕し、片や反応すら出来ないほど―。


「―巻き込む事お構い無しか!?」

「キャッ!?」

いち早く反応したのは舜であった。

ロルバを抱きかかえ、必死に横へ逸れようとする。

ロルバはその影響で何がなんだが分からないまま、されるがままに舜に身体を預けた。

クラウは避けきれないと悟り、即座に魔力を集める。

ナーバの吐いた煙が、穴の空いた円を描く。

倒れたものの血が、赤い煙となりてその円の真ん中へと。

その煙に手を伸ばし―張り詰めた糸が切れたかのように、倒れ伏し―

真っ赤な魔力が、目の前の全てを包んだ。


「くっ・・・!」

「ぴゃあ!?」

何とか直撃を間逃れた2人は、風圧で吹き飛ばされ転がっていく。

「アイタタ・・・ちょっとお兄さん、ち、近いって!」

「・・・氷?」

ロルバに覆い被さるような体勢になっていた舜は、自身を拘束しているものに気が付いた。

そのまま、彼を赤い煙が覆っていく。

「な・・・何?なんなの?」

「魔力・・・アイツらの分か・・・。」

もし雪乃の氷だと気が付いていなかったら、避けていたであろう煙。

舜は倒れているローグ達を見て、呟いていた。


「はぁ・・・!はぁ・・・!!舐めるなよ・・・赤の魔力なら・・・少しは相殺出来るんだよ・・・!」

煙が開け、血だらけで血反吐を吐きながら、クラウは吐き捨てた。

「そして・・・俺のものにも出来るんだ・・・!最期の一手だったかもしれないが、届かねぇ!」

「お兄さん!来る!」

「・・・・・・。」

氷が消え去り、舜は立ち上がる。

ロルバも慌てて立ち上がり、構える。


「クラウ、大丈夫?」

「アリサ!来てくれたのか!」

その背後から、アリサが現れる。

「お前は・・・。」

「・・・・・・。」

舜の視線からアリサは目を背けた。

「ふっ、心強いな・・・やはり仲間というものはいい・・・!俺たちの正義で、奴らを倒そう!」

「そうね・・・。」

グサリとくる感覚。

クラウは目を見開き、信じられない物を見る目で、自身の胸を後ろから貫いた剣を見た。


「私の正義、貫かせてもらうわ。」

「ァ・・・アリサ・・・?なんで・・・。」

ゴボリと口から血を吐き出した。

「私も元関係者として・・・過ちを終わらせなきゃと思ったから。」

「あや、まち・・・?」

ガクりと倒れ、そのまま痙攣していく。

その消え行く意識の中で、クラウは過去の記憶を思い出していた。

仲間と協力して、立ち上がった時。

アリサとリダン、2人の離脱者が出た事。

(何処で・・・間違った・・・?俺は・・・仲間だと・・・。)

最期の力を振り絞って、アリサの顔を見る。

アリサは―その頬を濡らしていた。

悲しそうな目で、こちらを見つめていた。

(仲間として・・・止められた・・・そうか・・・俺が・・・俺が間違えたんだ・・・。やっと、気が付い―)

そして、遂にその意識は永遠の闇へと消えて行った。

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