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愛の歌  作者: Dust
9章
224/228

220話 最期の仕事

(クソっ・・・!なんで今思い出しちまったんだ!)

子供の頃―父に喜ばれると思いながら、ウキウキして魔力者に慣れた事を報告した。

片親で、不器用だったが、それでも弟と2人を育てようとしてきた良い親だと思っていた。

―その日までは。

報告をした途端、父は悲しい顔をした。

その日から地獄は始まった。


「どうした!?魔力者というのはそんなものか!立て!立ち上がれ!」

毎日のように殴られた。

毎日のように蹴りあげられた。

「うっ・・・。」

毎日、反撃をしなかったのは何故だろう。

もう覚えていない。

「魔力者になったというのに・・・どうしてそんなに弱いんだ・・・。せめて身を守れる強さを・・・。」

父のそんな落胆の声を毎日のように聞かされた。

力を付けてもお前の身を守ってやるつもりはないと、強く思った。

「お兄ちゃん・・・。」

「・・・見てんじゃねぇよ。」

強さが、必要だった。


ああ、そうだ。雨の日だった。

俺ん家に魔力者が2人乗り込んできて―殺されそうになったんだ。

「そっちの子は弱っちいからいい!この子だけには手を出さんでいてくれ!この子は優秀な魔力者の卵なんだ!頼む!」

その声を聞いて、何かが弾けて消えた。

いつの間に、弟が魔力者になったんだとか。

そんな疑問の前に―俺より優秀なのが出たら、俺は見捨てられるんだと。

でもその声のおかげで、俺は逃げられたんだ。

その2人は俺をほっといて弟の方へ行ったから―。

そして、その後出会ったクルンチュが育ての兄になると言って―そいつも俺を見捨てて―!!


(・・・?俺は逃げたのになんでまだ家の記憶が流れやがる。)

シェフティの頭の中に、その後の父と弟の光景が流れる。

「・・・ゴボッ・・・生き延びろよ・・・神様・・・あの子にその身を守れる強さを・・・どうか・・・。」

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)

「おい、こいつさんざん痛めつけたが魔力なんて使わねぇぞ。」

「はっ・・・!バーカ!僕は魔力者なんかじゃないやい!踊らされて、本当の凄い魔力者になるお兄ちゃんを逃がした・・・アンタらは―ウグッ!?」

「生かしててもしゃーないな。殺せ。」

(・・・なんで・・・・・・。)

シェフティの頬に熱い涙が流れた。


「ハハッ・・・アハハハ・・・アハハハハ!!!そうか・・・そうだったのか・・・アハハハハ!アイツら力もありゃしないで馬鹿な奴らだ・・・アハハハハハ!」

「・・・・・・?何を・・・。」

「そうだ・・・やっぱり力だ。力が必要なんだ・・・力こそ全て・・・。」

フラフラとシェフティはアラタに近付いていく。

「落ち着け、大丈夫だ。何を見たかは分からないが、君はやり直せ―。」

ゴボリと、アラタは血を吐いた。

シェフティは燃え盛る炎も気にせず、アラタの胸に素手で穴を開けた。

「ハハ・・・油断したなぁ?俺は・・・手に入れる・・・強さを・・・!アハハハハハ!」


アラタはその腕を掴んだ。

「これで・・・気は済んだか?」

「・・・っ!」

シェフティは一瞬怯んだが―腕を抜き、振り払った。

「いやまだだ・・・もっと俺は強くなる・・・ヒヒッもっとだァ・・・ハハハ!」

そしておぼつかない足取りで、周りが見えてないかのように去って行った。

もう1人―リーグもいつの間にか消えていた。

アラタはガクリと膝から崩れ、アピアルに支えられる。


「お疲れ様、アラタくん。」

「・・・ああ―ようやく分かった。君は隣に住んでいた妹さんだ・・・。随分・・・綺麗になって・・・。」

「・・・・・・アラタくん。あなたの想いは私が引き継ぐわ。ゆっくり、休んで。」

「ああ・・・それなら安心して・・・往ける・・・な・・・。」

アラタの身体は光に包まれ―消えて行った。

「・・・私も、愛のままに。」

アピアルは強く胸の前で拳を握り、姿を消した。



蝙蝠が降り立ってくる。

「・・・失敗、した?」

「元を正せば貴女達がね。あんなに敵に囲まれるなんて聞いてないわよ?」

カミラとレインが言葉を交わす。

「第2案は。」

「それならあるわ。」

カミラが手を伸ばすと、血が数滴垂れていく。

その血はプカプカと浮いた。

「これが?」

「ええ、舜って人の方の血。」

「そう。」


レインはその血を眺めながら、カミラに声をかける。

「こちらの人数は減っている。そちらの目的を果たしたいなら、もうひと仕事。」

「うーん・・・もう勝ち目無いんじゃない?私は降りるわ。咲希様仲間にするだけなら、他にも手はあるし。」

「・・・なら、もう用済み。」

カミラの左肩から右腰に向けて、血が吹き出した。

「・・・あ・・・あなた・・・。」

「一滴でこの威力。これは、いい武器。どうもありがとう。あなたのも、武器にしてあげる。」

レインは舜の血を大切そうに箱に入れた後、倒れ伏したカミラの血を別の箱に入れた。

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