219話 blue heart
「ふーん・・・あんたも奥の手を隠してたから、敢えて手札を明かしてそれだけだと思わせたの?」
「ふっ・・・お前にもあるのなら死ぬ前に出しておくことを勧めておこう。俺の奥の手を破れるのであれば、だがな。」
ロルバは平静を保ちつつ、話をする。
(今の・・・虹が私の水を奪って行った・・・。虹の色ならなんでも奪える力?・・・憶測でしか分からない、けど私がやるべき事は1つ!)
ひっそりと魔力を貯める。
(この虹ごと水の底に沈めてやろうじゃない・・・!時間がかかるから、あの太陽云々の為に使っては少しずつ貯めるしかないけど・・・!)
「・・・来ないのなら、さっさと終わらせようか。」
「へぇ・・・明らかに何かを狙ってる相手に自分から突っ込めるんだ。」
「戦いには勢いも重要だからな!」
ロルバの元へ灼熱が近付いた。
その瞬間だった。
「地衝烈牙!」
虹色の空間の天井が割れる。
「おっと!」
身を僅かに躱し、クラウはその斬撃を避ける。
「うっ・・・お兄さん・・・。」
「うっ・・・とは随分なご挨拶だな。・・・今んとこ、味方って認識でいいか?」
「もう敵対しないわよ!はぁ・・・調子狂うわ。」
ロルバはほっとしながら、魔力を込めて行く。
舜はそれを一目見て、ほんの少し前に出た。
「気を付けてお兄さん。あいつ熱いから近付けないし、私の水を奪ったわ。」
「成程・・・?」
「水というのはこれの事かね!」
虹の青の部分から水が押し寄せる。
「キャッ!?」
舜はロルバを抱えて、穴目掛けて黒翼で飛んで行く。
「入口はあれど・・・出口などないさ。」
「!!」
舜より速い速度で虹が周囲を囲っていく。
「あっそ。ナチャ!」
舜は糸を出し、その中に入り・・・同じ場所から出た。
「・・・・・・。」
「聞こえなかったか?出口などない。俺が出さない事にはな。」
下の水が青に吸い込まれ、消えて行く。
「お兄さん!上!」
「クトゥグア!」
大量の白煙に囲まれる。
クトゥグアの炎でクトゥルフの水は相殺された。
舜は即座に降りて、ロルバを降ろす。
「・・・復讐鬼。」
そのまま舜は牽制のために漆黒の刃を投げた。
「黒・・・か。作れないと思ったか?」
だが、クラウの前で虹の色が混ざり合い、黒となりてそれを吸収していく。
「お返しだ。」
「わっ!わっ!わっ!!?」
ロルバ目掛けて飛んで行く黒の刃を、ロルバは必死に走って何とか避けた。
「ちょっとお兄さん!私の方に攻撃飛ばさせないでよ!」
「・・・ロルバ、どの位稼げばいい?」
「・・・これがより大きくなれるのであれば・・・できるだけ・・・。」
舜はふぅっとため息をついた。
「・・・頼りたくはなかったけど、仕方ない、か。」
「ふざけるな!!!!!」
血反吐を吐きながら、シェフティは叫ぶ。
「何が愛だ!腹に穴開けながら何をほざく!!」
何かを思い出したのか、フラフラと頭を抱えながら喚く。
「愛なんてもうはまやかしだ・・・!力がある間だけ、利用価値がある間だけ、それがあるように見せつける。愛なんぞほざきながら俺が強くないと思ったら見捨てやがった・・・!実の親も育ての兄もだ・・・!!」
「・・・そうか、君は。」
「俺を憐れむんじゃねぇ!俺は全てを手に入れる。金も力も何もかも!そうすりゃ見てくれの愛だって手に入る・・・どいつも俺に逆らう事も出来ず、甘い蜜を吸うために愛を偽装させられるんだ・・・!」
「君は・・・愛された事が、無いんだな。」
シェフティはガンっと地面に亀裂が入る程の踏み込みをした。
その目は血走り、血管が浮き出ている。
その拳は―あっさりと鎧の掌に止められ―
その掌を掴み、力で体勢を崩そうとするが、逆に膝を付けさせられた。
「だが甘い。」
背後に回ったリーグの攻撃は、飛んできた傘が止めた。
「淫蕩・・・。何か知ってる君を倒したくはない。邪魔をしないでくれないか。」
「その"何か"はもうそこの彼も知ってるわ。」
「何―。」
青い炎がリーグを包む。
「・・・なんだ?熱くも無ければ痛くもない・・・。この炎は・・・?」
少し浴びたものの、即座にワープをしたリーグは不思議そうに服の炎を払う。
「・・・!」
その火の粉が剣に触れた途端、リーグの剣はものすごい勢いで燃え盛った。
カランと落ちる音と共に、剣は霧散しリーグは新たに剣を出そうとして―
「チィ!」
その手が燃え盛った。
「武器を燃やしただけで舐めるなよ!」
シェフティはその様子を見て、再び殴りかかっていた。
そんなシェフティにも青い炎は包み込み・・・
「グッ・・・この・・・!」
殴ろうとした手が、炎により燃え盛りながら反対方向へ押されていく。
「さあ思い出せ!君たちの心を!」
青い炎は、2人の身体を優しく包んだ。




