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愛の歌  作者: Dust
9章
216/228

212話 人質

「休憩はもういいだろ?それじゃあ次行ってみようか。」

男が魔弾を放つ。

その先には、足から血を流している人―

炎がその魔弾の行く手を遮るように飛び込み、漣が現れる。

1発、構えた腕で受ける。

それと同時に現れるのを予期して放たれたもう1発が頭に当たる。

散乱(スキャトリン・)(ガトリン)。」

漣の身体がビクリと動き、炎になってまた戻り。

「が・・・っ。」

苦しみ悶える声が少し放たれて、倒れて動かなくなる。


「どんな気分なんだろうな。死ねないってのは。生きたまま脳を掻き回される気分は。うえー想像したくないね。」

「・・・・・・。」

「まともにやりゃ俺より幾らも強い奴が、ほんの数人盾にされただけでこんなんなっちまう。憐れだねぇ。」

「・・・・・・。」

着弾した後、そこから何発もあちこちに魔力を放つ魔弾。

漣は既に脳に3発も打たれ、一言も発せずに倒れ伏している。

「さて・・・脳にだけ撃っても芸がない。俺たちの邪魔させない為にも、心苦しいか痛みつけられてくれ。」

男はニヤニヤ笑いながら、その手に魔力を込める。


「まずは心臓。耐えず動くこの臓器が傷跡だらけになってしまったら、鼓動の度に痛むのかね?」

「ガッ・・・あっ・・・!?」

「お次は肺。息をする度に激痛に悩まされる人生なんて可哀想だね。」

「あぐ・・・うぅ・・・。」

「胃腸もまとめてやっておこう。食事すら苦痛になるように。」

「ぁぁぁ・・・ぁぁ・・・。」

「後は・・・そうだ膀胱とかどうだろうか。」

「・・・・・・。」

動けない漣へ男は無慈悲に魔弾を放ちまくる。

その魔弾が、小さな小さな魔力となって、漣の身体をいたぶっていく。


「ハハッ、虚ろな目になってるな。さて、今のお前で助けられるかな?」

魔弾は捕らえられてる人質の方へ。

「あああああ!?痛い痛い痛い痛い!?助けて!!」

「アハハハハハハ!大丈夫大丈夫、簡単には死なせないさ。アハハハハ!」

悲鳴が次々あがっていく。

動けない漣はそれを、朦朧とする意識の中で聞き続ける。

(・・・まだ・・・でもこれ以上は・・・。)

漣の両手が炎になって、消えた。


「ん?うぁ!?」

そして男の背後に回していた炎から、その両腕が槍を振るう。

男はすんでのところで致命傷は避けたが、右肘から上が吹き飛んだ。

「この!よくも!よくもよくもよくもよくも!俺の右腕を!!!死ね!何度でも死ね!!許しを求めて俺に詫び続けろクソアマ!!!」

目へ、耳へ、口の中へ、至る所へ。

男は魔弾を放ちまくり―

漣は地獄の激痛に襲われた。



この国に来て、十賢人の生き残りの話を聞いて。

気が付いたことがある。

内にあるその魂の、眠りが浅くなったということに。

もし、今その人の能力を使えば、起きてしまうだろう。

起きて、またこの絶望の世界を眺めさせてしまうだろう。

(それでも・・・誰かを犠牲にしてまで起こさなかったら、君は悲しむだろう?)

たった1人、犠牲にするべき覚悟は決まっている。

それは舜だけでなく、その人もそうであるように。

「クソっ!お前が殺したんだからな!!」

女は人質を犠牲にしてまで向かってくると思い、せめて最期にその人質だけでも殺さんと魔力を放った。

「ひっ!?」


「復讐鬼!」

怯えた人質から黒い魔力が現れる。

「なんだ!?」

「そいつの持っているお前への恨みを魔力化させてもらった。クク・・・アハハハハハ!さあ、死ぬ準備は出来た?」

黒い羽根を生やし、高笑いするそれはさっきまでの舜とは違って見えた。

(まずいまずいまずいまずいまずい!!)

さっきまでは死んででも人質を殺そうとした女が、死にたくないと言わんばかりに必死に逃げ出す。

「逃がすとでも・・・―!」

飛んで追い掛け、その右手にある黒い刃だけの剣を薙ぎ払おうとして・・・。


左の剣で反対からの魔力と斬り結ぶ。

「っう!」

中途半端に振るわれた右手の剣は、女の左腕だけ斬り飛ばし―逃がしてしまった。

「舜・・・君に変わった方がいいかい?」

そう呟いた少しあとに、羽が消える。

舜はさっきまでの刃とは違い、いつもの諸刃の剣を出して構える。

意識を集中させ、右に、左に、後ろに素早く動くそれの動きを、動かずに判断する。

(正面・・・!?)

剣と蹴りがぶつかり合う。


「よう・・・さっきぶりだな。」

「さっきは逃げた割に余裕見せすぎじゃない?襲うのは正面からなんて、ライガ。」

相対した2人は構え直す。

「はん・・・邪魔なのが消えたから殺しに来ただけだ。ただの挨拶の一撃防いだだけで、随分饒舌になるじゃねぇか。」

「変なのに寄生された上で弱くなってちゃ、生前のライガが可哀想だからな。」

ジリジリといつ仕掛けるか動くライガと、ピタリと止まって動かない舜。

風が少し音を立てた時、それをゴングとして2人の戦いは始まった。

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