210話 内通者探し
「プローチさん、無事?」
「ええ・・・こっちは雪乃ちゃんがいてくれたから。スタッフも5人とも無事よ。」
「・・・そうか、そうだよな。簡単な事を見逃していた。」
プローチの発言を聞き、舜は何かに気が付いたように呟いた。
「スタッフ5人、呼んでくれる?」
「?ええ、いいわよ?」
プローチはバタバタと急ぎ足で呼びに行く。
舜は集まった5人を鋭い目で見る。
「プローチさんとこのスタッフ、可愛い子ばっかりですよね。1人は・・・プローチさんと同じだけど。」
「ええ、彼もアタシに似て美しいわね。アタシも負けるつもりはないのだけど!」
漣がプローチと会話する中、照れたように1人―ややガタイのいい女装してる男が照れる。
「他は女の子かー。どういう経緯で・・・。」
「違うよ、漣。」
舜は漣の話を遮る。
「男だ。・・・・・・。」
「えっ!?そうなの!?だって・・・いや確かに・・・?でもでもでも!この2人は女の子だよ!いやでも・・・?」
「ひっ!?」
驚く漣が指差した2人を、舜は更に睨むように見る。
「ちょっとちょっと、怖がってるじゃない。どうしたのよ?」
「・・・プローチさん、こっちのとは・・・どういう付き合いで?」
「へ?いやまあ最初はアタシ一人でやりくりしてたんだけど。オカマが働いてると聞いて、ぜひ自分もとみんなが集まってくれたのよね。その子も、女の子として働けるなら是非って来てくれた子よ。」
舜は鋭い目つきをやめ・・・剣を出して突き付けた。
「何やってるの!?キャッ!?」
「あの人の邪魔を・・・しないでください。」
間にプローチが割って入ろうとする・・・が、雪乃にその腕を引っ張られ、尻餅を着いた。
「あ・・・あの・・・私が何か・・・?」
「お前、英雄の子孫のスパイだろ。」
ビクッと女が反応する。
「そいつらの事を話した客だけ殺せた・・・冷静に考えれば内通者がいて当然だった。・・・男と偽って働く理由にもなる。」
「・・・!・・・わ、私は・・・男で・・・。」
「何人も何人も殺してきた。男女の骨格差位見抜ける位には、沢山の死体を見てきてる。」
怪しまれた従業員は怯えたように首を振り、逃げようとして―舜に腕を掴まれる。
「いや・・・!やだ・・・!!!」
必死に振り払おうとするが、ビクともしない。
「殺されるか全てを話すか・・・選んで。」
「は・・・話します・・・だから許して・・・。」
そして女はえんえんと泣きながら、全てを話した。
「家族を人質に取られて仕方なく・・・そうだったのね・・・。アタシ、そんなに前から目を付けられてた・・・。」
「ごべんなざいプローヂさん゛!私・・・私・・・!」
「いいのよ、むしろよく話してくれたわハルちゃん。何とかするわ・・・。この人たちもいてくれる事だし、ネ?」
舜は話を聞いてから考え込んでいる。
「・・・それにしてもよく分かったわね。アタシですら女の子だって見抜けなかったわ。」
「ああ・・・それは・・・本当はなんとなくでしか見分けられないよ。それと、もし本当に女だとしても別の理由があるかもと思いつつ、吹っかけた。」
「・・・もし違ってたらどうしたのよ?」
「その時はね・・・。」
舜はふっと笑う。
「全力で謝ってた!そりゃもう、全力で!!」
「あなたねぇ・・・。」
その時、ハルの電話が鳴る。
「ひゃい!あ、はい!はい!え!?私が・・・?プローチさんを・・・?・・・え?無理です!無理無理!・・・ひっ!?はい、はい・・・わかりました・・・やり・・・やりますぅ!はい、はい、はい分かりました・・・。」
ガタガタと震えながら、ハルは泣き腫らした目から再び涙を流し始める。
「どうしたの!?」
「あ・・・あの・・・プロ・・・プローチさんを誘き出して・・・人質にするよう言われ・・・言われまぢた・・・!」
「・・・大丈夫よ。分かったわ、アタシが行けばいいのね。」
プローチはハルを優しく抱き締めた。
「・・・使えるか?・・・いや、誰か付いてくるかも位の頭は相手にもある筈だし・・・。・・・いつ、どのタイミングとかは言われた?」
「えっと・・・今から暴れてあなた達が出払ったタイミングで・・・と。」
「・・・6人のこちらを誘き出す簡単な方法は6箇所に分断する事。1箇所はここの防衛で2人が出た後も従業員を守る為に残らざるを得ないから、実質5箇所・・・。5人だと誘き出したプローチさんの元に来る人手が足りない。だからやはり・・・英雄の子孫側も残り5人じゃない・・・か。」
音がバラバラに遠くから鳴り始める。
「始まった・・・プローチさんを助けに行けるのは誰かを倒せた後・・・。」
「いいわ、行って!アタシ1人のために犠牲者を増やすべきじゃない、今は大きな被害が出るそっちが第一優先よ!」
「・・・行こう、みんな!誰か一人でも出来るだけ早く倒せれば・・・!雪乃はここを・・・!」
「残るのは私がやる。敵を早く倒したいのであれば雪乃は行くべきで、何よりプローチさんが居なくなったあとのここは攻撃対象になるかは分からないんだ。たとえ誰か来ても、竜族のプライドにかけて食い止めてやる。だから、任せろ!」
「咲希・・・分かった、任せたよ。1番大きそうなのは俺が行く!怜奈は遠くのやつに!」
「私が左のに行きます!漣ちゃんは右へ!雪乃ちゃんは1番近くので・・・!」
2人の指示に従い、それぞれがそれぞれの戦場へと駆け出していく。




