206話 plan the structure
「的な感じで・・・モグモグ・・・なんか来てたよ・・・うまうま・・・。」
「そう・・・。」
舜は真剣な眼差しでじっと漣を見ていた。
「・・・・・・オムライス、美味しい?」
「うん!!!」
「よかった。」
ふんわり笑う。
「・・・なんか、大物ねぇ。下手したら四凶とも戦争になるというのに、この落ち着きよう。」
「今は・・・俺より慌てるべきはプローチさんじゃないかな。」
「ン?」
意表を突かれたように、プローチは固まる。
「この場所、ローグに思いっ切りバレてる訳だけど。」
「・・・ヤダ・・・・・・ヤダ!?そうじゃない!ど、どうしましょ!?お客様と従業員の安全をどう確保すれば・・・!」
取り乱すプローチを横目に、舜は頭を悩ます。
「どうしようかな・・・俺たちだけが目的ならここを離れるが・・・1度でも匿ったとなる以上、離れても標的になる可能性はあるし・・・。」
「気に病まなくてもいいわ。アタシが自分から首を突っ込んだんだから、アタシの責任なのよ。」
悩む舜を見て、プローチは優しく声をかける。
「・・・うん、解決策はやっぱりとりあえず1つ、かな。」
「あ、なんか嫌な予感。」
「なにかされる前に・・・殺す。」
「あー・・・やっぱりそうなる?愛花ー、愛花もこっち来なよ。」
「どうしたの?漣ちゃん。」
「いやさ、さっき来てたスーツの人がローグだったんだけど。」
「・・・それは、あー・・・ここがバレてるなら先に仕掛けると?」
「話早過ぎない?」
「舜兄の思考ならまあ・・・分かりますから。しかし・・・敵はあんまり増やしたくないのも事実ですよね?舜兄。」
愛花はひょいっと舜の方を見た。
「ローグの情報はどの位集まった?」
「規模はまだ正確には分かりませんね。」
愛花は舜が最も欲してるであろう情報から出す。
「英雄の子孫との対立関係は?」
「ちょこちょこ争いが見られる程度だと。ローグ側が割と引いて見守ってるところはあって、たまに非道な行動が目立つ個人が英雄の子孫に襲われるものの位と。」
「先に争わせる路線は難しいかもと。・・・うーん。」
単純な力押しでは被害が出るかもしれない。
敵の規模次第ではせめてもの反撃で関係ない人が襲われるかもしれない。
「・・・使えるかは分かりませんが、英雄の子孫について1つ、情報がありますよ。」
そう悩んでいた舜に愛花は手助けをする。
「アリサさんの言っていた、もしかしたら1人は既に英雄の子孫から離れたかもという件ですが・・・。その通り、1人はこの国をほんの少し離れた洞穴に何人かの人を連れて逃げたそうです。」
「逃げた・・・。」
文字通り、使えるかもしれない情報である。
「会いに行くか。もしかしたら戦いになるかもだけど・・・それでも何か助けになるかもしれないし。」
賭けではあるが、英雄の子孫と縁が切れた、仮に敵対してもただ1人の相手。
複数人を少ない情報で殴り込むよりは遥かにマシな賭けである。
「もし、ここに何かあった時ように3人で行こうと思う。それで、仮に攻め込まれた時に守る戦法を取りやすいのは雪乃と・・・愛花と漣かな。・・・留守番頼んでいい?」
「出来れば私は・・・舜兄と一緒に行きたくはあるんですけど・・・。・・・敵が大勢の可能性がある方に居た方がいいってことですよね。」
舜はこくりと頷く。
「分かりました。帰り、待ってますからね。」
「私もリョーかいっ!」
「ありがと。」
舜はお礼を言ってから立ち上がる。
「他の人にも確認してくる。」
そう言ってまず厨房に戻った舜を2人は見送る。
「1人だけのとこからまず行こうって事だから、大丈夫だよ愛花。」
「分かってはいるんだけどね。それでもやっぱり、もしかしたらの事を考えて傍に居たかったなって。」
「そのもしかしては・・・舜くんが殺しちゃった時の方?」
「・・・・・・。」
その無言は、その心配そうな表情は、どんな言葉よりも強く肯定していた。
いくら人殺しが日常になってしまった存在だとしても。
その心が慣れた訳ではないはずだと言わんばかりに。
「まあでも・・・舜兄の魂胆も分かるんですよ?最近元気がなかったりした咲希ちゃんを頼って、連れて行くことで自信を持たせてあげようって。」
「あー・・・まあその意図はありそうだけど・・・。咲希は咲希でちゃんと聡いとこあるから、連れてくだけじゃ駄目だろうね。分かってるかな?」
「・・・多分、分かってない。あと伝え方も上手くいくかどうか・・・。」
「まあ逆に想いが伝わりはするから、それでどうなるかだねー。」
「という訳で咲希!力を貸してくれ!」
「・・・・・・。」
咲希は腕を組んで舜を冷ややかにみている。
「咲希?・・・。咲希!力を―」
「さっき聞いたわ。たった一人の敵のために私に借りる力なんてないだろお前に。」
「それはそうかもしれないけど!」
「せめて否定しろよ。」
愛花の心配通り、不器用すぎてこうしてあげようと思った時にあからさま過ぎてしまう舜であった。




