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愛の歌  作者: Dust
9章
209/228

205話 決断

酒場の近くにある幾つかの建物。

空いてる部屋は好きに使っていいと言われ―

空きはまだまだあるのに、当然のように舜と愛花は同じ部屋にいた。

「言い方・・・間違ったかな。」

「いいえ・・・意図は伝わってますし、きっと決断してくれますよ。」

「そう・・・だといいんだけど。」

寝間着の愛花はベットに入り、奥に詰めて舜に入るよう、ポンポンとベットを叩く。

舜は誘われるままに同じベットの中に入った。


「加護は寝て待て!ですよ!」

「果報ね。」

舜はそのまま、いつの間にやら眠りについた。

愛花の隣であれば、うなされる事もなく安心してすぐに寝れた。

「ふふ。・・・どうか今回、あなたが手を汚す事がありませんように。」

愛花はその横顔を愛おしく眺めたあと、祈りを込めて頬にキスをした。


翌朝。

舜達はまたプローチの酒場へ集まっていた。

夜とは違い、舜達と酒場の関係者以外他に人は居ない。

そこにプローチがアリサを連れてきた。

「・・・決心しました。」

「・・・そう。良かった。」

舜は優しい声で答え、続きを待つ。

「英雄の子孫・・・彼らを・・・。」

もうアリサも逃げもしない。

真っ直ぐ舜を見つめたまま、キッパリと言い切った。



「殺してください!」

「・・・・・・。」

しばらくの沈黙。

ぱちくりと舜は瞬きをする。

「えっと・・・。」

「私思ったんです!ただの昔馴染みの為に命をかけるなんて頭おかしいって!」

「アリサちゃん、言葉を選んで。あなたの目の前にいる人は、あなたの為に命かけてくれる人なのよ?」

「おか・・・しい・・・。」

舜は困惑したまま時間が止まっていた。


「えっと・・・私変なこと言っちゃいましたか?」

「いや・・・吹っ切れ方が予想外だったというか・・・え?殺すの?・・・他に・・・方法とか・・・。」

「あなたが殺すしかできないって言ったんじゃないですか!」

困惑した舜の代わりに雪乃が口を開いた。

「・・・その方達を殺す事を望んでる人は―この国にどのくらいいるんですか?」

「そうねぇ・・・殺すまで行くかはアレだけど、ほとんどの人は居なくなって欲しいとは思ってるわよ。」

プローチが答える。

「では、英雄の子孫のやってきた悪行ややり方を教えて頂けませんか?情報は武器になりますので。」


「という訳で、私達はここから出ることも出来ず、逆らう事も出来ず、自由もなく不便に暮らしてるんですよ!」

「・・・なるほどね。治安を守るためにルールで縛り、そのルールに少しでも違反したら殺す・・・そしてそのルールも厳しいと来た。」

アリサが熱弁を振るう。

「じゃあ・・・止めるのも殺すしか出来なさそうだから・・・・・・殺すかぁ。」

「よろしくお願いします!」

「うん・・・。」


「えっと、それで場所とかなんですけど・・・私が知ってる時代の情報が役に立つかどうか・・・。」

「最悪ルールを破れば向こうから来てくれるかもしれないけど・・・英雄の子孫もだしカオスの命令を受けた連中の情報も欲しい所ではあるな・・・。」

ポンとプローチが手を叩く。

「アタシ達の持ってる情報だけじゃ足りないけど・・・任せなさい、ここは酒場よ。色んな人が集まるわ。あなたたち、今晩情報集めついでにアタシの仕事を手伝わない?」

「手伝う・・・?」



「いらっしゃーい!空いてる席へどうぞー!」

メイド服の漣が元気に案内する。

「へー姉さん、新しい子を雇ったの?」

「期間限定雇用よ。今日はカワイイ子達の接客といつもは出ない素敵な料理が出るしかなり安くしてあげるから、色んな人にクチコミお願いね♡」

場末の酒場とはいえ、安価で滅多に食べれない料理を食べれるという機会。

小さな国だからこそ、人々の繋がりが強くあっという間に色んな人に伝わり。


「へい姉ちゃん!こっちビール2つ!」

「こっちにも!」

「くっ・・・!」

「おいおい姉ちゃん、笑顔足りてないぞ!他の子に愛嬌で負けるなー?」

「うるさい!くそ・・・なんで私までこんな格好で・・・!」

「ほら、咲希!笑顔笑顔!」

「そうだそうだ、そこの漣ちゃんの言う通りだ!」

忙しく、騒がしくなっていく。

「ふんふん、なるほど。カオス配下は・・・。」

その間にも、私服のままの愛花は色んな人の席を回り話を聞いていく。


「・・・タコの唐揚げ、じゃがバター、ホルモン焼き。」

「あいあーい!」

怜奈が出来た料理をお盆に乗せて並べては、受け取った紙のメニューを読み上げる。

「・・・あ、とりあえず豚肉使った味の濃い系のオーダー。」

「お、来たね。俺が作るよ。」

純粋なオーダー以外にもどんなのが食べたいのかを聞いて料理を作っていく。

「・・・あと、出来るだけ辛いの。」

「うっ、辛すぎるのは作んないからなぁ・・・。」

「そちらは私が。」

厨房は舜と雪乃が"普段食べれない目玉料理"を担当している。

「ふふ、ちゃんと料理には愛情を込めてね。」

「当然!食べる人がどんな人かは知らなくても・・・料理そのものへの愛で補える!」

「舜さんの役に立つ、そこに私の愛はありますので。」

「いいわね、2人とも!愛おしいわ!」


そうやって時間は過ぎていき―

騒がしかった店も落ち着いた頃。

「いらっしゃいませー!空いてる席へどうぞー!」

「こんばんは店員さん。少しいいかしら?」

「はい!なんでしょーか?こちらお水でーす!」

水を置きながら、訪ねてきた女性を漣は接客する。

良さげなスーツを着た、他の客とは少し雰囲気の違うショートカットの女性。

「今日はメニューにない料理も食べれると聞いたのだけど・・・オススメって何かあるかしら?」

「あ、なら舜くんのオムライスは美味しいですよ!」

「・・・では、それを1つ頂戴。」

「では少しお待ちくださいませー!」


「舜くーん!オムライス1つ!ついでに私の分もでふたーつ!」

「はーい。そろそろしまいかな?」

舜は慣れた手つきで先にお客様の分を作り出す。

「じゃあ、お願いね。」

「はーい!」

完成したオムライスを手に、漣は客の元へ戻って行く。

「お待たせしましたー!オムライスでーす!」

「有難う。・・・うん、確かに美味しいわね。」

「へへ、ありがとうございまーす!」

漣はお礼を言いながら、他の席の片付けへと移る。


「美味しかったわ、会計をお願い。」

「あ、はーい!」

漣はわたわたとレジへ走っていく。

「それじゃあお釣りはー・・・。」

「お釣りは要らないわ。でも作った人に伝えといて。」

女はその目をぎらつかせた。

「オムライス美味しかったと・・・部下の2人がお世話になった代わりに来た、と。ね、漣さん。」

「・・・!」

名乗ってない相手に名前を言い当てられ、漣は身構えたものの女はそのまま去っていった。

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