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愛の歌  作者: Dust
8章
202/229

198話 その想念―自惚れ③

「なんだぁ!?」

「なんだと思う!?」

「さっきのオオカミ女か!」

ビャクシは手に持った空の容器を捨てた。

「ぐっ・・・うぉらァ!」

オウコツはやっと鉄骨をへし折り動けるようなると、ビャクシを見る。

「チッ、邪魔なものをぶち込みやがって・・・。」

そう言いながらバキバキと身体についた金属を折って捨てていく。

「テメェも俺好みではねぇが・・・俺様の怒りを癒してもらうぜ!まずは暴力でよォ!」

「咲希!今だ!!」


「あ゛あ゛!?」

後ろから白い粉が大量に舞い散る。

オウコツが振り向くと袋を持った咲希とマッチを持った舜がいる。

舜はニヤッと笑ってマッチを舞い散る粉に近付けた。

「なっ・・・!?」

カッと大きな光と音が鳴り響くと共に、瞬時にその炎が広がり、爆発する。

「ガァァァァァァ!!!!」

絶叫と共に、オウコツは燃え上がる。

オウコツにかかった液体―油がより火を強くする。


「この程度で・・・この程度で終わってたまるか!俺様は最強なんだ!俺様が!!」

黒い魔力が、オウコツの想念に強く共鳴する。

「ふぅ・・・炎すら・・・俺様の支配下だ。」

そして、燃え上がった炎すら、己の力へと変えた。

「新たな武器をありがとよ!」

オウコツはまずビャクシへ向けて炎を振りまく。

逃げられないよう、左右背後を先に覆ってから炎の斧を取り出し、ぶん投げる。

だが、突然にビャクシを逃がさんとしていた炎がその斧の前に躍り出る。

「あ゛?」

炎が斧を弾く。

「はぁ、気持ち悪かった。漣ちゃん復活!」


「チッ・・・!?オオカミ女はどこ行きやがった!」

「チェック。」

漣の姿と炎に隠れ、近付いていたビャクシがオウコツの中へ手を突っ込んで心臓を掴む。

ブチブチと音を立てながらそれを引き抜いた。

「返せぇ!!!」

「あらやっと!」

オウコツの腕を躱しながら、ビャクシはその心臓を上空に投げだ。

「くっ・・・!」

オウコツは腕をのばし、落下地点へと向かうが・・・炎が心臓を包み込む。


「無駄だ!魔力での攻撃は通用しねぇんだよ!諦めろ!!諦めて俺様に殺されろ!」

「無駄じゃないよ。」

炎から現れた漣が、それを別の方向へ投げ上げた。

「何をしようが・・・!」

オウコツの声が詰まった。

投げた方向には片手で銃を持った舜と、それを後ろから両手で抑えてる咲希が見えた。

「何を使おうが魔力で出来たものなど!」

「撃つ!」

舜の掛け声と共に、咲希は力を込める。

もう1つ、女の手が支えてくれたような気がした。

反動を抑えられたその弾は、いつぞやのように綺麗に狙いを穿ち―

オウコツは最期の声もあげることなく、サラサラと崩れていく。


黒い生命体がその身体からどんどん飛び出していく。

「変身!切り開きし軍神(ウプウアウト)!」

その飛行体をウプウアウトがどんどん噛み殺し、引っ掻き殺していく。

「最後のいっ・・・!?」

「変身、アーガトラーム。」

今まさに最後の1匹を蹴散らそうとしたところで赤の鎧が邪魔しに入る。

「アラタ・・・!」

「正義を執行する。」

そしてそのまま他の者には意を介さず、舜の元へ。

「付いてこい。」

そう述べるとアラタはそのまま走り去っていく。


ウプウアウトはもう届かない最後の1匹を見つめた後、舜を見る。

「どうするの?」

「行くしかないよ。多分俺一人で。」

わざわざここで戦わず、移動したということはそういう事だろうと舜は予測する。

そして、それを断ればかつて無関係の少女を撃ち殺そうとしたように―何をしでかすか分からない。

舜は返答の後、悩む素振りも見せず、そのまま走って後を追った。

「・・・とりあえず、怪我人の処置からしようか。」

人の姿に戻ったビャクシは、倒れてるテイパーや他2人を見て、そう言った。


「纏魔・・・原点(ゼロ)!」

2人はアトラクションを足場に、上空を移動しながら追いかけ合う。

「どこまで行く気だ!」

「・・・・・・。」

アラタは舜を黙って一瞬見つめた後・・・動いているジェットコースターの上に飛び乗った。

舜もそのわずか後に、そのジェットコースターの上に飛び乗る。

「・・・・・・。」

「・・・いつまで黙ってるつもり?決着をつけに来たんだろ?」


「世界が貴様を敵だと叫んでいる。」

「は?」

「貴様にとっての正義とはなんだ。」

舜は鋭く睨みながら、口を開けようとするがその前にアラタが続ける。

「貴様は己の目的の為なら犠牲を厭わない。様々なものを巻き込むことをよしとする。」

「だから、殺すってか?・・・正義を語るくせに俺とやること一緒なんだな。」

「否!」

アラタは叫んだ。


「全ての正義がそうだ。正義はいつだって、誰かにとってのものでしかない。」

「・・・驚いた、同感だな。・・・それで?」

「正義など傲慢なものでしかないのだろう。だからこそ、この僕は傲慢を司った。・・・だが。」

アラタは1度空を見上げてから、舜に向き直す。

「だからこそ!正義の名において、傲慢の名において、世界の敵であるお前を殺さねばならない!」

「そうかよ、来いよクソヒーロー!」

相重纏魔(そうえてんま)正義の狂信者(ダークヒーロー)

アラタの鎧に入ってた黒のラインが、刃のように関節や肩、背中に突き出た。

ジェットコースターが降り始める。

それと同時に、アラタは下にいる舜へ襲いかかった。

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