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愛の歌  作者: Dust
1章
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1話 捻れた過去と

暗闇の中の一筋の光

誰も幸せにならないハッピーエンド

―これは英雄譚か、それとも哀れで変哲のない人間の話か

それとも英雄とは功績を残せただけで変哲のない人間だったのか


雨が降る

いや、降っていた

報われなければ、人は簡単に壊れるものだ

頑張っていたと自分で言わなきゃ誰も気が付かないのに

自分で言ってしまえば報われる事などない

裏での献身がそんなに美徳なのか

周りに気を使ってしまえば

それをやめた時落胆されてしまうのは何故なのか


痛い

ただただ痛い

それ以外何も思おうとしなかった

いや、それ以外のことを思いたくなかった

だけど思ってしまった

憎い

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

何故こんな目に合わないといけないのか

だから僕は―


12月1日、ある部屋にて。

「・・・ああ、一瞬足りとも忘れるものか。」

目が覚めると共にギラついた目で男は世界を見る。

その目を憎しみだけが支配する。

毎日毎日あの日の痛みと絶望と後悔と―

あらゆるものが彼を抱きしめ離さない。


この男―舜は魔力者による実験のモルモットであった。

しかし最後の実験より前の記憶は存在していない。親の顔すら、知らない。

ただ分かるのは、彼にある最も古い記憶が悲惨なものであり、彼がそれ故に復讐を毎朝のように誓っているというだけである。

現在彼がいる国、アウナリトの発表ではローグによる実験を止めんと大戦が置き、唯一の生存者として彼が存在してるということ。

それを哀れんだアウナリト前王、ラースに養子として引き取られ18まで生きてきた。


「・・・今日位はいい夢見たかったな。」

そう呟いた時にはその目に人間性が戻っていた。

舜は大きめな眼鏡をかける。

眼鏡をかけてはいるが視力は良好、要するに伊達メガネだ。しかし似合っている訳ではなく、そもそもお洒落の為につけてるわけでもない。

というのも他人を直接見るとその人間がねじ曲がるようなそんな不思議な感覚にとらわれてしまう特殊な体質の持ち主だった。正確にはちゃんと見えてはいるのだがその周りの空気がぶれるような感覚、そしてそのねじ曲がりは人によってマチマチであまりに大きいねじ曲がりを見てしまうと気分が悪くなってしまう。

そのためそこまで似合ってない、大きい眼鏡を常にかけている。


10年前、突如現れた魔法を使うもの―

武器を何も無いところから作り、魔力を固めたものを飛ばし、身体能力も向上させた人間達の登場により世界は混沌の中にある。

そのためこの国、アウナリトでは魔力を持ち、性格的に問題ないものを集め軍隊を作っている。

また魔力を使うものは何故か子供にしか出ていないため、入隊出来ない18歳前未満の人達は候補生として学校で育成をさせられる。

その候補生たちの入隊の日が今日であり、同い年である舜は候補生じゃないものの特例として入隊するのだ。


舜が希望するのは特殊部隊、希望する者の中から優秀なもの5人を隊長に、次に優秀な5人を副隊長に、そして各隊あと3人ずつ隊長にスカウトして作られる同世代のみの部隊。

首都郊外でとローグ討伐を自由に認められている部隊だ。

「・・・選ばれるかなぁ。」

悪夢でかいた寝汗を流すためシャワーを浴びながら舜は呟いた。


起きた時とはまるで人が変わった今でも、彼は復讐心に燃えている。

特殊部隊以外、命令無しにまともにローグと戦える隊はない。

舜は特殊部隊に希望したものの候補生で無かったため知り合いがいない。

勝手に外に出て、無能力者を虐げてる所を見かけたローグを倒し、王族としての自覚があるのかと世話係の爺やに怒られるという実績は何度もやり噂にはなっている為、何とか選ばれればいいなと思っている。

それと同時に選ばれなければ今まで通り勝手にやるかとも思っていたが。


一通り、準備が終わると舜は寝室を出た。

寝室を出ると7~8人は座れそうな机がある部屋になっている。

「おはようございます、坊ちゃん。」

「おはよう、爺や。」

そこの片隅に立つ世話係はとても優秀で既に朝食は用意されているのだが―毎朝、いつ部屋を出ても作りたてで温かい料理があるのだった。


「いよいよ隊長になる日ですな、坊ちゃん。」

「ただの平隊員だよ。それにすらなれるかも分からないけど。」

「坊ちゃん、さすがに王族に隊長以外はさせられないとの事で隊長に就任することになったのですよ。」

朝食を食べる舜の手が止まる。

「・・・聞いてないけど。」

「お伝えしたら特殊部隊になるのを辞めて勝手に外に出るとか言い出しそうでしたのでお伝えしませんでした。」

普段からニコニコしてる老齢の世話係は相変わらずその優しげな表情を崩さずとんでもない事を言ってのける。

「いやいやいや、いやいやいやいや。爺や、冗談だよね?そんな冗談で驚くほど舜さんは甘くないよ。」

内心嫌な予感がしつつ、舜は何とか作り笑いをする。

爺やはニコニコ笑うだけだった。


「・・・え?本当?だって、候補生達って散々辛いトレーニングしながらようやく勝ち取ろうとしてるのに?そんな中でポンと王族だからって理由で隊長に?それも形だけの王族が?」

爺やはニコニコしている。

「いやいやいや俺自身すらそんな特別処置の隊長認めたくはない。あ、今回だけ6つ隊作るとか?溢れる人達も入れるけど・・・それでも副隊長やるほど成績良かった人が可愛そうだし平隊員もこんな隊長に選ばれたいと思わないと思う。」

「今回も5つの隊ですよ。」

「そんな中隊長したくない!」

「諦めてください。」

舜はガックリうなだれた。


特殊部隊の隊長、副隊長候補は城を入ってすぐのホール部分で発表される。

もしかしたらやっぱり平隊員として発表されてるかもしれない―そんな淡い願いをしながら重い足取りを何とか運びホールへ向かう。

その途中、黒髪の少女がいた。

こんな場所で珍しいなとその少女を眺める。

とても綺麗な子だった。恐らく舜と同い年、背は160を少し超えてる程度だろうか。美しく長い黒髪には艶がある。

思わず見とれていたら目が合った。


慌てて視線を下げ、その前を通り過ぎようとした時

「・・・待って。」

と声をかけられた。

「・・・覚えてる?」

予想外の質問にワタワタする。

「えっといや、そのごめん。実は昔の事の記憶が無いんだ。実は同郷だったりするの?」


ドキドキしていた。それは絶世の美少女に話しかけられたというのもあっただろうがそれ以上に無い記憶の情報を知ってるかもしれない人にあったから。

と舜はそれっぽく思い込もうとしたが―いや決してその思いも嘘ではないが単純に人見知りを発動していただけでもあった。

「・・・ん。」

そうとだけ言うと彼女は舜とは反対方向へ去ってしまった。

(同じ人見知りだったのかな。・・・あれ?あっち行ったけどあっちって何があった?)

そう思い、振り返り声をかけようとしたが―いなかった。

舜は?マークを頭に浮かべたままホールに向かうのであった。

読んでいただきありがとうございます。

今回は世界観や主人公の説明回ですね。

ちゃんと分かりやすく伝えられていれば僥倖です。

登場人物が増えていけばここのあとがきは登場人物たちの掛け合いによる次回予告や登場人物の身長などなどの設定を書いていこうと思っています。

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