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愛の歌  作者: Dust
8章
198/228

194話 自惚れVS漆黒の姫

「随分広い場所だな・・・まあこうすりゃすぐ見つかるか。」

遊園地に入り込んだオウコツはその腕に斧を創り出す。

「フンッ!」

振り払った斧から放たれた衝撃で、近くの観覧車が壊れ崩れていく。

「キュー!」

「キューキュー!」

使い魔が長い鼻を鳴らしながら抗議するように数匹出てくる。

「小虫か・・・準備運動にすらなりやしねぇが。」

オウコツは邪悪な笑みを浮かべて斧を構えた。


次の瞬間、炎が舞い踊る。

「あん?誰だ・・・女か。まだ若いが・・・いい女だ。俺のものにしてやってもいいな。」

桃色の髪が風に靡く。

綺麗な黒いドレス―漣がオウコツの前に立ち塞がった。

「破壊行為を辞めるつもりはない?」

「ねぇな。」

炎が槍を形作っていく。

「はん!やめとけよ、俺はそこらのガキに負ける程弱くは―おっと。」

漣の突き出した槍の穂先を魔力を込めた腕を滑らせ軌道を変えさせる。

「突きの速度は悪かねぇな。まあいい、魅せてやるか俺様の実力を!」


漣は素早く移動をしながら、右に左に槍を突く。

「ハッハッハ!まるで羽虫のようだな!それで何時まで体力が持つ?」

ぶんと縦に振られた斧を避け、漣はその振り下ろされた腕を貫こうとするが―

「効かん効かん!さあどうする!」

漣の攻撃はオウコツの身体を貫けない。

一方でオウコツの攻撃は余裕もってかわされているのだが・・・調子に乗っているオウコツはその事に気が付けない。


自分の強さに絶対の自身があるからこその隙。

漣は冷静にそれを見定めようとする。

殺し合いの天才である舜に戦い方を教わりながら、様々な経験を経た彼女は、彼女ならではの才能が目覚めていた。

"無意識の中にある(アンコンシャス・)正解(アンサー)"

彼女は今、策にはめようとしてる訳では無い。

ただ無意識の中で、自分の力を見せ切らないこと、そして相手の隙を誘う事を選んでいた。

(今!!!)

「ごめんな・・・さい!!」

「ガァ!?」


漣の槍がオウコツの胸を貫いた。

オウコツはその槍を掴み砕いたあと、傷口を抑えてヨロヨロと下がる。

「あぁ・・・思い出してきたぜクソッタレ!」

(何か・・・マズイ・・・!)

漣が再度槍を構えるが・・・オウコツの周りに魔力の渦が巻き起こる。

「くっ・・・!」

何とか攻撃せんと投げつけた槍は魔力の渦により霧散した。

「何が自惚れだふざけやがって・・・。俺様はオウコツ、俺様よりつぇぇやつはこの世に居ねぇ!ラウンド2だ羽虫!四凶最強の俺様にどう立ち向かうか!?」


魔力の渦をかき消し、ヘッと笑ってオウコツは叫んだ。

「纏魔ァ!傲狠独歩(ごうこんどっぽ)ォ!!」

肘の先、膝の下、肩に赤いアーマーが付く。

振り上げた斧を漣目掛けて勢いよく叩き付ける。

「っ・・・ぁ!?」

槍で受け止めようとして―

斧が通る直前に、受け止めようとしてた部分がスッパリと消えた。

斧は悠々とその何も無い空間を通り抜け―

漣の身体も同じように、斧が通る前にそこの部分が消え―

ここを振り切ると決めた斧は、何者にも邪魔をされずそのまま振り切られたのだった。


斧が通り過ぎた後に漣の()()()が地面に落ち、後を追うように()()()も落ちた。

「・・・しまったな、この殺し方じゃ身体を使う気になれん。あまりに強すぎる力というのも困ったもんだ。」

そう吐き捨てたオウコツの後ろにバレないよう火の粉が回り込む。

背後の火は少しづつ大きくなり、その炎から漣が現れる。

(駄目か・・・!?)

「なんかまだ隠してると思ったけどよぉ!」

その漣にオウコツは振り向きそのまま斧をなぎ払う。

「いい顔だ。歪んでるということは痛みはある・・・なら痛みで動けなくすりゃいいだけの話だ。哀れだなお前、死ねた方がマシな目に合わされるのがよ!」


「無駄だ無駄だ!俺様の攻撃が誰にも止められないように、俺様の受けは誰にも突破出来ん!」

漣は暫く殺されながらも攻撃を仕掛けるが、その斧で受けようとされるだけで、当たる直前にその部分が消し飛び刃がどこかへ飛んでいく。

「はぁ・・・はぁ・・・!」

「いい顔だ、唆るぜ。殺しても生き返るならやってる最中に殺してもいいって事だ・・・色んなアソビが出来ちゃいそうだなぁ!」

「この・・・!」

漣がまた槍を薙ぎ払い、斧に消され先端が吹き飛んでいく。


「何度やるつもりだ?もう地面には何個も槍の刃が・・・あ゛?なんでんなもん残してやがる。」

「もう、遅い!」

いくつもの槍の先端が巨大な炎の渦巻きとなりオウコツの周りを回りながら囲う。

そしてその渦がぶつかり合い、オウコツを巻き込んでさらに巨大な1つの竜巻へと。

「ぐっ・・・ぬぅ・・・だがこの程度の火力くらい・・・俺様には―ギャッ!?」

炎から漣が現れ、斬りつける。

「チィっ!?」

慌てて斧を振るうが・・・一瞬その部分の渦が消えただけですぐに炎が広がってしまう。


炎舞・(えんぶ・)縷擻斬裂(るそうきりさき)黒桜姫(こくようのひめ)!」

炎の竜巻に焼かれながら浮かび上がった身体が、幾度も至る方向から斬り付けられる。

そしてその竜巻の中から漣が現れると共に竜巻は消え―

血だらけの肉塊が重力によって地面に叩き付けられた。

「良かった・・・炎になれるのバレてからそんなに経たずに終わらせられて・・・。」

ほっと息をついたのも束の間―

「アア・・・思い出した・・・腹が立つ・・・俺様が器の広さで力の差を見せ付けなかったら最強ということにされたクロム・・・俺様が攻撃せずにいてやったら不意打ちで腕を落としてきたインロン・・・。んでもってお前だ・・・!」


漣はゾッとし、思わず1歩下がった。

至る所がぐちゃぐちゃに斬られたその身体で、オウコツは立ち上がる。

「おい寄生虫!テメェが俺様の片腕を治さないままだったせいでこんな雑魚に一矢報いられたじゃねぇか!!この屈辱をどうしてくれるんだ!?ええ!?」

自身の強さに絶対の自信があるからこそ、かつてやられたことや今やられたことを他人のせいに押し付ける。

「ガッ!?グァ!?ガゥ・・・ガバァ!?」

「ヒッ!?」

オウコツの身体が内側から、ボコボコと膨らんだり戻ったりしていく。

そして、新たな身体を造り直した―。

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