表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛の歌  作者: Dust
8章
197/230

193話 再訪

2つの心の1つが消えた。

果たしてそれがどんな影響をもたらすかは分からない。

しかし、今ようやく、また彼の荷が降りたのも事実であろう。

「さて・・・。」

舜は隠れてこちらを伺っているテイパーを睨む。

自分との殺し合いをさせた張本人として。

「な、なんで睨む?勝手に殺しあっただけじゃん!?」

「勝手に・・・。」

「話し合いとか色々方法あるじゃん!なんで勝手に殺し合いして睨まれてるの・・・!」

言われてみれば向こうから襲ってきた、とかでもなくお互いに殺し合おうと思ったから故の対立である。

あくまで彼女は心の可視化をしようとしただけなのだ。


「・・・・・・ごめん!!本当にごめん!!!」

「謝るなら殺気を向けないで!睨まないで!!」

ふっと舜は肩の力を抜いた。

それでようやくこそこそとテイパーは姿を現した。

「なんなんだよ人間・・・めちゃくちゃ怖い種族じゃん・・・。」

「俺を基準にしない方がいいとは思う。うん。」

そこにふわふわと小さな角と羽の生えた動物が飛んでくる。

「あら、使い魔ちゃん。」

「あれ?見た目ピエロじゃないんだ?」

「表側にいる子はそういう風に着飾ってるわよ。お化け屋敷の子達はホラー風味にしてたりとか。」

「・・・なんでピエロ?」

「え?遊園地って言ったらピエロじゃない?」

舜はんー・・・と唸ってから。

「まあ・・・そんなもんなのかな?」

納得してしまった。

キューキューと鳴く鳴き声にふんふんとテイパーは頷く。


「またお客・・・でも変なとこから入ってきたのね?」

「俺らの他にも人が?」

「あら、あなた達の前にも来てまだいるのよ?」

舜は少し驚きながらも、気になった事を聞く。

「変なところから?」

「入口からじゃなくて柵を乗り越えてきたみたい。それも・・・2人。」

「それ・・・普通の人じゃないな。警戒した方がいい。」

キューキューと使い魔は更に鳴く。


「片方は隻腕の大柄の人で・・・片方は赤い鎧?」

舜はぴくりと反応する。

「赤の鎧・・・。」

「知り合い?それなら警戒は・・・。」

「してて。・・・俺が何とか出来ればいいけど。・・・アラタ。」

舜は1つ決心をして歩き出し―振り返った。

「・・・ここの出方ってどうするの?」

「ま、出してもいいけどね。あんまり使い魔ちゃん怯えさせないでよ?」

「善処するよ。・・・これからまた殺し合いだろうけど。」

舜の姿が部屋から消える。

「え?・・・最後殺し合いって言った?・・・人間相手のやり方、少し考えないと駄目かしら・・・。」

残ったテイパーはポツリと呟いた。


遊園地に戻った舜は辺りを見回す。

「俺達の前に来た人ってのも気になるし・・・とりあえずみんなと会えれば・・・。」

舜はデバイスを見る。

愛花から連絡が幾つも入っていたので、まず無事を報せた。

目印になりそうなアトラクションは幾つもある。

(観覧車を目印に愛花と合流するか・・・?)

そんな事を考えながら意識を集中する。

人の気配がしないかどうか。

(建物の中?・・・先に向かってみるか。)

舜は走ってそちらの方へ向かって行った。


「こんにちは、咲希ちゃん。」

「・・・!?・・・お前はお姉ちゃんの所に居た・・・!」

「そんなに怖い顔しなくていいよ。私はビャクシ、宜しくね。」

緑色の髪に黄色のハイライトが入っているポニーテールの女性・ビャクシが咲希と話していた。

「竜族を滅ぼし、私を殺そうとした相手に怖い顔をするなだと?」

「それは・・・真希様に非があるよ。許してあげてとは言わない。」

咲希は未だ睨み付けたまま警戒をしている。


「私たちはね、基本的に人でない存在で、消えるような感覚に陥った事あるの。そこを真希様に拾ってもらってね。私もだけど・・・あの人はもっと焦っている。消える事もだけど・・・それ以上に大事な存在を忘れてしまうかもしれないことに。」

「だからと言って・・・故郷を滅ぼした言い訳にはならない。」

「それもね・・・ちょっとした悶着があってね。」

咲希は怒りに声を震わす。

「今度はどんな言い訳をするつもりだ・・・!」

「元々殺すのは最終手段で・・・まだやるつもりはなかった、まずは協力を仰ぎたかった、それが真希様の言い分。でも・・・竜族の長が突っぱねたの。誇り高き竜族が他の種族に頼るものか!ってね。」


「・・・・・・。」

「協力さえしてくれれば共に邪神を呼び出して、共に消滅の運命を変えようとしてたのにね。・・・ここからは真希様の罪。真希様はみんなを死なせないように無理やり邪神を呼び起こそうとして―後は知っての通りよ。貴女だけが生き延びて、他の人達は・・・。」

「事故だと言いたいのか?それで・・・その後私を殺そうとした理由は!?」

「・・・真希様、あの後からちょっと・・・うん・・・心が壊れちゃったの。沢山の死体を見た後言い放ったのが・・・これならみんなを忘れずに済むんだ、って。盲目的に救ってくれた真希様を慕う子もいるけど、今の私たちは真希様がまた戻って来るよう支えようって。そして・・・邪神の力で消滅の運命を変える、これは私たちの絶対の目的で―」


ドアの開く音と共に舜が入り込んでくる。

「咲希と・・・誰だ?」

怒りに震えていた咲希を一目見た舜は、鋭い目つきでビャクシを睨んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ