189話 遊園地
「しかしなんでこんな所に・・・。」
遊園地なんかが、と周りを見ながらポツリと呟く。
「・・・普通の遊園地じゃない。・・・恐らく魔力で出来ている。」
「なるほど・・・?」
辺りにはその遊園地以外には何も無く、場所的に人が来やすい訳でもない。
「・・・危険だと思う?」
舜はみんなに問いかけた。
「少なくともこれを作った人はいるはずで・・・これをなんで作ろうとしたかによるけど・・・誰かの為なら人は何人か居るんじゃないかな?」
その問いに漣が応える。
「つまり、情報集めは出来るかもって事ですよね。・・・どうします?舜兄。」
舜は少し悩んでから、切り出した。
「魔力者がいるのは確定だけど・・・害をもたらそうとしてる人間がこんなのを創るとも思えないし、最悪ナチャで逃げられる。・・・入ってみようか。」
舜はナチャの石を取り出した。
そしていつもと違って出来る限りその石に魔力を込める。
糸が現れたが・・・悲鳴は聞こえない。
(魔力の消費は激しいけど・・・これなら大丈夫そうか。・・・。)
「ごめんねナチャ。いつもありがと。」
そうとだけ述べるとその石を戻し、遊園地へ向かって歩き出す。
「すみませーん!誰かいませんかー?」
入口付近で愛花が声を出す。
辺りを見回したり、うろちょろしてみるが人の気配が無い。
「こういうのって入る時受付とかするよね・・・?」
「普通の遊園地は入場料とかありますけど・・・まあ普通じゃないのは確かですけど、勝手に入るのも気が引けますよね。」
悩んでいると意を決した咲希が門をくぐった。
「行こう。悩んでても仕方ないだろ?」
「そう・・・だね。・・・え?咲希!?」
そして完全に遊園地側に身体が入ると共に姿が見えなくなった。
「愛花!手を!何があってもいいように離さず行くよ!」
「え・・・?えっと、はい!」
慌てて舜は愛花に手を伸ばし、握りあって遊園地へ入っていく。
「咲希!」
入ってすぐの所に咲希は居た。
「舜・・・良かった。ナチャで出るぞ、ここは普通じゃない。」
咲希は2人の後ろを指差す。
出入口があるはずのそこは壁になっていた。
「ナチャ!」
舜は石を取りだし、出来る限りの魔力を込めて―
「!?」
糸が現れると共になにかに掻き消された。
「・・・えっと、他の出入口を探すしかない、のですかね。・・・まあちょうどいいですし誰かいるか探してみましょう。仕掛けを知ってるかもしれませんし。」
「・・・・・・。」
愛花の提案を聞きながら、舜は改めて周りを見る。
見えていた遊園地である事には間違いない。
「わっ、と!」
その声とともに背中に軽く手が触れる。
「急に目の前に出てくるから驚いたー!・・・あれ?」
漣が辺りを見回す。
「とりあえず!後二人も来るからどいたどいた!」
しかし、後ろが壁である事を気にもとめず、舜と愛花の背中を押して行く。
程なくして2人が入ってきた。
「帰ってこなかったしなにかあったか、何も無かったか。とりあえずどちらにしてもみんなで入ろうってなったの。外に残してもその人に何も出来なさそうだったしね!」
漣が入ってきた理由を述べる。
「・・・悪いな、巻き込んで。7邪神云々も元はと言えばみんなに関係ないのに・・・。」
「舜さんは負い目を感じる必要はありませんよ。私たちが危険に踏み込まなければ、舜さんの方がより危険になる。舜さんが私たちを危険な目にあって欲しくないと思うように、私も舜さんに危険な目にあって欲しくないのですから、危険を分担していきましょう?」
「そーそー、みんなでなら大丈夫だって!」
雪乃の言葉に漣も同意をする。
「そうだね・・・。うん、ありがとう。それじゃあパパっと問題解決しちゃおうか。」
そうして改めてアトラクションの方を見た時に。
小さなピエロと目が合った。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
呆然と声が出ない間にピエロは木の板を掲げる。
【ようこそ!】
「え?あ、えっと・・・。ちょうど良かった、たまたま目に入って、その入口で誰かいないか探してたんだけど・・・その誰も居なかったから勝手に入ってきちゃったけど―」
そんな言葉を無視してピエロはそれぞれに紙を渡す。
「・・・・・・。」
スタンプラリーと書かれた紙。
【ここを出るには、楽しむこと!】
「楽しむ・・・?あ、待って!」
ピエロはスタスタと走り去っていった。
「追い・・・ますか?」
「・・・出ること優先で行こう。こちらの問いに答えてくれなさそうだったし・・・。」
「じゃあ楽しめばいいんだよね!」
目をキラッキラに輝かせた漣がスタンプラリーを手にはしゃぐ。
(出入口を探したり壁を壊したりで出れるか試そうと思ってたけど・・・言い難いな・・・。)
「舜兄、一旦楽しむ方面で考えましょ?」
「と言っても・・・このアトラクション達が安全かどうかは・・・。」
「それじゃあ不肖この漣が偵察がてら乗ってきます!!!私なら炎になれるから何かあっても対応するよ!」
舜は本気で楽しみにしてる漣に押された。
「下で何かあったら対応出来るよう構えとくよ。・・・まずはどれに乗りたい?」




