188話 情報を求めて
「ごめん、ナチャ。少し耐えてね。」
ナチャの力で収納していた車を出す。
「・・・っ。」
その後、舜は顔をしかめた。
「前見た車と違う?」
「・・・あれじゃ6人乗れないから。」
「2台買ったの?舜くんのお金で?」
「・・・ぶい。」
漣と怜奈が話してる横で舜は石をじっと見つめる。
「舜兄、今は私たちに出来ることから考えましょう。」
「うん・・・そうだね。分からないことは後回し、と。」
ひとまずの目的は7邪神を集めることである。
それはセイユに言われた事でもあるが、それと同時に戦力増加にも繋がる。
「・・・隊長、助手席でいい?」
「俺?」
3列シートの車の1番後ろに座ろうとする舜を怜奈が呼び止める。
「・・・そう。・・・知らない道だからマップとかみてもらうかもだけど、他の人よりマシだと思って。」
「消去法かぁ。」
免許を取って日が浅い怜奈と免許を持っていないその他の車旅。
運転手に不安がよぎるのも仕方が無いことかなと舜は納得する。
「・・・・・・。」
だからこそ舜にも不安がよぎってしまう。
今、悩みや考え事が多く集中力が散漫なのは舜自身自覚していたから。
「私が乗りましょうか?」
悩んでいると雪乃が舜の顔色を見て申し出た。
「・・・そうだね、2択ではあった。」
「聞き捨てなりませんね怜奈ちゃん。」
「・・・愛花は・・・うん・・・ごめんね。」
「ごめんね!?ごめんねってなんですか!もう!」
愛花はいつも通りに振舞っている。
「愛花、ちょっと俺は色々考えたり連絡したりするからそのサポート役を隣でしてもらっていい?」
「はい!喜んで!いやーやっぱり舜兄は分かってますね!私が完璧なサポートを出来るって!」
ふんすと得意気になる愛花を見て、舜は少し表情を和らげる。
いつもと変わらないその態度が、言葉にならないほど舜の支えとなっていた。
「とりあえず情報が集めそうな場所を近くから、で構いませんね?」
「うん、頼むよ雪乃。」
ナビ役の雪乃の確認に相槌を送って、舜は早速デバイスを取り出し電話をかけた。
「は、はい!どうしたっすか?」
「ムルシー、大事な話があるんだ。今、時間大丈夫?」
「え?・・・え?え?私に?・・・第2夫人?」
「・・・?・・・シィラもいれば一緒に聞いていて欲しい。クロムの件だ。」
電話口から少し離れたムルシーの声が聞こえ、その後シィラの声が聞こえてくる。
「シィラです!クロム様の遺体はどうなりました!?」
「・・・遺体は―蘇生された。俺が義兄上から討伐を託された存在によって。」
「蘇生!?じゃあ・・・クロム様にまた会えるんですか!?」
「・・・どうも記憶があやふやっぽかった。そして・・・今回は俺を見るなり本気で殺す気で来ていた。」
息を飲む音が聞こえる。
「よく・・・無事で・・・その、クロム様はどうなったっすか?」
「分からない・・・アピアルが何かしてバラバラに吹き飛ばされたっぽいからその後どう動いてるかはさっぱり。」
正確にはエルオールなのだが、知らない人間を出すよりはわかりやすいだろうと舜は解説を端折る。
「舜兄様、もしかしてなんですけど、その。・・・他の遺体が消えた人達も―。」
「多分、ね。」
シィラの言葉を選びながらの質問に、舜は簡潔に答えた。
まだそうであると確信した訳ではないが、同じ時期に消えた遺体。
当然同じ事に巻き込まれてる可能性は高いと舜にも分かっている。
そしてそれは舜にとって―
(オーフェ・・・・・・。)
とてつもなく精神的な負荷となる事実でもある。
「えっと、舜さん。その、一旦アウナリトに帰ってきて私たちとゆっくりしませんか?」
「申し出は嬉しいけど・・・ちょっとナチャの様子がおかしいんだ。だから・・・暫くは帰らない、かも。」
「そうっすか・・・分かりました。でもいつでも連絡してくださいっす。私たちだけじゃなくムスルスさんやムイムイさんにも気が向いたら連絡あげてくださいっすね!」
「うん、ありがとう。じゃあ一旦・・・切るね。」
ふぅと溜め息が出る。
「愛花、そっちはどう?」
「ええ、ひとまずメッセージは各々に送りました。」
愛花も同期組にオーフェ達の遺体の件について連絡して回っていた。
「さて・・・次は・・・7邪神か。分かってないのは手元にあるこの1柱とクァチル・ウタウスと・・・全く情報のないもう1柱。・・・こっちの大陸にいるといいんだが。」
「その邪神は世界のルールを破れるんだろ?なら少なくとも1つはこっちにいるはずだ。・・・私の姉がこちら側で行動をしている。目的は消滅からの解放・・・その消滅が世界のルールだとするなら、利用するは7邪神で間違いないはずだ。」
2列目のシートから咲希が推論を話す。
姉とあってからずっと考え続けていた内容なのだろう。
そんなこんなしてる内に車が止まった。
「・・・これは。」
怜奈はそう呟きながら車を降りる。
窓から覗くと広大な敷地に様々な何かが建っている。
「・・・遊園地?」
それぞれ車から降りながらそれを眺める。
ジェットコースターのレール、観覧車、空中ブランコ・・・。
それは紛うことなき大きな遊園地だった。




