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愛の歌  作者: Dust
1章
19/184

18話

ルールは誰かが決めたもの

常識は誰かが押し付けたもの

ある分には構わない

だけど取捨選択すら許さないと言うならば

私のルールは私が決める


リビ

戦争から3日後、自身の寝室にオーフェは舜と2人だけで会いたいと呼び寄せていた。

「・・・来たよ、体の方はどう?」

舜は優しく声を掛ける。

「・・・痛む、かなりな。」

「うん、早く良くなってほしいね。」

オーフェはどう切りこもうか少し悩むような様子を見せる。

「呼んだのは・・・お前の能力の件だ。あれを使わないでくれと頼んだら、聞いてくれるか?」

少しの沈黙。

「・・・無理だと思う。」

「そうか、いや分かっていた答えなんだが。」

「・・・魔力不足で倒れたなら、それは俺の能力の消費量の問題―なんだよな?」

オーフェは観念したかのように言う。

「ああ。・・・責任は感じるなよ。僕が勝手にお前の能力を使ったんだ。」

「・・・うん。」

責任が舜に無いのは確かだった。

それでも舜は少し心苦しくなる。


「僕の能力は・・・察しのいいお前ならもう分かってるだろうけど、食べた物を僕が活かせる能力だ。それでお前の能力を使った時―正直死を覚悟した。今生きているのは半分は運で半分はお前が手を握って魔力の補充をしてくれたからだ。」

「・・・使うタイミングは気を付けるよ。」

オーフェはあまり納得してなさそうな顔をしたが、それでいいと頷いた。


「・・・僕が無事だったのは、幸運だったのかな。」

オーフェはぽつりと呟く。

「・・・まだ傷が辛い?気が紛れるなら傍にいるよ?」

「・・・・・・痛みもあるか、それ以上に。この傷じゃ僕がこの隊を去らないといけないのが。」

オーフェは確信めいて言う。

「待って、治るまで待つ。除隊なんか頼まれてもしてあげない。・・・いつまでも待つからさ。」

「そうもいかない。・・・目が、やられてる。左目が見えないし右目もぼやける。それに体の内部もボロボロだとさ。体内で行き場を無くした魔力がここから出ようとした後遺症だ。治りなんてしないだろう。」

舜は首を振る。

「時が経てば、どうなるかなんて分からないし―戦闘は無理でも出来ることなんていくらでもあるよ。裏方からサポートしてくれるだけでもいいんだ。」

「だったら他の戦力を求めた方がマシだ。僕である必要はない。舜、お前は隊長なんだ。3人の生命もお前が握ってるようなもんだ。僕のためだけに3人を危険に晒すな。」

「俺は、4人の隊長だよ。オーフェも含めて、4人の。」

オーフェはククッと笑い、目を瞑る。


舜が自分を除隊させようとする事は無いだろうという信頼感、そしてそれ故に足を引っ張り続けてしまうという苦しみ。

そして、これから何度繰り返して自分から辞めると言っても反対し続けてくれるだろうという優しい絶望。

「舜、ときに優しさは何よりも苦しいんだ・・・。」

その言葉に、オーフェは自分の胸が苦しめられるような感覚に囚われる。

自分の言葉で舜が責任を感じるかも、傷付くかも。そう思うと言ったことを後悔すらしかけた。

それでも、それでも言わなきゃいけないことだとも思った。

舜の優しさが誰かに対して空回りになる前に誰かが。


「それでも・・・俺はオーフェと一緒がいい。もう少しゆっくり休んで、ね?そしたら、また状況が変わるかもしれないし。」

舜はオーフェの頭を撫で、部屋を後にした。

オーフェは1人、自分の頬が熱く濡れるのを感じながらそれを見ないでくれるために出ていった舜の気遣いを感じていた。

だけど、だからこそ

「僕に・・・お前たちの道を遮らせるな・・・。」


部屋から出て、応接間に行くと愛花がいた。

「あ、舜兄。お疲れ様。・・・なんか久々な気がしますね。」

「・・・・・・実際3日ぶり、か?」

愛花と会ったのはあの戦争以来だった。

「ここにも帰って無かったようですが・・・何があったんですか?」

「どこまで話していいんだろうな?色々あったのは事実なんだけど。」

あの後、隊長たちは元帥から呼び出しを受けていた。


2日前早朝、城内にて。

「・・・リーグ。その、部下の件についてだけど・・・。」

「リビから聞いたが責任を感じる必要はないぞ!お前は間違った動きはしていない!・・・反省すべきは俺の方だからな。」

「だけど・・・」

「・・・家族への報告に共に行くか?罪悪感が晴れるのであれば俺は構わないぞ。」

リーグの言葉に舜は是非と頷く。

その時、肩を叩かれ振り返ると頬に指が当たる。

「舜ちゃんは背負いすぎだよ、そもそも今回舜ちゃんの持ち場じゃないところなんだしさ。それよりなんで集められたか、よそーしあおうZE?恩賞でも貰えるのかにゃ?まー元帥さん来たらあーしには先に分かっちゃうんだけどね☆」

「そろそろお見えになられる時間です。皆様ご着席を。」

マキナが時計を見て、言う。


リビの表情から笑みが消え、何かを考えるような表情に変わる。

嫌な予感。

そして元帥、レイガが現れる。

「やーやー時間前に既に座ってるとは優秀だねぇ。」

レイガはいつものように軽い感じなのだが・・・その纏っている空気は重い。

「さて、どこから話すべきか。まず、確定してる事から行こうかね。今回の命令、出したのは僕じゃない。僕の命令は君たちに届く前に揉み消されたようだ。」

「ふーん、なるほどなるほど。敵にそういう能力を使う相手がいてまんまと騙されたと。犠牲は1人でてしまったけれど敵の目的自体は失敗させられたのなら美しい勝利さ!」

「そうだね、その可能性もあるね。」

キッソスの予想にレイガは頷く。


「どう・・・だろう。敵の策にしては俺とリビは覚醒してるの2人だけだったし。それにあの鎧も動きはそこまで早くなかったから・・・逃げてしまえばおしまいだったと思う。」

「舜様もそう思われますか。」

「どういうことだ?」

舜とマキナの意見にリーグが首を傾げる。

「アウナリトの地形的にさ、1度崖を超えなきゃなんだ。」

アウナリトの首都は標高が高い所にある。

外に出る際、高い崖があり更にそこには防衛隊が常にいるため地形も含め迂闊に攻め込めない立地にある。


「だが崖を避けて行く道がある、崖は登れなくても危険だと思うが。」

「その道をあの巨体じゃ通れないと思うんだ。ほら、1部凸凹してるし狭くなるところもあるだろ?」

回り道は岩石地帯になっている。人が通る分には問題がないがあの鎧の大きな足では真っ直ぐ経つのが困難かつ、横幅も通れないのは目に見えていた。

「何か手段があったかもしれないけれど・・・鎧は単体で迂回してきた連中もそこまで、中央突破も出来てない。そんな状況なら鎧を倒せてなくても問題は無かったし、そもそもの話何か方法があるなら俺たちを全員中央の援護に送って、迂回路からその方法が出来るメンバーを邪魔される事無く行かせられたはず。」

早口で舜は語る。

(・・・いや、待て?そもそもこの鎧とローグが協力しあってるという前提から疑わないと駄目か?そもそもローグ側から鎧を恐れてる情報があったわけで。となると・・・)

「そんなことより。」

リビが話を切り出す。


「元帥さん、その言ってないじょーほー言おーよ。」

「・・・そうだねぇ、僕も切り出し方をどうするか悩んでたんだけど。」

レイガは一通り顔を見回して、言った。

「他の現役特殊部隊、君たちの先輩に当たる53名全員が戦死した。」

「・・・は?」

地図がレイガの後ろのモニターに出てくる。

「ここに行くよう、誰かからの司令が出てたんだけど。」

そう言って指した場所は戦場になった所よりもかなり奥だった。

「そんなところに敵が・・・?」

「全員が戦死となりますと相当大勢力かそれとも相当強い人がいると見ていいでしょう。」

「どんな大軍相手でも1人も逃げ出せないって事がある・・・?」

舜は首を捻る。

「そもそも大軍相手なら戦わないってことも有り得るな。」

リーグがそう唸る。


「ねー、これさ。・・・四凶なんじゃない?」

リビの発言に舜以外の3人が反応する。

異様な空気が流れる中。

「・・・四凶?」

舜だけが1人何も分からずに置いてかれる。

「とにかくやべーやつらの1人がいるかもってことだよ舜ちゃん。」

リビは簡単に説明する。

「・・・もし敵だとしたら目的はあーしたちの先輩の殺戮って事になるけど、だったらあーしたちも同じしれーがきておかしくない。それが来なかったのは何故、か。」

「敵じゃないとしたら誰なんだ?」

リーグはお手上げだと言わんばかりに聞く。


「心当たり・・・あるかも。」

舜は静かに言う。

「義兄上なら・・・出せるんじゃないかな。なんなら・・・右大臣のポロスにも出せるんじゃないかな。」

その言葉を聞いてレイガの雰囲気が少しピリッとした。

なんとなくその雰囲気が誰かに似てるような気もした。

(舜ちゃん舜ちゃん、ちょっと武官と文官の仲悪いから気ーつけてね。)

リビが小声で教えてくれる。

「まあ憶測はこんなところで。僕から1つ司令を出すよ。デバイスで司令を出す時は呼び出しをする時だけにするから、それ以外の司令が下った時は無視をすること。」

レイガがそう締めて、話し合いは終わった。


「そーいえば舜ちゃん知らなかったよね。元帥さんってライガのおにーさまだよ。」

「誰かに似てるって思ったけど・・・ライガか。怒らせたら怖そうだな・・・。」

舜は納得したように頷く。

「あ、後さ舜ちゃん。舜ちゃんが途中でした思考、同じ事思った子が居るんだよね。ね、キッソス。」

「僕はその男がした思考が何かは知らないけれど・・・それでも何となくどれの事を言ってるかは分かる美しい僕!我が美しき副隊長にして―」

話を遮るようにリビは先に舜に答えた。

「キッソスのところの副隊長がローグとスライムの関連性は無いって疑いをしてたんだ。魔力切れを起こしたスライムをそのままに他でも動きなし、なんならあーし達が戦ったローグはスライムの様子を見に来た偵察隊じゃないかと。」

「・・・なるほどね。その可能性もあるだろうけど今の情報だけじゃ分からないし悩むだけ無駄かな。」


舜はくるりと向き直し、リーグに話しかける。

「遺族への報告。いつ、行く予定?」

「明日だ!そうだ、待ち合わせ場所を決めておこう!待ち合わせ場所は―」

約束の場所と時間を決めた時だった。

「リーグ・・・。」

1人の男がリーグに声を掛ける。

舜にも見覚えがあった。

「辞めさせてくれ・・・俺はもう・・・駄目なんだ・・・。」

その男は心が折れていた。

「そうか・・・お前といたしばらくの間、楽しかったぞ。隊はやめてもまた話そうではないか!」

リーグの言葉にその男は申し訳なさそうな顔を浮かべるだけだった。

一方リーグは笑顔であった。まるで辞めた事にほっとしたかのような。


リーグと予定を決めた後、舜はある人に会いに来ていた。

寮の部屋。ドアをノックする。

「あーい?誰ー?」

リーンがドアを開けてひょこっと顔を出す。

「今時間大丈夫?」

「あー、なるほど用件は理解した。入って入って。」

「え?あ、ああ。うん。」

元々どこか喫茶店で話そうと思ってた舜は半ば強引に部屋に連れていかれる。

「急にごめんね。ちょっと―」

「あーあー皆まで言うな、分かってるって!」

リーンは自信満々に笑みを浮かべる。


「女装しに来たんでしょ!」

「違うわ!」

「え!?それ以外で何が・・・?あ、告白しに来た?」

「・・・めんどくさいから話進めるぞ。・・・・・・シャリーンの事を知りたいんだ。明日遺族に会う予定でさ。それで知っておきたい・・・って。」

リーンはああと表情を暗くする。

「シャリーンはね、責任あっていい子だったよ。両親が早く・・・亡くなって・・・1人で育ててくれた・・・年老いた祖母に・・・孝行するんだって・・・。」

「ハンカチ、いる?」

ボロボロ泣き出したリーンに舜はハンカチを手渡す。

「ありがと・・・女子力高いね・・・やっぱ女装しない?」

「泣くのかふざけるのかどっちかにしてよ、まったくもう。」

「とりあえずお酒!お酒飲も!」

「え?いやまあいいけど急だな・・・。」

リーンは酒をドンドン出してく。

「湿っぽい話苦手だからさ。とりあえず飲も飲も!」


数時間後。

リーンは完全に出来上がっていた。

「飲んでるー?ねぇねぇ飲んでるー?」

「飲んでますよー。」

舜は自分のお酒をグビっと飲む。

「あたしの酒も飲め!」

「飲みますよー。」

舜は押し付けられたコップを受け取りグビっと飲む。

「お酒強いねー、いいじゃんいいじゃん!」

リーンはそう言いながら、舜の膝を枕に寝転がる。

「寝る?寒くない?」

「らいじょーぶー。暖房ついてるしー。」

リーンが眠る様子を見て、舜もウトウトと机に突っ伏し寝た。


次の日の朝。

「・・・頭痛ーい。」

リーンは起きるなりそう言って、人がいることに気が付いた。

「・・・あれ?舜さん・・・まさか夜這い?」

「・・・ちがわい。」

音で起きた舜が寝ぼけながら突っ込む。

「いつの間にか寝ちゃってた。ごめんね、とりあえず帰るよ。」

「ん。・・・ねぇ、最後に一つだけ。 あなたのせいじゃないからね?」

リーンはそう言いながらブンブンと手を振って見送った。

(お酒飲んでた時も似たようなこと繰り返してたような。)

舜は寝ぼけ眼を擦りながら考える。

(酒で元気づけようとしてくれた・・・ってのは考えすぎかな。)

「・・・あ、やべ!約束の時間もうそこじゃん!」

舜は駆け出した。


「・・・どんな、最期でしたか?」

老婆―シャリーンの祖母はリーグにそう聞いた。

「仲間を庇っての立派な最期でした。」

「そうですか、その方が横の方ですか?」

「いや、俺は違います。俺は、その。」

「彼は援軍でかけつけ、シャリーンの仇をとったものです。」

リーグの言葉に倒したのは自分じゃないと言うべきか少し悩んだが―


「そうですかそうですか。孫のためにありがとうございます。」

その言葉に言い出せなくなってしまった。

「その、助けられた方に―孫の分もよろしくお願いしますと、あの子が人のために働こうとしてた分、働けなかった無念をよろしくお願いしますと伝えてくれませんか?」

「・・・ええ、約束しましょう!」

そして、遺族への報告は終わった。

終わったのだが。

「リーグ・・・その、助けられた人ってさ。」

「昨日辞めると言ったあいつだ。」

「そっか。・・・じゃああのおばあさんのお願いは俺が引き受けるかな。」


そして、今日になった。

「・・・って感じ。」

「いや、会ってない日数と話の日数があってなくないです?どこで寝泊まりしたんですか?・・・まさか。」

「いや、ほら、その。」

「外に1人で出ましたね?シャリーンちゃんの分もーとか理由で人助けと。それも夜通し。」

「・・・愛花今日も可愛いね!」

「誤魔化されませんよ!そこに正座!」

こうして舜は説教を受け、足をしびれさせるのであった。

愛「愛花ちゃんだよー。」

オ「僕だ!」

愛「オーフェ、お前だったのか!」

オ「ここのメンバー、変わんないとなって事で来てやったぞ。」

愛「元々ここのコーナーはまだ未登場の2人の予定だったしね。」

オ「片方は定期的に別の子出すのに片方は常に出ずっぱりでいつ代わるの?ってネタやる気だったのに出来なくなったな。」

愛「雑談はともかくとして今明かせる設定公開しましょうか。今日は舜兄です。」


身長 178cm 体重70kg・・・ぐらい? (自己申告)

誕生日 9月27日?(記憶喪失の為なんとなくでこの日と自己申告)

能力 ラグナロク 魔力消費量 特大 触れた対象を指定して壊す能力。指定先のものが触れてる部分にない時は魔力消費が激しくなり不発に終わる

性格 ごく普通の人間ですよー(本人談)

特筆事項

魔力を外に放てない

裸眼だと人の周りの空気がぶれて見えるため眼鏡をかけている(ぶれ方は人によって変わる。)

料理と読書が好き


愛「今はこんな感じですかね?」

オ「割と自己申告多めなんだな。」

愛「それじゃあまた次回!」

オ「読んでくれ。じゃあな。」

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