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愛の歌  作者: Dust
7章
187/228

183話 The enemy

沈んでいく。

沈んでいく。

無気力なまま沈んでいく。

(・・・駄目だ、ここで終わったら誰が―誰が居なくなった人達の想いを背負うんだ・・・!)

重たい身体を必死に動かそうとする。

だがまるでがんじがらめになったかのように動かない。

イパノヴァの顔が浮かんだ。

身を呈して自分を守ってくれた。

繋いでもらった命をこんな所で終わらせていいわけが無い。

右腕が動いた。

オーフェの顔が浮かんだ。

最期に話したいこと全てを飲み込んで自分に生きろと言ってくれた。

生きると約束したんだ。こんな所で終わっていいわけが無い。

左腕が動いた。

義兄・ネビロスの顔が浮かんだ。

人々の為に私情を捨て対立せざるを得なかった。

その命を奪うと同時に、その人々の為の行動の跡を継いだ。

まだその役割が終わってないのに命を諦めていいはずがない。

足が動いた。

そして―


そして、愛花の顔が浮かんだ。

こんな形で別れたくない。

ふざけ合って茶化しあって。

愛し合って、温かさを感じたい。

舜の目に光が戻った。

とにかく上へ向かおうと顔を上げる。

その時だった。


思い浮かべてた顔が―

愛花が飛び込んできて、グングンと泳いでくる。

舜の元まで辿り着くと―そこからどうやって上まで泳ごうか考えてなかったのかワタワタとジェスチャーで何かを伝えようとする。

舜はふっと笑って上へ泳ぎ始める。

「ぷはぁ!もう泳げるんなら早く浮いてきてくださいよ!海へ落ちてくの見て慌てたんですから!」

「うん・・・ありがと。行こうか。」

少し泳ぐとすぐに足がついた。

「・・・結構浅いとこに居たんだな俺。海だって事も分かってなかったけど。」

「何があったんですか?」

「・・・セイユに飛ばされた。」

「え!?セイユって過去の偉人じゃ・・・。」

砂浜に辿り着く。


「被害にあったホテルの人、あの人がセイユだったんだ。当然なんだけど被害に遭った事を怒ってる。でも・・・その相手も全員が悪い人じゃなくて―。どうするのがいいのか・・・。」

舜は必死に考える。

何をどう動くべきが正しいのか。

「・・・セイユさんに飛ばされたって事はその怒りを止めようとしたんですよね?なら・・・急ぎましょう。何も動かないなんてしちゃったら舜兄一生抱え込むでしょ?それに今回は私もいます。私も正しい行動はなにか考えますから、ね?」

「・・・うん、頼もしいよ。」

「その必要はないよ。もう終わったからね。」


声の先にセイユが立っていた。

「・・・殺・・・したのか。」

「いやまさか!誰も殺してないよ。」

「・・・え?」

呆然とした舜にセイユは悪い笑顔をしながら手で金のポーズをとる。

「交渉成立さ。ふふ、武力に頼らない国としては助かるね。」

「・・・ふふっ、良かったですね舜兄。」

「そうだね・・・。」

(これで無関係の人を殺してしまったのはあの男だけか。・・・・・・。)

舜は目を瞑った。

後悔と反省の先に、その死を背負う。


「さて・・・君に忠告だ。」

セイユは真面目な顔に戻り、舜の目を真っ直ぐ見つめた。

「まだその衝動を抑えるには1つ足りてない。今回は何とか君の想いで打ち破れたが・・・次はこうも上手くいかないだろう。」

「・・・・・・。」

「何の話か分からなくていい。ただ君はあの子供と相対した時、忠告を受けたはずだ。逆らうなと。」

舜はその目を見つめ返す。

「お見通しなんだな。・・・もっと詳しく教えてくれは・・・。」

「しないさ。残念ながら私如きで何とかできる代物じゃあない。ここまでお見通しで復活も出来る私が如き、さ。」


(229号の忠告を受けるべき・・・という事だけはわかった。でも・・・じゃあ・・・あの時子供を殺すのを良しとしなくちゃ行けなかったという事になる。そんなのは受け入れられない。・・・・・・。)

「セイユ・・・さっき1()()足りないと言ったな?・・・何がだ?」

「・・・そうだね。まあいいや、私も長く生きた。君の為に死んであげよう。」

「・・・え?」


セイユは指を指す。

カタカタと舜のズボンに繋いであるアクセサリーが浮かび上がる。

「思えば・・・この役割の為に生きてたんだろうね。そして・・・今から禁じられた行動を取る。」

「禁じられた?何から?死ぬ必要はない、言えない事ならば・・・。」

「7邪神を揃えろ!君の敵はセカイ―!」

グチャりと空間が歪んだ。

それが立っていた場所には何も残らなかった。

「・・・・・・。」

舜はただ青ざめた顔でそれがあった場所を見つめていた。

あまりに強大で理不尽な力だった。

それが、舜の敵であるのだ。


ツォーとの会話で世界が人間を疎んでる可能性は考えていた。

セカイがどのくらいの強大さかを知らなかった。

まさか、こんなに強大な力を持ち―。

そして自分という個人を敵と捉えてるとは―。

「舜兄、行きましょ。」

「愛花・・・。」

愛花は舜の顔を見上げ首を振った。

舜も小さく頷いた。

今はまだ、この敵に触れるべきですら無いのだと。


「舜さーん!」

遠くから声が聞こえる。

「・・・雪乃、怜奈!」

ホテルで知り合った女の子を迎えに行った2人が通りかかったのだ。

怜奈の顔を見ると青ざめている。

(・・・そうか、怜奈が自分との過去を言えない理由ってのも・・・こんな強大な相手が関わってるのなら・・・。)

そして違和感に気が付く。

怜奈がアレを見て青ざめたなら雪乃と女の子も見てるはずである。

しかし、一切その素振りが見えない。

もしかしたら考えすぎで見てなかったのかもしれない、そう思って舜は女の子に向き直った。


「ごめん、君の姉は・・・セイユは・・・。」

「?お客様・・・失礼ですが、私一人っ子でして・・・。」

「・・・は?」

「セイユ?って方も存じ上げません。」

「じゃあ・・・エルオール教の教祖は・・・!」

「・・・エルオール教は誰かが打ち立てたものではありませんよ。ええ、詳しくお知りたいのであれば今度教会で一緒に学びませんか?」

そして舜はようやく気が付く。

セカイから存在こと消されたという事がどういう事かを。

「なんだよそれ!?ふざけるな!?人の想いをなんだと!?」

「ひぅ!?」

「舜兄・・・!」

愛花に腕を抱き締められて、言葉が止まる。

「あ、あの、機嫌を損ねてしまって申し訳ありません・・・!」

「違う・・・違うんだ・・・・・・急に怒鳴ってすまなかった・・・。」

抱き締められてる腕から愛花の震えも感じる。

舜も震えるほど、今すぐ叫びたい程に。

その人との繋がりごと、想いごと消し去ってしまったセカイに。

怒りが、湧き上がっていた。

真希率いる十道聖メンバーの名前


真希:咲希の姉

ラミツ:修道女の姿をしている糸目の女性

ビャクシ:まだ本編で描写なし

ショウウ:か細い声の女性

クーユー:ナターと会話をしていた女性

ゼンカ:まだ本編で描写なし

シュラ:まだ本編で描写なし

ナター:サイアクが口癖の女性

カミラ:まだ本編で描写なし

メズサス:一人称俺の女性


細かい見た目などの描写はまた本編だったりスポットが当たった回のあとがきで・・・

それではまた次回もよろしくお願いします

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