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愛の歌  作者: Dust
7章
182/228

178話 明滅するように

(貰った・・・!)

動かぬ愛花に剣を振りかざす。

「・・・ああ、近付かない方がいいですよ。」

一瞥して愛花は冷たく言い放つ。

「なひっ・・・!?」

愛花に近付くと同時に、剣が、腕が霧散していく。

高密度の魔力の塊が愛花を覆うように溢れ出していた。

「ヤダヤダヤダヤッ・・・。」

何とか立ち止まろうと身体を後ろに必死に逸らしたものの、勢いでそのまま身体が半壊した。

「まあ・・・近付かなくても一緒ではあるんですが。」

愛花は赤き瞳で残った敵を見る。

飛んでくる魔力は全て、女と同じように近付くだけで掻き消されていく。


「退却だ!目的は果たしてるんだ、逃げろ!」

「逃がすと・・・思ってるんですね?」

いつの間にかチカチカと光る魔弾が辺りをぐるぐると回っていた。

「まずは足。」

魔弾が、1人を除いてその場の敵の足を貫いていく。

「ま、待ってくれ!俺たちは命令されて仕方なく・・・!」

「嘘。」

ぞくりと来る冷ややかな目。

(お・・・おい、聞いてた話と違うぞ!あいつは甘くて滅多に人を殺さないからって!ありゃあ人殺しの目だ!!)

「生かすのは1人だけ。他の人達はみんな・・・舜兄の代わりに私が殺す。」

叫び声が。大量の魔弾が。

逃げ出そうとする哀れな子羊達が。

彩り豊かに場面場面を描き出す。

訪れるのは美しき静寂だけ。

血すら残さない、静寂さだけ。


「さて・・・。」

愛花は残した1人に近付いていく。

「ひう!私は!今日まで何も知らなくて!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「分かってますよ、あなただけ罪悪感に塗れた顔してましたもの。ただまあ・・・。」

愛花は更に近づく。

「悪行をしてた連中のトップは、何処。」

「トップが誰なのかも分かりません!ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさい!」

「謝るな。誰。」

「ひぅ・・・!きょ・・・教祖様なのかぁ・・・クルンチュ様なのかぁ・・・それとも他なのか分かりません・・・。」

愛花はため息混じりに振り返った。

(舜兄・・・今何処に・・・?)

そして、外へと走り出す。



「いやぁお見事お見事。おっと、僕に殺意は向けなくていいよ、カオスくんから聞いてるだろ?援軍さ援軍。とはいえ必要なかったみた・・・殺意は向けなくていいってば。」

睨みを利かす舜に両手を上げながらヘラヘラと男は笑ってみせる。

「・・・言ってたかな?」

「言ってたさ、多分だけどね。僕はルーネ・ティスト、宜しくね。しかし・・・僕はどうやってその何でもありの男とやり合うか考えていたんだけど、どうして彼は自滅したんだい?」

「なるほど・・・こっちの手の内知って戦いの時有利にって?」

「いやいや、考えすぎさ。そもそも僕たちは敵対してないじゃないの。今はね。」

舜は何かにチラリと目線をやったあと答えた。


「自分で言ってただろ。使い切れない魔力を手にしたって。どんなに立派な身体作ろうが一度全能が"使い切れない"と定めたならそれは覆らないと思った。」

「それじゃあ決して崩壊しない身体を創造するとどうなるんだい?もしそれで耐えられれば・・・。」

「耐えられない。使い切れないという前提を作った時点で全能では無くなったのだから。全能に戻る事は出来てもね。」

「成程ねぇ、つまり彼がすべきだったのは使い切れない魔力をどうにかするべきで、耐えられる身体を云々じゃなかったということだ。そして君は耐えられる身体を作られたらマズイと急いで殺すフリをして、その考えに至らせなかったと。」

2人の鋭い目付きがぶつかり合う。


「そんな目をしなさんな。さっきも言ったように僕は敵じゃないの。・・・それより、さっきからこっちを見てる子は君の知り合いかい?」

「・・・・・・多分、そう。」

「対処はしないのかい?」

「・・・今のところは、いいかな。」

舜は少し気にかけながらも、気が付いてると思わせない為に背を向けて歩き出す。


その視線の先。

見ていた女にナニカが問いかける。

"何故殺しにかからない"

「あ?うっせーよ、今仕掛けてもやられるだけだ。お前ら馬鹿みたいにな。」

"・・・"

「ふん、お前らはあいつを甘く見すぎだ。だからこそ殺されたんだろうがな。そんな簡単に殺せるなら誰も苦労はしねぇよ。」

"策はあるんだろうな?"

「まだねぇよ。だから観察してんだろうが。まあ隙がありゃ仕掛けるってのもあるがそう簡単に作ってもくれねぇだろうしな。・・・・・・。」

女は立ち上がる。

(・・・あいつの行動は今んとこエルオールの為、か。じゃあなんで・・・なんでリライエンスを裏切った・・・!)


復讐に燃える女を、舜はただ気にかける。

(ピュラ・・・。何故・・・クルンチュと戦ってる時に乱入しなかった・・・。もしそれが俺が今エルオールのために戦っていて、その邪魔をしないためだとしたら・・・。)

「君は・・・復讐者にしては優しすぎる・・・。」

「ん?何か言ったかい?」

「・・・別に。」

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