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愛の歌  作者: Dust
7章
179/230

175話 その男、クルンチュ

「さあ・・・行こうかみんな。救済の時間だ。」

「いいんですかい?クルンチュの兄貴。奴らまだ警戒してるかと・・・。」

「兵は神速を貴ぶと言うさ。それに私には正義があり、情報もある。」

クルンチュは柔らかに笑う。

その表情は仲間たちを安心させるもので―

「どうしますー?別働隊出ときましょーか。」

「ああ・・・そうだな。合図があったら突入を頼むよ。」

「おーらいおーらい。じゃー行くぞー。」

一人の女が数人連れて別れて動いていく。


「・・・そう、分かった。今宿には誰かいる?・・・咲希だけ、そう・・・絶対に宿屋を出ないよう伝えてて。場所は割れててそっちに誰か来てもおかしくないから留守番を頼むと。」

外にいる舜は通話を終える。

「・・・いるかな?雪乃ー!」

「はい、お呼びでしょうか。」

「・・・。あ、うん呼んだのは俺なんだけどね。」

何となく呼んでみたら居たことに困惑しつつ、笑いかける。

「宿屋の妹ちゃん、今日もまた教会に行ってしまってるらしいんだけど・・・今連絡で新興宗教の連中がきな臭い動きをしてるって。・・・保護を頼む。俺は俺の出来ることをする。」

舜の不安要素であった目の数は、人望のあった宿屋の姉妹の手により解決はされた。

(これなら・・・先手が取れる・・・!)


「待ってください!その子はまだ生後半年で・・・!どうか・・・!どうか・・・!!」

「安心してください、お母様。ちゃんと責任持って神に選ばれるよう育てる事を約束しますよ。」

騒ぎに泣いてる赤ん坊をクルンチュの部下があやす。

その母親はクルンチュに泣き付いている。

「・・・よぉ、邪魔するぜ。」

「存外早いお付きだね、シュン・アザトゥー。」

クルンチュは舜に相対する。

「その子を母親に返せ。」

「・・・君も選ばれた人間だ。まずは我々の事を理解して貰おうではないか。」

「返せって言ってんだ。長話しに来たんじゃねぇよ。」

舜は剣を出して見せびらかすように肩に担ぐ。


「どうやら君は勘違いをしているようだ。我々は・・・。」

「魔力を齎したあの生命体を神と信仰し、信じることで神に選ばれ魔力者になれるとした宗教。悪いけどこっちにも情報はあるんだ。」

カオスから聞いた情報を元に、出来る限りの情報をエルオールで掻き集めた。

「つまり君は・・・我々の考えを否定すると言うのかね?」

「否定するのは考えじゃねぇよ、やり方だよ。」

「では・・・どうすると言うのかね。」

クルンチュは手を部下たちの方へ伸ばし、手のひらを見せる。

それは舜の剣と同じく、脅しとして機能する。


だが舜は怯まない。

「言っただろ、()()()()()()って。」

「そうか、残念だ。やれ。」

手のひらを閉じた時、部下は母親に向かって武器を振るおうとした。

「熱っ!?」

だが聞こえてきたのは武器を振るおうとした男の叫び声だった。

炎がその手を止めさせ、人影が赤ちゃんを奪う。

「立って、早く!・・・くろすけ!持てる!?」

母親が固まり動けないのを見てその人影―漣は奪い取った赤ちゃんを掲げると飛んできたカラスがその服を掴む。

身体の10倍近くの重たさは流石に持ち切れなかったが・・・炎の鳥が現れその背に乗せ飛び立つ。


「痛いかもしれないけど我慢して!」

漣は無理やり立たせて舜の元へ向かう。

「逃がすか・・・うわ!?」

追おうとした部下たちの足元を何かがぶつかったり引っ掻いたりして足止めする。

「にゃんちー!もう大丈夫!こっちに!」

漣の声にその猫はすばしっこくその場を逃げ出す。

「くっ・・・!・・・!?」

部下達は改めて漣を追おうとして―物音で振り返った。

既に3人倒れている。

「なっ・・・!?」

それに驚いたものから、視界の外から斬り裂かれていく。


「下がっているんだ!」

クルンチュの声と共に鍔迫り合いが起きる。

「大口叩いた割にはこんなもんかよ。」

「何を言っているんだ?君はまだ()()の力を見ていないが。」

鍔迫り合いをしながら舜は倒れた人間が起き上がったのを視界の端に見た。

(・・・確実に殺した筈、だから何かしらの能力だ。生き返らせるならそれをやってるのを殺せばいいだけ・・・厄介なのは見えてるものが違うとか、こちらの認識を誤認させるとかか。)


距離を取って舜は思考を巡らす。

「・・・漣!その親子を連れて離れて、守っていてくれ!ここは俺一人で十分だ!」

「・・・分かった!」

舜はその視界をクルンチュから逸らさない。

「君は経験豊かだ。どうやら・・・同士討ちの可能性すら視野に入れたようだ。だが安心してくれたまえ、私とて未来ある子供を巻き込む可能性を起こしたくはない。」

「・・・!?」

グラっと空間が揺れた。

「・・・・・・。」

舜は無言のまま、コンクリートから土に変わった足場を踏みしめる。

エルオールの国の門が遠くに見えている。


「ここなら誰も巻き込まずに済むだろう。そして分かってくれたかな?私の力を。」

死んだはずの人間が生き、今舜と共にワープすらした。

「私は神から選ばれたのだ。それもただの魔力者としてじゃなく、より強き者として。私に不可能は無いんだ。そして今から君は後悔する事になる、そんな私に敵対した事を。」

「なら・・・さっきの鍔迫り合いの時に俺を殺しておくんだったな。後悔するぜ、敵対者をすぐ殺さなかったことを。」

2人は睨み合う。


クルンチュは動かなかったが・・・舜は背後からの剣を見ないまま受け止める。

「何が()に敵対した事だよ、仲間に襲わせて起きながら。」

「さて・・・どうかな?私の力は存分にわかると思うが。」

舜は後ろの男を見て思わず声が出た。

「スリ野郎・・・。」

「シェフティ様だバーカ!」

前に軽くいなしたはずの相手は舜と何度も剣を重ね合った。

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