166話 会合
「みんなー。2人部屋3枚しか残ってないって。」
港。
船に歓喜し一目散で黒いドレスを靡かせ2階の売り場へ行った漣が階段を登ってるみんなに声をかける。
「一応・・・乗れることは乗れるが・・・・・・。ペアをどうするか、特に誰が異性と乗るかだな。または日程をズラすかだが・・・。」
漣を追って1番前にいた咲希が後ろの舜の方を見る。
「別に舜くんとなら組んでもいいよってのが多数派じゃないかな。絶対に変な事はしないって安心感あるし。」
「着替えとか割と難儀しそうだが・・・そこはまあ、そうだな。私も構わないし、他も基本構わなさそうか。」
2人が会話をしていると、ようやく残りの4人も登ってきた。
「2人泊まれるのが3部屋あるんだ?数ピッタリだね。出来るだけ早めに行きたかったし助かった。」
「うん、で、今どう組むかで話してて。」
「そうだね。愛花、俺と一緒でいい?」
ここに来るまで歩幅を合わせ、ずっと隣りにいた愛花に舜は問いかける。
「はい、勿論です。」
「・・・ん?・・・んんん??」
漣は目を細めたあと、わざとらしく愛花と反対側の舜の隣に立ってみる。
「・・・?どうしたの?漣。」
「いや・・・ちょっと確認。」
舜の腕を掴んで愛花の方を覗き込む。
愛花は覗き込まれて微笑みで返した。
「おおー・・・おめでと、愛花。」
「ふふっ、ありがとう漣ちゃん。」
舜達を乗せた船は海の層を割るかのように波を立て、動き出す。
「船だー!海だー!!」
「おい、漣。あんまりはしゃぐな。」
海が見える広場で漣はキラキラした目ではしゃいでいる。
「船だー!」
「海だー!」
「・・・はしゃぐのが増えた。」
愛花と舜も一緒に外を見てはしゃぐ。
「いいんじゃないですか。ちゃんと周りに人が居ないのを確認して2人はやりましたし。」
雪乃は楽しそうにしている舜を見て微笑む。
「・・・・・・咲希。・・・この客船、色々ある。・・・トレーニングに使えそうなのも。・・・行くよ。」
「あ、おい。はぁ、3人ともはしゃぐの程々にしとけよ。」
「とりあえず私も部屋見てみるかー!行こ、雪乃!」
「ええ、それでは2人ともまた後で。」
部屋分けをしたペアでそれぞれが行動し、舜と愛花の2人が残った。
「・・・海ですね。」
「そうだね・・・。」
何となく2人はその場にしばらく立ち尽くしていた。
同じ光景を共に出来る心地良さを感じながら、口数少なく。
「・・・冷えるし、行こうか。」
「そうですね。ふふっ。」
気が済むと2人は同じ歩幅で歩き始める。
「怜奈も言ってたけど、本当にこの船は色々あるね。バーにレストラン、遊べるところも多いし。」
「・・・よく、予約無しで乗れましたよね、ここ。」
「都合が良すぎるからね。手が回ってるんだろうね。」
愛花は不思議そうに首を傾げる。
「手って・・・ツォー博士?」
「いや・・・恐らくだけどね。今回手を回したのは四凶が1人―」
「御明答。予想通り、頭が切れて何よりだ。」
下駄の歩く音。葉巻の匂いが辺りに広がる。
「ちゃんと周りは確認したつもりだったんだけどね・・・自己紹介はいらないだろ。」
「ふっ。」
男は葉巻を手に取る。
「こちらは名乗っておこう。四凶―カオスだ。」
愛花はいつでも攻防が始まってもいいように魔力を込めた。
「構えなくてもよい。人類の大敵、パーツの撃破。目的は一致している、今は争う理由はない。」
「今は・・・か。・・・で、わざわざ直々に現れたんだ、何の用?」
カランカランと音を立て、カオスは2人を追い抜き付いてこいと首で合図をした。
客船の中にある大きな部屋。
机と椅子がある部屋に男女がそれぞれ1人ずつ中にいた。
「お前らは・・・。」
シュネールとフーロ、かつて戦った2人である。
フーロの方は顔は見た事なかったが、雰囲気で簡単に分かった。
「アピアルとは会っただろう。あいつが俺のデバイスでこいつらをお前と1度引き合わせた。すまなかったな。」
「・・・・・・。」
舜は警戒を強める。
手練2人のいる部屋、人数的にもこちらが不利となった。
カオスはその様子を気にすることも無く、背後にシュネールとフーロが立っている用意してある大きな椅子へ座った。
「・・・カオス様、そちら客人用の椅子では・・・。」
「お前らの近い椅子に座りたがるやつでも無かろう。」
「そうっすよフーロちゃん。俺らがここに立っていることでカオス様にここに座って貰う作戦成功っす。」
「貴様・・・だから椅子を入れ替えてここに立つと言い始めたのか・・・。」
3人に敵意は今のところない。
舜と愛花はドアに近い質素な椅子に座った。
「ああ、そうだ。密室だが煙草は吸っていて構わないかな。」
「俺は構わな・・・。」
愛花を見て、少し煙たそうにしてるのを確認した。
「控えてもらっていい?」
「カオス様、こいつ今・・・!今・・・!!」
「シュネール、黙れ。カオス様の話の邪魔をするな。」
2人に手でカオスは合図をする。
「分かるぞシュネール、羨ましいのは。」
「カオス様・・・!?」
カオスは葉巻を灰皿に置いた。
「そうだな、まずはこれを渡しておこう。」
「ファイル・・・?」
舜は受け取り、中を見る。
「お前に関する実験と、その成果。毎日分が書いてある。お前の記憶と合うか確認して欲しい。」
「・・・。」
舜はペラペラと捲り、簡単に中を確認した。
「うん・・・全部記憶にあるよ。」
「そうか。そうだな・・・じゃあ本題だ。」
カオスは足を組み、切り出した。
「世界五分前仮説は知っているか?」




