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愛の歌  作者: Dust
6章
169/229

165話 だから美しく

4人乗れるロープウェイの中で、対面して2人は座っている。

愛花はただ下を見ており、舜は横目でそんな愛花を気にしつつも夜景を眺めていた。

「・・・愛花、夜景綺麗だよ。」

「へ!?あ、えっと、そうですね、あはは。」

愛花の様子は明らかに変であった。

(行きの時ははしゃいでたみたいだけど・・・空元気で今はその元気すらないのかな。)

心配しながらも、無理に会話を続けなかった。

支えになりたいと切に願うが、その為に自分から踏み込むのはただの自己満足のように思えて。


「ねぇ、舜兄。今何考えてるか、当ててみましょうか?」

「・・・うん、当ててみて。」

舜は愛花の方を向いてその綺麗な赤い目を見た。

「夜景、綺麗だな!でしょ!」

「そうだな!さっきそう言ったからな!!」

ふふっと愛花は笑い、舜もつられて笑う。

「・・・うん、多分舜兄なら大丈夫。だから、聞いて欲しい事が・・・あって。」

「・・・・・・。」

モジモジと言いにくそうにしてる愛花に、舜はただ静かにその続きを待った。

「好き―です。付き合ってください。」


「・・・・・・―。」

舜は呆然としていた。そして顔が暑く赤くなっている事を自覚した。

愛花はその言葉を口にしたあとは、さっきまでとは違い逸らすことなく真っ直ぐ舜の目をその目で見つめた。

「・・・ありがとう。・・・・・・答えは―その前にちょっと聞かせて。愛花の想いを。」

「舜兄って見て見ぬふりが出来ない人間じゃないですか。だから最初は無茶しないで欲しいって思ってたんですけど、あなたがそんな人間だからこそ助けられた人達もいて、その中の一人が私で。頼りになって頼りになりすぎて、だからこそ他人のために傷だらけになっている。段々とそんなあなたの支えになりたいって願うようになりました。1人じゃ傷だらけでも、その横にもう1人居れば違うかもって。」


愛花は続ける。

「あなたに幸せになって欲しいと思ったんです。その為に私も強くなって強いあなたの横に立とうと。それでどうしてここまであなたの幸せを願うようになったんだろうって考えた時に―ああ、あなたの事が好きなんだなって。・・・あなたの隣に立ってあなたを幸せにするだけなら、あなたを想うだけで頑張れるんです。だから、ここからは私の我儘。」

その想いは強く美しく、愛花の背を優しく押していた。

「舜兄の彼女としてそれが出来たら―私にとってそれ以上は無い幸せで、そしてあなたにとっても私がそうなれれば・・・なんて。」

「愛花・・・。」


舜は愛花の想いを受けて、色んな感情が入り交じっていた。

「俺は愛花が思う程の人間じゃないよ。でも・・・。」

舜は愛花の視線をしっかり受け止めた。

「それでも支えてくれると言うのなら・・・支えて欲しい。俺の彼女として。」

「はい。もちろん、喜んで!」

嬉しそうに愛花は舜の手を取り、横の椅子へ移動する。

手を握ったまま隣どうしで座った。


「ねぇ、愛花。正直に言うとね、俺もふとした事で愛花のこと想って、愛花の幸せを願ってたんだ。・・・愛花の言う通り、好きだから・・・そう思ってたんだね。」

「両想いだったんだ・・・えへへ。ねぇ、舜兄。絶対に2人で幸せを掴み取ろうね。」



「人は力で簡単に歪むのかもしれない。」

「人は想いで簡単に歪むのかもしれない。」

「あなたが知ろうとしてるのはその想いの部分。」

コツコツとアピアルは何かに語りかけながら歩いていく。

「なんだ?乗っ取るところが人間側に乗っ取られてるじゃねぇか。俺様が殺してやろうか?」

「いいんじゃないの。魂の事が学べればなんでもさ。はぁ・・・。」

アピアルは声がするその影を見上げた。

「ごきげんよう、皆様。あなたたちの役割で行くなら私は淫蕩かしら。ふふっ、ちょっと違うのだけどね。」

「ああ・・・また上手くいかない・・・。人間に乗っ取られてるという問題に加え淫蕩とは違うとよ。ああ・・・。」

「こいつを受け入れるか目的通り殺して乗っ取らせるかは多数決でいいだろ。めんどくせぇ。」

アピアルを見て影たちはザワついていた。


「私はアピアル、愛の伝道師。安心して、愛についてなら幾らでも教えてあげる。」

「愛か。愛なら僕も持ち合わせている。か弱き存在は誰かが守らねばならぬ。そしてそれが出来るのは強さだけでなく愛を持った存在であり、俺こそがか弱き者を守れる存在だからだ。」

アピアルはにっこり笑う。

「ここにいる存在みんなが最後に帰結する地点。それが心の強さと愛だよ。」

「その愛とやらがあれば僕は満たされるのか?」

「ええ、約束するわ。」


「おしゃべりはそこまでだ。多数決を取ってやる。俺様は当然反対だ。」

「いいんじゃないの、やる気はあるみたいだし。私は賛成で。」

「これ以上悩みの種を増やしたくない。俺は反対だ。」

「イラつかせるやつは要らねぇよ。俺も反対だ。」

「僕は賛成だ。愛について、僕と同じ考えとみた。」

「僕は・・・かけてみたい。僕の心をその愛とやらが満たしてくれるか。」

6つの影が各々答えを出したところで仕切ってた影が舌打ちをした。

「同数か。ならつえぇ俺様の意見に従ってもらう。」

「強さだけなら1番はお前じゃないぞ。・・・君の意見でいいか。」

「私?私に意見求めないでよ。・・・まあ、あともう1個探してるんでしょ。そいつの投票待ちでいいんじゃない?」

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