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愛の歌  作者: Dust
6章
165/228

161話 正義vs復讐

「っ・・・。」

舜がグラつく。

歪んだ視界からは微かに争ってる2人が見える。

今だ。

今だ。今だ。今だ。

「分かってるんだよ!!今があいつの殺し時!!」

何かに指示されるかのようにピュラはその怨念を―

真っ赤な魔力へ変えていく。

芝居はこれ(セメティラディファレ)にて御仕舞(イルクラウン)。」

大量の血がいくつもの線になって周囲からその魔力へと繋がっていく。

見るものを恐怖に怯えさせる深紅の刃が、舜の隙を付かんと放たれた。


「させない!」

アラタがその短剣の前に飛び出し、鎧があっさり貫かれる。

アラタは貫いたその短剣を両手で掴み、その勢いを消さんと血だらけの中奮闘する。

「邪魔なんだよ!私の邪魔をするなら、死ねぇ!」

「させる訳にはいかない・・・!君には・・・1人も殺させない・・・!まだ手遅れじゃないんだ・・・!」

イライラと怒りに震えながら、ピュラは無慈悲にも突き出した片手から真っ赤な弾を放つ。

「くっ・・・ぐっ・・・聞いてくれ!君の中には・・・まだ・・・良心が残っているんだ・・・!」

「んなもんねぇよ!あるのはこの身を燒かんばかりの憎悪だけだ!」


その時、だった。

羽の生えた真っ黒な球体の何かがガバッと開いてアラタを包んだ。

「・・・なんだ?」

ピュラは呆然とそれを眺める。

ほんの一瞬の出来事。

死の予感に反応したのか、舜が剣をそれに振るった時には居なくなっていた。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

舜とピュラが再び相見える。


「放せ、怜奈。」

「・・・・・・。」

怜奈に掴まれ無理やり距離を取らされていた咲希は舜の元へ寄ろうとする。

だが怜奈は放さない。

「おい、怜奈?怜奈!?」

「・・・あっ。・・・・・・。」

ぼーっとしてた怜奈はふとその力が緩み、咲希は舜の元へ走る。

「気を付けて、咲希。前だけじゃなく後ろにも。」

「・・・ああ!・・・敵討ち、なんだよな。・・・。」

もしピュラが言ってた事が本当なら、と咲希は目を瞑って1秒考え、やめた。

目の前にいるのは敵。それだけで十分だった。


「舜兄ー!!!!わっと!何があったんですか!?」

「やっほー、さっきぶり。」

「っ、Y9!愛花に何をっ!」

騒ぎを聞きつけ駆け付けた2人に舜がほんの一瞬気を取られた隙に。

「その命、今はまだ生かしとしてやる。その日まで怯えていろ。」

ピュラは血にその姿を隠し消えた。

「・・・はぁ、しまった。」

「そんなY9ちゃんに反応しなくても・・・。今殺気も出してなかったしちょっと警戒され過ぎてて悲しいのです・・・。」

そう言いながらY9はお茶目にウインクをした。


「信頼されてないのは、分かってるだろ?」

「ふふーん、名探偵Y9ちゃんの目は誤魔化せないよ。愛花たんが関わってたから、らしくもなく意識をこちらに全て向けてしまった。普段なら、絶対に逃がさないもんね?警戒はそりゃするだろうけど。」

「・・・・・・。」

無言の舜とY9をキョロキョロと愛花は見比べる。

「えっと・・・えっと・・・?」

「愛花、Y9から目を離さずこっちへ。怜奈は後ろのやつ見張ってて。」

「あ、はい!」

言われた通りに愛花は舜の元へ後ずさりのように向かう。

「・・・Y9ちゃんは今は戦うつもりは無いよ?だって今のあなた、まだ混じってるもん。普段のあなたとなら手合わせ願いたいけどね。」


Y9は舜達から視線を外し、ロジクの元へ歩いていく。

「リリスたん!ロジクの腕になってあげて!」

「はっ、しかし・・・。」

「・・・構わん、リリス。やれ。」

リリスがロジクの腕となる。

半透明な緑色の腕が、その出血を止めた。

「それじゃあ舜たん、さようなら♪」

それだけ言うと、Y9はロジクを連れてその場を去った。


「こちらY9、想定通り舜たんにも別人格がある事を確認。あの3人が特別な何かだと思われる。そして、以後Y9は独立勢力として動かしてもらう。・・・って事だからカオスたん。これからは宛にしないでね。」

『・・・構わん。だが、もしお前が舜を殺した時は。』

「対立か協力か、でしょ。まあ殺す気は無いよ。結果としてそうなる可能性は否めないけど!」

Y9はデバイスでカオスに伝える事を伝え終わるとその通話を切ろうとした。

「おい、待て。僕からもだ。僕もやるべきことができた。故に今は協力はせん。」

『・・・いいだろう。幸運を祈る。』

そして、通話は切れた。

「・・・やめといた方がいいんじゃない?」

「まさか!リリスに謎の力が追加され、あいつ自身も謎ではないか!こんな美味しい素材を、逃してたまるか!」

「やれやれ・・・腐っても研究者だね・・・。・・・Y9ちゃんが先じゃダメ?」

「僕は僕の準備が出来たらすぐやる。先がいいなら急ぐ事だ。だが絶対に殺すなよ。」

Y9は笑って返答とし、心残りがあるように振り返った。



「・・・舜さん!こっちです!」

「雪乃!よかった、手遅れになる前に見つけててくれて!」

雪乃の足元で息も絶え絶えに四つん這いでいる漣がいた。

「手゛遅゛れ゛だ゛よ゛!」

ゲホゲホ言いながら漣は叫んだ。

「何回も窒息死したよ!やる事ないから死んだ回数数えてたけど255回から先は数えてないよ!」

「おう・・・なんかごめん。」

その迫力に舜は謝る。

「255ってキリ悪くないか?」

「え?むしろめちゃくちゃキリ良くない?」

咲希と愛花がやんややんやと話し込む。

「回数はどうでもいいー!心配をしてー!!!」


その日は機嫌直しの為に、漣の好物のオムライスが夜に出た。

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