表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛の歌  作者: Dust
6章
163/229

159話 復讐の怪人

「お、おい!」

ふらふらと咲希が舜に駆け寄る。

「・・・!・・・咲希!近付いたらダメ!」

怜奈はことばでとめようとしたが、咲希は気にせず舜の横まで来た。

「こんなに周りを巻き込まなくてもいいはずだろ?」

「・・・危ないから下がってて。まだ戦いは終わってない。」

舜は咲希の手を払い除け、ロジクへと歩みを進める。

「っ!怜奈!手伝ってくれ!」

「・・・・・・・・・っ分かった。」

怜奈は悩んだ末に舜の前に立ちはだかる。

「邪魔。」

「・・・なんで、そこまでして、殺そうとするの?」

「敵だから。」

あっさりと吐き捨てた。


「・・・何をもって、そこまでの敵だと?」

震える声で怜奈は聞く。

「仕掛けてきたのは向こうなんでしょ。」

「・・・でも、殺す気は、なかったよ。」

舜はその目で鋭くロジクを睨む。

「こいつはローグだ。・・・復讐すべき相手だ。だから―。」

ズキンと頭が痛み、舜は片手で抑える。

かつて共に戦った元ローグの姿が脳裏に浮かんだ。

「落ち着け舜。な?」

「・・・咲希、俺がローグに復讐心を持つのがおかしいと思うか?」

「いや・・・詳しくは知らないけど酷い目に遭わされたというのは知っている。・・・気持ちは分かるよ。」

舜は怜奈の方を見る。

「怜奈は・・・?」

「・・・・・・。」


怜奈は気圧され何も言えない。

「怜奈、回復魔法の件と繋がってるかもしれない・・・だから、正直に。・・・もう、大丈夫だから。」

「・・・うん、うん。・・・おかしい、おかしいよ、だって実験したのはアウナリトだったって分かってるし、それにローグだからって全て悪人じゃないってのも知っているはず。」

舜はふぅっと一息ついた。

「そうだよな。・・・何故俺はあんな思考を・・・?・・・誰が何の目的で・・・?」

「な、なんだ?何の話をしている?」

ちんぷんかんぷんな咲希に舜は笑いかける。

「なんでもないさ。ただ・・・もう大丈夫ってだけ。」

「そうか?それなら良かったが・・・疲れた笑い方をしてるな。ちゃんと休め、それが原因かもしれない。」

舜はもう一度咲希に笑いかけた。


(今だ・・・!今しかねぇ!)

背後で見ていた影が音も立てずに狙いを定める。

(何かの影響か知らないがあの男が初めて隙を晒した!それでもあいつ本人を狙うのは無理だろうが・・・お前に当てるのは簡単なんだよ!)

右の人差し指を斬り、血が流れる。

意のままに(デア・)命中する血弾(フライシュッツ)。」

指先にまでツツーっと移動したその血を弾に、魔力は放たれた。

「・・・!?・・・咲希!!」

「きゃあ!」

咲希目掛けて飛んだその血を舜は左腕で止めた。

(なんだ・・・攻撃にしては痛みがない・・・。)


「よぉう!まさかこんな早く第2の機会が来るとは思ってなかったぜぇ?ははっ!お前に復讐をと運命が告げてるのかもな。」

「・・・ピュラか。」

舜は剣を出して構え―

「・・・!」

身体をこわばらせた。

「痛えだろ?テメェの痛覚を全て貫かせた。今やお前は全身の痛みに震え―」

剣と剣がぶつかり合う。

「どうした?復讐したい割には1個決まっただけで満足気だな?まさか―今更痛み程度で俺が止まるとでも?」

「はっ!安心しな。この程度じゃ終わらせねぇよ。」

全身が悲鳴をあげる中、それを感じさせない動きで舜はピュラと相対する。


ピュラは素早く後ろへ下がると自身の両腕を切り裂き、血を流す。

「纏魔・血濡(カスタ・ディーヴァ・)れの(エ・テンポ・ディ・)天女(ヴェンデッタ)!」

血が舞踊り、羽衣の形になってピュラを包む。

その姿は禍々しく、血がポタポタと羽衣から落ちている。

(・・・来る!)

腕を振るうと同時に、ヒラヒラとした長い布が舜の元へ伸びていく。

舜は剣で受け止めようとして―

「・・・っ!」

剣とぶつかると同時に弾け飛んだ。

後ろへ飛び下がったが、数滴腕に血が跳ねている。

「液体をよォ、んなもんで止め切れる訳ねぇだろうよぉ!幻想(レ・ファントム・デ)幻肢痛(・ラ・ヴェンジェンス)。」


(・・・なんだ?)

舜はピュラから目を逸らさずに、頭を廻らす。

(なんで今になって3本目の足があった場所が痛む・・・?他の場所の痛みに誘発されたか・・・?)

幻肢痛―かつてあった部位がまるであるかのように痛むものである。

(・・・くっ、尻尾も痛てぇな。失ってからバランスも取りにくいってのに。触覚もか、距離感とか図りにくくなったのは失ってからだな。角も・・・待て、俺は今までこの身体でどう戦っていた?この身体で戦った時もあるはずだ・・・。)

「痛むだろ?だがまだ思考出来る程度には余裕があるな。いいことだ、それじゃあさらなる絶望に落としてやるよ。」

立ってるのもやっとな舜にピュラは邪悪な笑みを見せる。

「お前の仲間のピンク髪。今、どこにいるでしょうか?」

「・・・何?」

「あれって殺そうとしても炎になって逃げられるんでしょ?だからさぁ・・・。」

わざと癇に障るように高く、あざとく。

「水でいっぱいの箱に閉じ込めちゃいましたー!炎になれないように、なぁ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ