151話
「久々だなこの国も・・・。」
ロジクは久々に帰ってきた故郷で女と紅茶を飲んでいる。
「で、帰ってそうそう何の用?」
「ああ、アーメグ。少し戦いの様子を見たい男がいる。」
女はゲーム機を弄っていたその手を止めた。
「最近ここに来た子?ツォーの所で複数人でわちゃわちゃしてるみたいだけど。」
「ツォーか・・・ふむ。」
ロジクはまたティーカップを口に運んだ。
「リリス、演算する。データを出せ。」
「畏まりました、ロジク様。」
「君たち以外にも珍しく2人もこの国に入ってきたね。片方はロジクという男でこの国出身の数少ない魔力者だ。四凶オウコツの元にいたローグだよ。もう片方はどこからか入った女性だね。見るかい?」
「見ても多分分から・・・。いや、知ってるな。」
ツォーのカメラの写真にちょうどウィンクとピースしている女を見て舜は呟く。
「Y9・・・多分カオスの関係者だ。」
前にシュネールと戦ってた際に、捕まえてたローグがカオスの名を出したのを舜は思い出す。
「へー、知らなかった。」
パーツの動きを観察しながら、2人は雑談をしている。
「今までの録画にこいつが魔力者を襲う以外にどんな生命体か他に分かる要素は?」
「今のところはないさ。これからもあるとは限らない。」
「・・・まあもうちょい気ままに待―」
舜の周りが真っ暗になる。
「レディースエーンジェントルメーン!さあさあ楽しいゲームのお時間だ!説明書は読む?」
「・・・誰?」
舜はどこかからする女の声に聞き返す。
「そうだね、GMアーメグとでも名乗っておこうかな。」
その女、アーメグが姿を現した。
「ちょっとさ、君たち全員の戦ってるところを見たくてさ。今君の連れてる一同も同じ説明を受けているよ。」
ふふんっと鼻を鳴らし、アーメグは続ける。
「この世界はゲーム世界さ。そのゲームの敗北条件を満たないようにするだけさ。そして・・・私がコントロールしてるキャラに負けたら一生NPCの罰ゲーム♡」
「なるほどね、ゲームの世界なんだ。それじゃあ・・・。」
舜はさっそくポージングを取った。
「逃げるなら・・・いやもう遅いか。」
「その見た目とキャラでそのセリフ色々駄目じゃない!?GM権限で別ゲー!別ゲー!」
「えー・・・。じゃあ・・・。」
舜はいつの間にか手にしたボールをアーメグに向ける。
「目と目があったらクトゥモンバトル!行け!クトゥグア!」
『・・・・・・。』
クトゥグアが人の形態で現れる。
「・・・ほら、クトゥグア。鳴き声鳴き声。」
『・・・後で覚えてなさい。・・・くとぅくとぅー。』
恥じらいを捨てきれないクトゥグアを横に舜はドヤ顔をする。
(しまったな・・・先に戦いを見たいなんて言ったから本人が戦わなくていいルールにされたか。・・・私の能力にもあっさりと対応してきたし頭は回る、と。)
「クトゥグア!なんか向こうもう体力バー出てるし炎の舞!」
効果はバツグンだ!
特攻があがった。
「あっちっち!それじゃあ後はAI任せたよ!私は離脱!ミ=ゴ人形!」
スペシャル的なトレーナーへのダイレクトアタックを食らったアーメグは何かの人形を投げて姿を消した。
そして、別のクトゥモントレーナーが現れる。
(・・・とりあえずこっちが明かした手札はクトゥグアだけ。ちょっと様子見するか・・・。)
舜はそのままクトゥモンバトルに勤しんだ。
「はー酷い目にあった。ま、私じゃ誰も倒せないとは思ってるけどさ。」
怜奈がその声に視線を向ける。
「次は君だよ。好きにゲームを作っていいさ。」
舜→愛花→怜奈 〇
タイムオブレトビューションバトーワンデッサイダデステニー。
「・・・ユクゾユクゾハァンユクゾカクゴッ!」
「わっ!?くっ、速い・・・!この!」
何とか攻撃を当てようとアーメグが弱Pを振った。
「・・・ゲキリュウデハカテヌ!」
「当身技のフレームおかしくない!?くそっ離脱だトベウリャ!」
アーメグは姿をくらました。
「・・・イノチハナゲステルモノ。・・・あっ、一撃必殺打ち忘れてた。」
残された怜奈は正座で勝ちポーズを取っていた。
「次は・・・!?」
HEAVENorHell DUEL1 LET'S ROOK
「シャァァァァオ!」
「早い早い早い早い!」
雪乃が吼える。
「カァーォ!」
「そんな遠くから剣を振ってどうするつも・・・は!?」
射程無限の攻撃がアーメグを捉える。
「じ・・・GM権限!体力半減!」
「ヌホォォォォォ!ヌホォォォォォ!ヌホォォォォォ!」
出の早い確定気絶の極太レーザーを出され、1R落としたアーメグはすぐさま離脱した。
「くっ・・・どいつもこいつも順応が早くてゲーム特有の戦い方してくる!ちょっと待って!アイテムで強化入れて無理やりでも素の戦い方を―」
愛花の元に来たアーメグは何かアイテムを使った。
そう、使ってしまった。
「ア イ テ ム な ぞ つ か っ て る ん じ ゃ ね ぇ !」
斧を下から上へと振り上げる。
「もっと楽しもうぜぇ、このゲームをよォ!」
元々火力のおかしい愛花に更に絶望のバフがかかる。
「死ぬかぁ!消えるかぁ!土下座してでも生き延びるかぁ!」
もう愛花はノリノリである。
(こんな所にいられるか!)
アーメグは必死に別の場所へ逃げた。
「・・・ちょっとこの強さを追い求めるの気持ちよかったな・・・流石にどんな手段をもは使わないけど・・・。」
残された愛花は普段出来ない戦い方にニコニコしていた。
その後もアーメグは日輪!と言いながら炎の援軍で人海戦術によるわっしょいをする漣にボコられ、咲希の元まで逃げ延びる。
お互い、足首が海に使っている港で異様に硬い咲希が意気揚々とガシャンガシャンとタンカーを掴みに行ってる最中だった。
(・・・?何か・・・変?)
アーメグは異変に気がつく。
「・・・おい、どうした。折角私のターンなのに。」
「あー・・・ゲーム機が熱い・・・?」
怜奈の時に無理やり抜け出したのがその熱さをもたらしていた。
「緊急解除!」
アーメグがそう叫ぶと、周りの空間が消えていく。
「お、帰ってきたね。・・・おや、他の人達も同時に。」
「・・・今の奴は何がしたかったんだろ?」
「そんな事より私とやる前に逃げやがった!」
訝しむ舜の横で咲希は頬を膨らませていた。




