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愛の歌  作者: Dust
6章
154/229

150話

「・・・成程。」

「ん?まだ何が世界の法則に反する存在なのかは言ってないぞ?」

「ん、ああごめん、続けて。」

舜は感心した態度でツォーに話の続きを促す。

「そうだね・・・まあ簡単な話さ。形あるものはいつかは壊れる。私の専門分野では無いが、コールドスリープ技術にも様々な課題が残っている中で老いを知らない存在に出来るものがあるだろう?」

「クァチル・ウタウス・・・7邪神のうちの1柱か。」

ふふんっとツォーは得意気に笑う。

「そう、邪神さ。彼らは世界の法則すら破れる。しかし一方的に破られてるとも考えにくい。何かしら他に、世界側も起こしている筈だ。例えば、何故か気が付けなかった矛盾などがなかったかい?」

「・・・回復魔法って知ってる?」


ツォーはキョトンとした後、

「ああ、そんな魔力を使える人がいるとは聞いた事があるが・・・それが今の話に?」

「・・・・・・・・・ある、かも。」

舜は含みを持たせる。

「それで・・・。」

「ああ、もういいよ。十分かな。()()()()のツォー博士。今までのは、誰の受け売り?それにこちらが見てきたものを知ってるかのように話の誘導もした。・・・背後に誰がいる?義兄上から聞いてただけならいいけど、なんとなくで悪いけど違う気がする。」

ツォーは1度目を見開き、そして大笑いした。

「あっはっは!いいねぇ君!モルモットなんて言って悪かった!是非、普通に助手役にならないか?あはははは!」

ツォーが爆笑してる中、愛花が不安そうに舜の顔を見る。

「えっと・・・つまり・・・?」


「ネタばらしだ。今までのは全部四凶・カオスさんの受け売りさ。私は彼から費用を貰って機械で録画をし、そのデータを渡していただけさ。彼は様々な仮説を立てて教えてくれたから、1番面白そうな仮説を君に教えたのさ。()()()()()という仮説を。」

「・・・そのカオスには俺たちが戦っているところの映像も流したね?」

ツォーは嬉しそうに頷く。

「ところで私は専門外ではあるが、知識欲は旺盛でね。さっきの回復魔法がどう繋がるか教えて欲しい。」

「・・・もしかしたら世界側の何かしらは、1部の人にしか分からないかもしれないって話さ。」

(・・・もしその仮説通りなら、なぜ愛花だけなんだろうか。・・・いや、むしろ。)


「おや、何か思い当たる節があるのかい?君の表情がほんの少しだけ動いた。」

「・・・世界が敵視してるのは邪神じゃないかもしれない。」

ほう、と興味深そうにツォーは身を乗り出す。

「世界から見た災害を消しされる能力の邪神がいる。その邪神曰く、人間は今は災害扱いらしい。」

「・・・なるほど、つまり君は。()()()()()の可能性を思い付いたと。」

舜は頷いた。

とはいえ、その仮説でも結局愛花だけが回復魔法という技術を持っている事の説明はつかない。

「なるほど助手君、となると今度は世界の法則が破られている何かしらの理由付けが―」

「なあ、そんなとんでも論ばっかり言い合っても結局証明できない時点で無駄じゃないか?」

咲希が口を挟む。

「ロマンが無いねぇ君。まあいいさ。今分かっていて頭に入れておくべき事は"本来起きえない現象"が起きるということ。」

(そして、俺と愛花と怜奈だけが気が付ける捻れた常識がこの世界にはある事・・・かな。2つに関わりがあるかは分からないけど。)



「ただいまー!はー疲れた疲れた。」

「お帰りなさいッスー!」

「おかえりなさいですムイムイ姉様。」

「お疲れ様。」

3つの声がムイムイを迎えた。

元々舜が使っていた大部屋を新特殊部隊用に使っている。

いくつも部屋がある為、ムルシーやシィラのような外から来たメンバーの寝泊まり場としても便利と舜が貸し出していた。

2人の少女は1人と男から勉強を教えて貰っている。

「・・・・・・いや!帰ってくるの早くない!?」

舜が2人に勉強を教えていた。

「あの国、まず旅行者を受け入れる体制が全く整ってなくてまともなホテルとかが無かったのと・・・。」

「のと?」

「あそこで寝たら何されるか分からない。だからナチャの糸だけ隠していくつか置いといて帰ってきた。」

「そりゃまあお疲れ様だけども。・・・あれ?ムスルスは?私より先に帰り着いてたと思ったけど。」


「あー・・・帰っては来たんすけど、すぐに―」

「ごめん!おまたせ!お帰り舜さん!」

シャンプーのいい匂いがムスルスの髪から漂う。

「・・・ムスルス、あんた。」

「あ、汗かいた後お客さんに会うの失礼でしょ。」

戦闘用の服から外へ出かける用の服になってるのをムイムイは白けた目で眺める。

「へ、部屋着じゃ失礼でしょ。」

「はー、まああんたが誰にメスの顔しててもいいけどさ。」

「シテマセンケド!」

早口で顔を真っ赤にして否定する。

「ちょっと露骨過ぎない?さすがにそんなにガツガツされると向こうも引く・・・。」

小声でムスルスにアドバイスを送ろうとしたムイムイはふと舜を見た。


特に何も不思議に思っていない、なんなら好意に全く気がついてなさそうな恋愛においては愚鈍な男を。

「・・・前言撤回、どんどん押してけ。露出も増やしていいんじゃない?あんたもかなりデカイでしょ。」

「えっ・・・そんな服持ってないよ。でも・・・頑張ってみようかな・・・じゃなくて!」

「うわ、急に大きい声出さないでよ。」

舜が首を傾げたのを見て、2人は止まる。

「ゴホン、えっと、用件は6人分の部屋だけまた使いたいって事よね。どうしようかな、最近私もここで寝てたけど8部屋しか寝室ないもんね。」

「全然しかって言うにはおかしい量あるっすけどね?」

シィラとムルシーとムスルスと・・・と舜はふと気になって聞いた。

「他の元ローグ組ってどうしてるの?」

「別の場所にいるっすよ。曰く"野郎の部屋なんかに泊まるなんて考えるだけでも嫌だぜ"とか。」

「・・・たしかに、俺の部屋にアイツらが寝たらと思うとちょっと嫌・・・かな。」


舜は話を戻す。

「俺がここかトレーニングルーム辺りで寝るよ。そうすれば足りるし。あ、怜奈の部屋は使わないよう頼んでたけど、愛花の部屋に誰か泊まってたりする?」

「シィラとムルシーお姉様は漣お姉様と雪乃お姉様の部屋を使ってますよ。個人の私物がありませんでしたので。」

戦争後にアウナリトで寝泊まりしていた漣・咲希・雪乃の部屋はほぼほぼ空であった。

「本当は舜さんとこの部屋が良かったんすけどねー。本とかあるから勉強がてら読もうと思ってたのに、先に取られちゃったっすよ。」

ムイムイは再びあの目でムスルスを見た。

ムスルスはさっとその視線から顔を背けた。

「イパノヴァとオーフェの部屋を誰か2人に泊まってもらわないといけないか。・・・・・・2人の私物を片付けないとな。・・・。」

舜は少し寂しそうに呟く。


「私とムルシー姉様2人で1部屋に泊まりましょうか?慣れてますので。」

見かねたシィラが提案する。

「・・・ねぇ、ムスルスってここに泊まる必要あるの?」

「あるよ!・・・あ・・・いやたしかに・・・うん・・・。」

「わっ、ごめんごめん意地悪だったわ泣きそうにならないで。」

プルプルと震えてるムスルスにムイムイは素早く謝る。

「ううん・・・私が帰ればあの子たちの物をそのまま置いてられるもんね。・・・帰るよ、()()家に。」

ムスルスが無意識のうちにつけたあのという文字に舜は引っかかる。

「ベット買ってきて誰か1人申し訳ないけどトレーニングルームかこの部屋でって形でも・・・いいよ?」

「でもその1人に申し訳が・・・。」


舜は素早くデバイスに何かを打ち込む。

「あ、雪乃がトレーニングルームでいいって。それじゃあそのまま俺の部屋使ってよ。」

「はい、その、あの、有難くあの・・・。」

舜の部屋に真っ先に泊まっていたことが本人にバレた事が今更ながら恥ずかしくなったのか、真っ赤になったまま椅子にちょこんと座った。

「私が泊まってて嫌とかは・・・ない?」

「え?ああ、さっきのバスターズとかが泊まるのは嫌だって言った話?安心して、むしろどんどん活用しちゃって。空いたままでもしょうがないしさ。」

舜の笑顔にほっとムスルスは胸を撫で下ろした。

「しかし舜さん人たらしだねぇ。ま、顔の良さと"普段"の人の良さは確かだし、だからファンがついたのかなー。」

「ファン?へー・・・そんなものついてたんだ。俺なんかに?」

ムイムイは不思議そうにしてる舜をニヤニヤと見ていた。


そうして他の5人が街から戻ってきた後も雑談をしながら、舜達はアウナリトで身体を休めたのであった。

おまけ


「・・・やっべ、私までここで寝てた。」

ムイムイは夜中に目を覚ます。

みんなと話した後、話し疲れてそのまま寝ていた。

離れたとこの床に舜が何も敷かず、掛けずに寝ているのが見える。

記憶を遡ると自分が床で寝たはずだが、ソファーの上で枕替わりのクッションと毛布と共に眠らされていた。

「この天然人たらしめ・・・まあ好意だけは受け取っておくかな。」

ムイムイはそのまま、二度寝を始めたのだった。

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