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愛の歌  作者: Dust
6章
153/229

149話

大きなクレーターの中で、何かが鼓動する。

「これは今の状態だね。大きな動きは無いが生きているのは確認出来る。」

「どこにあるんだ?」

パンッとツォーが手を叩くと地図が降りてくる。

大きな2つの大陸のうち、片方の大陸の奥地が光る。

「ここさ。」

「・・・遠いな。海渡った上で大陸横断しないといけないのか。」

「ふふっ、やはり君は倒す気満々なんだね。協力してあげようか?寿命と引き換えに機械の改造人間にして―」

漣が事前に雪乃の身体をガッシリ掴んでおく。

舜は手で話を遮った。

「まず、さっき最強の生命体だって言った理由を見せて。」

「おお!それもそうだね!見てもらおうか、君達にも!」


別の映像が流れ始める。

「―!舜、これは・・・!」

「ああ・・・そっくりだな。・・・ダリルの能力に。」

身体から離れた部分が人間の拳位の真っ黒な生命体として飛んでいく。

複数の生命体を1つの生命体の身体から出せる、それはダリルの能力を彷彿とさせた。

そして映像は生命体を追っていく。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

沈黙。

「・・・ずっと追ってるけど、これがアクション起こすのはまだ?」

漣は痺れを切らして聞いた。

「動き始めてから20時間14分32秒後だよ?」

「ずっと見てられるか!飛ばせ飛ばせ!」

咲希が声を荒らげる。


「えー・・・?めちゃくちゃ重要な要素なのに・・・。」

「うん、この速度でそんな時間も飛んだ先にいる獲物目掛けて飛んでるってのは驚異だとは分かったよ。だから、獲物にどう襲うかを見せて。」

「お、モルモットくんは分かってくれるかい?ぜひフルバージョン見て欲しいが、まあ仕方ないか。そこの無粋のが邪魔してきそうだし。後で焼き直したものを渡してあげよう。」

漣は雪乃に片手を残したまま、もう片方の手で咲希を掴んだ。

映像が早送りされていく。

飛んでいた生命体が魔力者の前まで躍り出る。


次の瞬間、魔物が人間の2倍位の大きさの巨体へと変わる。

太く長い足と、短い胴。そして顔が口を開くと同時に縦に伸びていく。最終的に、伸びる前の身体の半分位の大きさまで口が開いた。

(ここまで飛んできた上でこの大きさにまでなれるほどの魔力を持っている、と。)

魔力者は驚き剣を構え、素早く魔力を放った。

しかし全く気にした様子もないまま、素早く身体をガクンと曲げた。

そして口が一瞬で閉じる。

襲われた魔力者の下半身がボトリと落ちた。

しばらくモゴモゴと口を動かしてから、ぷっと上半身だったものを吐き出してまた小さな形態へ戻った。


「・・・・・・ん。」

愛花が舜の袖をぎゅっと握り、舜は愛花の方を見る。

顔色は優れていない。

いくら数多の死を見届けてきたとはいえ、やはり見たくないという気持ちもあるのだろう。

「・・・大丈夫?」

愛花はその顔色のまま無言で頷いた。

決して目線は映像から逸らさずに。

「さて、いまの映像を見てもらえればこいつが化け物なのは分かっただろう。」

「そうだね。異常な索敵能力、身体のたった1部なのに長時間の飛行から捕食、そして再び帰還のための飛行をやってのける魔力。魔力を食う事でどんどん強くなっていくだろうから、大量に今の魔物を身体から分離させればとてつもない勢いで魔力を回収出来るのも踏まえて、強い。」


ツォーはその回答に満足気に頷いている。

「いいね君。頭の回転が早い人と話すのは気分がいい。モルモットでは失礼だな、助手兼任のモルモットでどうだろうか。」

「・・・・・・それで、これに機械で対抗しようと?」

「ああ!興味あるかい!?パーツ、ああ、私はこの化け物にパーツと名付けたのだがこいつが人を食って魔力を集めて強くなるのであれば食われる心配のない機会の出番なのさそうとも私は今―」

「なんでこのパーツってのは魔力を集めてるの?」

ツォーの捲し立てを遮り、2匹の狂犬を両手にしながら漣は聞く。

「さて、ただこの様子でずっと魔力者を作ってはその中で魔力を育てさせて食う。このサイクルを続けているんだが、その理由まではまだ推測すら立てられていないよ。」


漣は考える。

「ただ単に餌にするだけなら・・・こんな回りくどい仕方しないよね?」

「義兄上とも話したけど、生命体が存在出来る他の星から来たと仮定するなら、途方も無い時間を飛んできているはずだから・・・その間何も飲まず食わずの時点で餌とは考えにくいと思う。」

ツォーはうんうんと頷く。

「勿論、別の生命体の考えなんかサンプルが無さすぎて分からないけど。たとえ魔力を求めてるのが人間だとしても人によって目的は違う。残念ながら色んな仮説はあるけれどどれも証明までは難しいだろうね。例えば、今は餌じゃないという仮説が立ったが・・・逆に餌だという仮説も立てようと思えば立てられる。モルモット兼助手くん、君は賢いから餌だという仮説をも立てられるだろ?」

「次舜さんのこと変な呼び方したら誰に止められようがぶち殺がしますよ?」

雪乃にまあまあと舜は宥める。


「餌だと結論づけた上で理論立てればいいんだね。となると、宇宙空間を長時間飛んできたという前提を覆すのが手っ取り早いか。」

舜はある人間のことを思い出す。

「義兄上は魔力から人間を創り出せた。全く別の思考をする人間を。・・・かなり乱暴だけど、なら、実はこいつも誰かが創り出した生命体で、遥か彼方の宇宙から来たと思われてるだけ、とか。」

「あはは!いいねぇ、それでいいのさ。未知のことなんてほんと思いもよらぬ事から起きてたりするし、馬鹿げてることを本気で盲信したりするぐらいでいいのさ。さて・・・。」


ツォーの表情が真剣なものへと変わった。

「だけど1つ確かな事はある。この世界で絶対に起こり得ない筈のことというのはあるんだ。今しがた、ネビロスさんの人間創造の話をしたね?生命の起源についてはまだ分かっていないことも多い。色んな説がある。が、その始まりは単細胞生物だと言うことは分かっている。そう、生物の起源は単細胞生物なのだよ。では、君の義兄上は単細胞生物の状態から進化させて人間を創ったのかね?」

「分からないけど・・・多分違う。」

「生物の起源を無視した無からの生物創造。無論、魔力は関わっているだろうが、それでも明らかに世界の法則を無視している。有り得ちゃ行けない事なんだよ本来それは。」

無言で考える舜にツォーは続けた。


「そして、私は他のルール違反出来る存在を知っている。」

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