表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛の歌  作者: Dust
5章
148/228

145話

「復讐鬼!!!」

仲間がやられた怒りを、恨みを、魔力へ変える。

"その技は、知っている"

その魔力がかき消された。

"貴様らも私に色々やってくれたな。そぅれ、復讐鬼"

「永久凍土。」

ヤルダバオートから放たれた圧倒的な魔力が、凍っていく。

"成程―貴様は"

「凍れ。」

舜の前に庇うように現れた雪乃によってヤルダバオートは一瞬凍りつく。

が、すぐさま何も無かったかのように凍りを割って出てきた。


「・・・おかしい。ルガタと戦ってた時のあの子はあんなに強くなかった。」

その様子を見てサナスは呟いた。

が、次の瞬間にはその事を考える暇もなくなった。

「ムルシー姉様!しっかり!」

「・・・が・・・ハァ・・・ぐっ・・・。」

シィラがムルシーを連れてサナス達のいる屋根の上へ降りてくる。

『聞こえてる!?』

「ちょっと待ってトワ!今それどころじゃ!」

『あいつの倒し方!私分かったの!』

必死に叫ぶ声は漣以外の近くのものにも聞こえた。


「漣さん、応急処置とかはこちらでやりますから。スピーカーにして話を聞いて。」

「う、うん!」

漣はデバイスを急いで弄る。

「いいよ!教えて!」

『さっきの腕みたいにあいつには今沢山の眼があるの!羽の中に隠して護るように!』

「・・・目。今度はそれを全部潰せば、何か変わる・・・かな。」

『変わる・・・よ。・・・変わるよね?・・・・・・。』

トワは途中から自信なく声のトーンが落ちていった。

「ねぇ、目を使えなくすればいいんだよね?」

それに対して反応したのはシャロンだった。

「・・・私、出来るかも。・・・でも私の魔力だけじゃ苦しい。足止めを誰かしてくれれば、多分。」

「私が・・・やるっす・・・。」

「動かないで。安静に。」


ムルシーの身体に熱が再び点る。

炎が、腹の空いた部分から漏れ出ている。

「私の技は・・・奪われない。だから。」

「ムルシー姉様・・・!」

ムルシーはシィラに笑いかけた。

「笑って欲しいっす。どうか。私が心からの笑顔を思い出せたように、みんなにも笑顔でいて欲しい。その為になら・・・。」

「駄目です、ムルシー姉様。クロム様の想いを誰が・・・!」

「いるじゃないすか、ここに。クロム様の想いも私の想いも、託せそうな人達が。・・・シィラ先輩だって、そうでしょ?」

シィラは1度下を向いて、そして顔を上げた。

「・・・先輩じゃないです。・・・シィラは歳下なので。」

「・・・ふふっ、じゃあ―行ってきます。」


「・・・!雪乃!俺はいい!ムルシーのサポートを!」

「はい!」

爆炎を吹き上げながらムルシーは戦場へ舞い戻る。

(クロム様・・・こんなに早くあなたの元へ行く不孝をお許しください。)

"愚かな"

雪乃が離れた舜に向かってヤルダバオートは魔力を放つ。

「イシイルカ。」

ムイムイの言葉に数匹のイルカが舜の元へ駆け付ける。

そのずんぐりとした身体で舜への攻撃を必死に受け止めた。

(行くなら・・・今!)

傷から吹き出す炎がより激しさを増す。

「あっつ・・・この熱であの子大丈夫なの!?」


炎千切腸葬贄(シェンノンシァオ)!!!」

ムルシーに閉じ込められていた熱が、一点から放たれる。

"創造神に挑むとは憐れな"

ヤルダバオートもその眼からグニョングニョンと魔力を1点に掻き集め対抗する。

ムルシーの身体ごと焼き尽くさんとする炎はヤルダバオートと打ち合うには十分すぎる火力であった。

その上空で、ダゴンがシャロンの移動に合わせて水の足場を作っては目立たぬよう消して行く。

シャロンはヤルダバオートの真上まで来るとぴょんと跳び跳ね、その背後から6つの羽を目視する。

「・・・さようなら、ジャメール。」

羽が開かれ、大量の眼がシャロンの姿を捉えると同時にシャロンの手から茎が伸びていく。

その羽を、眼を、全てをその植物は縛り上げた。


「ウェル!着地お願い!」

「貸し一つだ!」

岩が空中に現れ、シャロンはそこに降り立った。

「貸しも何も、こいつ倒す為なんだからむしろ協力させて貰えて有難いと思って。」

"この程度・・・奪うまでもない。あまり驕るな人間!"

ヤルダバオートが全身全霊の魔力を放つ。

打ち合っていたムルシーはその余波に吹き飛ばされるが、舜に抱きとめられた。

そして、羽を縛っていた茎や葉はあっさり破られ白い液体を流す。

「創造神を名乗る割に知らないのね。その植物が何か。」

白い液体はその羽に生えていた全ての眼の中に入っていく。


"・・・ガッ・・・これは・・・!?"

「イソトマ。育てる人が多い植物ではあるんだけどね?知ってる?この花の花言葉。」

ヤルダバオートはもがき苦しむ。

「猛毒。もっと危険な植物はあるんだけどね。・・・失明させるなら、これで十分。」

"人間如きがァァァァァァァ!!!!!"

残り1つ、その大きな眼に誰よりも先に突っ込んだのは漣であった。

「やぁぁぁぁぁ!!!!」

その槍がその眼を潰した時。

ヤルダバオートは決して消えない炎に包まれ、落ちていった。


「・・・終わった・・・ね。」

空から太陽の陽射しが差し込んでくる。

その陽射しを眩しそうに、嬉しそうにしながらトワは心底ほっとしたように呟いた。

「・・・ムルシー、無事?」

「・・・・・・ぁぅ・・・。・・・ぁ・・・・・・?」

(・・・あれ?・・・私、なんで生き・・・舜さんに抱き締められてる!?!?!?!?)

「・・・大丈夫そうかな。」

そのまま舜は復讐鬼の羽を使って、炎が消えた地面に降り立つ。

「・・・舜さんは大丈夫な訳?その傷。」

「後で倒れるとは思うけど今は。それよりさ。」

傷の心配をしに来たムイムイを舜は真っ直ぐ見る。


「あれ、何だったの?」

「ああ・・・私たちの同期のジャメールの契約していた天使だよ。」

「じゃあ・・・そのジャメールが裏切ったの?」

ムイムイはキョトンとした後、首を振る。

「前の戦で戦死したよ。確か・・・ターガレスさんに殺された筈。」

「・・・今は冗談はいいよ。」

再びムイムイはキョトンとした。

「・・・冗談じゃないの?・・・あの亀・・・いやそれでも・・・。」

「どったの、何が気になってるの?」

「いや、だってさ。」

戦い中、誰も気が付かなかったことに舜は口を出した。

「俺たち全員でここまで苦戦する化け物と契約してたんだろ?・・・なんで、負けたんだ?」

シャロンの植物解説コーナー


皆様、ごきげんよう。シャロンですわ。

なんてちょっとお嬢様ぶってみちゃった。

今回出てきた植物はイソトマ。

育てた事あるよって人も多いかもね。

茎や葉から出る白い汁は毒性を持っているよ。

目に入るととても危険ですぐ洗い流しても暫くは痛むかも。

今回は洗い流せすらしなかったからそのまま失明まで持っていけたけど、現実にも失明の恐れがあるからゴム手袋とか使ってから触ろうね。

因みに今回みんなと戦ってたからイソトマにしてたけど周りに人が居なかったら近付くだけでも被れるマンチニールとか・・・

あ、もう時間?

おそらく今回だけのあとがきコーナー、シャロンの植物解説でしたー。

次回も読んでねー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ