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愛の歌  作者: Dust
5章
144/228

141話

強大な魔力に対してムイムイは目を瞑る。

その剣がひとりでにガタガタと揺れるが、撫でるように抑えながら。

死を選びとる女神よ(スクルド・ゲイザー)!!!」

目を開けたのはその絶叫が聞こえてきたから。

「ムスルス・・・!?」

「・・・っ・・・の・・・負けるか・・・!」

魔力を消せる剣でも消えない異質な魔力に対し、単純な威力勝負でムスルスは挑む。

全てを壊すもの(ラグナロク)。」

その鍔迫り合いに舜がほんの一瞬触れ、ついにサマエルの攻撃を消し飛ばした。


「ふー、間に合った・・・。」

舜はムスルスの出した足場に着地し、座ったまま呟いた。

その胸には異形に刺された跡が痛々しく残っている。

ムスルスの方も、今のやり合いでフーロに傷付けられた傷口が開いたのか腕や足から血が流れている。

「・・・庇う側のがボロボロなことあるんだ。」

「貴重な経験したじゃん!」

舜は平然と軽口を叩く。

傷や目の前の敵などどうでもいいと言わんばかりに。

しかし、その目は、全身は、敵への警戒だけで動いている。

サマエルはそんな舜の方に顔を向けた。


"何故・・・"

サマエルの声が辺りに響く。

"何故人に味方をする"

「・・・・・・俺に言ってるの?」

残った手が舜を指差す。

"人の本質は悪・・・それを何故"

「・・・誰だって悪い部分はあるよ?でもそこの部分だけで全てを否定したくない。良いところだって必ずあるんだから。それぞれの大小はあれど、ね。」

"否・・・人はみな自分だけの事を考える。自分がよければそれでいい。他人の事を考えてる振りをしながらその実、それすらも自信の感情にのみ付き従っている"

「それは見方によってはお前もそうなんじゃないのか?俺はお前がどの立場からどういう意志で言ってるのかよく知らないからその是非について語る気はないが・・・このまま続けるなら俺の意志でお前を殺す。」

サマエルの目が鈍く光る。


"我が名は天使サマエル。神の代行者として魂を持ち帰る者。"

「・・・自己紹介どーも。」

魔力が高まっていく事に、舜とムスルスは構える。

「2人とも!あの胴体の腕、全てを共に壊してください!異形の数もあの腕と連動しています!」

ダゴンが舜達の横へ飛び、再びサマエルの前に立ちはだかる。

"汝に敬意を払おう。全てに対し否定仕切らず、それでも尚我と敵対しよう事に。"

「数多の戦いの中で学んだんでね。・・・それじゃあその敬意に免じて引き下がってくんない?」

"だが我らは万物の支配者。我らが裁くのは善悪にも感情にも囚われぬ、当然の行いである!"

突如、天から魔力が広範囲に降り注ぐ。


「・・・っ!」

予備動作が一切無かったこと、そして何より避けるだけでは街に被害が及ぶ事。

せめて少しでも止めようと動こうとした人達より早く、女神は動く。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

ダゴンの周りに浮かび上がった水が次々とぶつかりに行く。

ダゴンの両手の前に現れた水の魔法陣が傘のように受け止めて行く。

しかし、その魔法陣も少しずつヒビが入り、遂にはダゴンの身体が直接受け止める。

当たった場所が黒ずんでいく。

(毒か・・・!)

汗ばみながら、歯を食いしばりながらそれでも女神は人の為に。


「させない!」

そんなダゴンに攻撃せんとサマエルの腕から放たれた魔力をムスルスが掻き消す。

「紫電一閃!」

舜はその隙に素早く近付き、腕を一本斬り落とした。

「ごめん、ムスルス!こいつ近付くとこっちの身体が浮くから地道にやるしかなさそうだ!」

「OK!ダゴン様守るのも隙を作るのも任せて!」


「足場。」

ムイムイが魔力を放ち、それを固定して前に跳ぶ。

「隙って一旦こっち攻撃向かわせればいいんでしょ?なら・・・口撃は任せて。」

ムイムイはすーっと息を吸い込む。

「サマエル!お前は飽くまで神の"代行者"の天使!神が万物の支配者として裁くのが当然だとしてもそれは神自身のみの事でお前の事ではない!」

言霊に乗せた言葉にサマエルは応える。

"神の代行として裁く。そこに問題は何も無い"

「お前はさっき"我ら"と言った!いつからお前は神に成り上がったつもりだ!」

"神の紛い物風情が、そこまで重い裁きを受けたいか!"


「ダゴン様!」

声が聞こえた。今、ここで聞こえるべきでない声が。

「トワ!早く下がりなさい!ここは危険です!」

怜奈に連れられて、トワは近くの家の屋根の上にいた。

「ダゴン様!みんな!みんな!人を守ろうとしてくれる貴女を、想っているから!」

トワがかがけたデバイスから、モニターが宙へ浮かび上がる。

そして、次々と小さなモニターが辺りから浮かび上がってきた。

「やれやれ、こんなもんだろう。」

その準備に至る所に集めたデバイスを置いていた咲希が汗を拭って呟いた。


「ダゴン様ー!頑張れー!」

「他の場所でも人を守ろうとしてくれなんて・・・流石は私たちの守護神様!」

それは―

「ダゴン様!無事に帰ってきて!」

「あんな化け物やっつけてしまえー!」

ダゴンが女神として知り合った―

「ダゴン様ー!みんな見守ってますからー!みんなも一緒に!ダーゴーン!ダーゴーン!」

「おうよ!トワ!」

「「「「「「ダーゴーン!ダーゴーン!ダーゴーン!ダーゴーン!」」」」」」

リエーの人達の光であった。

ダゴンにその光が集まっていく。

その光がサマエルの天からの毒を全て打ち消して行く。


ダゴンは自身の両手を見た。

毒に犯されたはずの身体は綺麗で。

そして今まで以上の力が秘められていた。

「ありがとう・・・みんな。トワ。」

ダゴンはギュッと握り拳を作り、水を棒状に固めていく。

漁師の串(バーント・オフェリン)!」

その水の魔力はサマエルとぶつかると同時に盛大に弾け、遂にその胴体を・腕を全て破壊した。

漣「漣ちゃんだよ!」

雪「雪乃です。」

漣「久々!あとがきのコーナー!」

雪「今日は舜さんのコンセプトについて。」

漣「今回の話でチラッと触れたように、相手を否定しきる事が無いキャラにしようと思ったらしいよ!」

雪「色々モチーフにしたキャラや歌があるらしいけれどそれは物語が全て終わったあとのあとがきで書く予定との事。」

漣「それではまた次回!」

雪「見てくれたら嬉しいです。」

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