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愛の歌  作者: Dust
5章
142/228

139話

「・・・数が多すぎる。」

遠くから狙撃していたイームは悪態をついた。

ムイムイ達の支援にならないと判断したイームはふと思い付く。

「・・・愛花なら?」

同期の中で誰よりも魔力の扱いに長けた少女。

急いで迎えに行こうと思ったところで―

その糸は現れた。

人影が複数人、壁の外へ落ちる。

「ありがとうナチャ。」

「びっくりした・・・。便利ねこの蜘蛛の糸。」

話をかき消すようにイームは声をかける。

「空間を歪ませた!登ってこい!」

「イーム?・・・まずそうだね。」

真っ先にムスルスが歪んた空間を通って壁の上へ行き、その後を3人も付いて行く。


「なんですかあれ―!」

そんな愛花の声を置き去りにするように。

舜は異形たちを見た瞬間に飛び降りていた。

屋根へ降り、そのまま走って行く。

「ナチャ!マーキング!」

走りながらいざと言う時安全な場所へワープ出来るよう、ナチャに指示を出す。

地衝烈牙(ちしょうれつが)!」

異形の最後尾に辿り着いた舜は屋根から降りながらその強力な一撃で目の前の異形をぶった斬った。

指揮を取っている異形が後ろに手を振り、左右にいる攻撃範囲外の異形達が舜と睨み合う。

舜が先に斬りかかろうとした瞬間だった。

その動きが止められる。


「なっ―!?」

地面から異形が倒した分だけ次々と背後の地面から現れる。

その内の1匹、まだ半分埋まってる異形の異様に長い手に脚を掴まれた。

その脚を踏み潰し、前から隙と言わんばかりに襲いかかる異形達の攻撃を剣で捌く。

(囲まれる形になってるが・・・まだ背後の敵は攻撃範囲外―)

舜はその口から血を吐いた。

背後から胸を貫かれた。

異様な長い手の異形によって。

人との戦いに慣れすぎた故に舜の予想外であった攻撃によって。

そして、様々な形をしている異形が舜に群がっていった―。


「背後からの追っ手が減った?」

「シャロン!」

「わっと!」

ムイムイの声に振り返ったシャロンは全速力のまま両足を滑らせて体制を低くして異形の攻撃を躱し、勢いを殺さないまま体勢を戻して走っていく。

「・・・着いた!ダゴン様!」

「!無事でしたか!」

天使を避けて少し遠回りをした分、やや時間は取られていた。

雪乃はまだ屋根の上で1人でその侵攻を食い止めている。


「ダゴン様!あれの名前、サマエルって言うらしいんだけど知ってる!?」

「サマエル・・・?・・・ええ、知ってますとも。私とルーツこそは違えど、同じ人間達に恐れられた存在。・・・なるほど、だから悪魔のような振る舞いで。」

ダゴンはサマエルの名を聞いた上でじっくりとその姿を観察する。

「天使で有りながらサタンの称号を持つ者・・・一筋縄では行きませんね。」

「何か知っておくべき情報はある!?特に腕関連で!」

息も整えないまま漣はダゴンに畳み掛けるように聞く。

その間、ムイムイとシャロンは異形の足止めをしている。

「・・・魂を運ぶ役割を遂行する者にして、その役割を果たせなかった者。・・・成程、サマエルの近くの物が浮かび上がるのは天へ持ち運ぼうとしているのですか。」


「天へ持ち運ぶ・・・あっ!」

漣はムイムイがサマエルの胴にある腕全てが人のものである事に注目していた事を思い出す。

「腕だ!あの腕を全て何とか出来れば!」

「しかしあれだけの数、しかも魔力をそれぞれが放てるものをどう・・・?」

ドンと音がした。

雪乃の氷を少しずつ押し返し、天使が1歩歩き出した音。

「・・・私に手がある!・・・シャロン!1人で平気!?」

その様子を見てムイムイがサマエルに目を向ける。

「出来るだけ・・・食い止めてみる・・・!」


「大丈夫ですよ。私たちも手伝いますから。」

その声と共に、前に居た異形達に鋭く剣で刺した跡が現れ崩れ落ちた。

「私もいるよ!」

ぶん投げられたハルバードの左右からの双撃で異形達が崩れ落ちていく。

「サナスさん!リーン!」

「集中を!また復活してきますよ!」

サナスの言葉にシャロンは構える。

「ムイムイ!サマエルの方は頼んでいいんだね!?」

「・・・。・・・はぁ、本当は柄じゃ無いんだけどな。出来る限りはやってみるね。」

「頼んだよ!」

リーンの声援を受け、ムイムイは屋根へ飛び登る。


「援護がいりますか?」

「うん、そのまま氷で足止めしてて。」

雪乃は振り返りもせずに確認をし、必死にサマエルの魔力を氷で防ぎながらその足や顔を凍らせては砕かれている。

「・・・ごめんね、多分君も無事では済まないけど。どうかアレを食い止めるだけの力を―。」

ムイムイは1人、ぽつりと剣に話しかけた。

そして覚悟を決め、サマエルの顔の目の前まで跳んだ。

「奥義!」

ムイムイに向けて魔力が放たれようとしたのを雪乃の氷が止める。

その代わりに、雪乃目掛けて飛んだ魔力が雪乃の脇腹を抉っていく。

抹香鯨(マッコウクジラ)!!」

魂を込められた巨大な魔力の鯨が、サマエルへ襲いかかった。

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